カテゴリー「日記/2011年」の記事

『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

12月28日(水)

  2回目のオケ付き通し稽古。

  私にとっては今までで最も満足度の高い『ラ・カージュ・オ・フォール』であった。
  ミスが無かった訳ではない。が、キャストもオーケストラもスタッフも、カンパニー全体が「どこに向かえばいいか」をしっかりと自覚して、それぞれの持ち場で確実に仕事をした。そのことが私を満足させたのである。『ラ・カージュ・オ・フォール』が前回で「ファイナル」にならくて良かった、と心から思ったオケ付き通し稽古であった。

  これで年内の稽古は全て終了した。『ラ・カージュ・オ・フォール』通信も、年内は今日が最後である。ご愛読くださった皆さん、ありがとうございました。来年は1月4日からお送りする予定。

  どうぞ良いお年をお迎えください。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

12月27日(火)

  オケ合わせ2日目。そして1回目のオケ付き通し稽古。

  残された2幕後半のオケ合わせを終えた後、通し稽古に突入。オーヴァーチュアからいきなり手拍子が沸き起こる。
  今までスタッフ、キャストが長テーブルを並べていたエリアにオーケストラが鎮座しているので、私の席は一段と舞台に近づいた。真島さん扮するハンブルクのハンナが鞭を振り回すシーンでは命の危険を感じる程である。

  始まってしまえば「あっ」という間の3時間である。オープニングでジョルジュが観客に向かって喋る台詞にある様に、『ラ・カージュ・オ・フォール』は「フィナーレに至るまで、どの場面をとっても極上のシャンパンの味わい」である。退屈な場面や無駄な台詞は一切ない。

  明日は2回目のオケ付き通し稽古。そして、稽古場最終日、仕事納めである。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

12月26日(月)

  オケ合わせ1日目。

  17名編成のオーケストラである。日本初演時は更に大きな編成だったのだが、現在はキーボード類が飛躍的に発達したので、この人数でも遜色のないサウンドを奏でることができる。それでも、この17名は今日では大変な贅沢だと思う。
  『ラ・カージュ・オ・フォール』には、ブロードウェイ・ミュージカルの最良の部分が隅々にまで詰まっている。脚本、演出、振付、音楽、舞台美術、衣裳、照明……。こうしてオーケストラの演奏する『ラ・カージュ・オ・フォール』のナンバーを改めて聞いてみると、編曲やオーケストレーションに凝らされた工夫やそのためのエネルギーなど、改めてブロードウェイの伝統や人材の層の厚さを思い知らされる。

  今日はオーヴァーチュアから2幕2場のダンドン一家の登場まで、順調にメニューを消化してオケ合わせを終えた。明日は今日の続き。その後、オケ付き通し稽古である。

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『ダンス オブ ヴァンパイア』東京千穐楽

12月24日(土)

  帝国劇場開場100周年記念公演『ダンス オブ ヴァンパイア』千穐楽。

  ご来場くださった皆さん、ありがとうございました。キャスト&スタッフの皆さん、お疲れ様でした。
  今年は帝劇の100年の中でも特に記憶に残る1年だったと思う。
  本来であれば、今年1年は劇場と劇場を愛する人々を祝福する1年になる筈であった。が、実際は、劇場と劇場で働く者たちの使命を再確認する年になった。

  記念すべき年に、帝劇で4作品を演出する機会をいただいた事は、東宝で27年間芝居作りに携わって来た者として大変光栄なことであった。
  芝居作りは子供を生みだすことと似ていると思う。健やかで逞しく、皆に愛される子になって欲しいと念じて励むのだが、期待通りの子はそう簡単には生まれない。親の心子知らず、である。
  しかし、どんな子が生まれても愛情を尽くして生んだ子に違いはない。大勢に愛されることになった作品もそれ程でもなかった物も、私にとっては掛け替えのない大切な1本1本である。

  今年は、私自身も芝居を作ることを通して力を貰った1年だった。

  身の回りの繁栄が未来永劫続くものだと無邪気に信じていたスカーレット・オハラは、震災前の私たち自身の姿だったろう。その繁栄は南北戦争によって跡形もなく崩れ去る。一面焼け野原となったタラの地に立って「私は負けない」と誓うスカーレットの決意表明が、今年ほど私たちの胸に響いたことは無かっただろうと思う。
  「ひとりは皆のために、皆はひとりのために」という三銃士のモットーに、稽古場に集まる一同が(演じている本人たちでさえ)どれほど元気をもらったか。ダルタニアンの父がダルタニアンに繰り返し語って聞かせた「勇気、誇り、そして分かち合う心が、人生を生きるに値するものにする」と言うメッセージにもまた同様である。
  そして『ニューヨークに行きたい!!』のラスト・シーン。世代や価値観の異なる人々が、それまでのわだかまりを乗り越えて互いの存在を認め合う。そこで歌われる「未来は今、始まる」。未来は「そこ」からこそ始められるべきであろう。

  そして『ダンス オブ ヴァンパイア』である。今年の『ダンス オブ ヴァンパイア』も熱く熱く盛り上がった。劇場が果たさなければならない使命を、関係者ひとりひとりがきっちりと果たした成果だったろうと思う。

  さて『ダンス オブ ヴァンパイア』は引き続き大阪へと向かう。年が明けて2012年の1月7日開幕である(詳細はこちら)。チケットの残りは僅少であるが、スタッフ&キャスト一同、牙を研いでお待ちしています。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

12月23日(金)

  2回目の通し稽古。

  カジェルのひとり、「金の喉仏を持つ」シャンタルを演じるのは新納慎也さんである。
  新納さんと言えば、『ウェディング・シンガー』の「ボーイ・ジョージに憧れるキーボーディスト」のジョージなど、個性的でアクの強い役を演じることが多い。そして、そう言った役を、新納さんは誰にも真似できない演じ方で演じ、更に個性的にしてくれる。
 シャンタルも、「心優しいのに毒舌」で、新納さんの持ち味の生きた素敵なキャラクターになっている。が、『ラ・カージュ・オ・フォール』で注目していただきたいのは、新納さんがシャンタルではないキャラクターで登場する2幕1場である。

  この場面には、アルバンが男らしい振舞いを練習するナンバー「男のレッスン」があるのだが、このナンバーでは、カジェル達も別キャラ「逞しい港の男たち」として登場する。その中に、とても普通な男性として、実に新納さんらしくない役で新納さんも登場している。
  新納さんのファンの方は、普通の役でも案外すてきな新納さんを、「ウォーリーを探せ」の様に探してみてください。

  さて、別稽古場では本日よりオーケストラのリハーサルがスタート。次はいよいよオケ合わせである。が、その前に明日、明後日は稽古OFF。

  皆さん良いクリスマスを!

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

12月22日(木)

  1回目の通し稽古。

  改めて『ラ・カージュ・オ・フォール』の持つポテンシャルの高さを再認識した通し稽古であった。極めて順調、と言って差し支えない仕上がりであったと思う。

  通し稽古後、カジェルたちのダンス・ナンバー「カン・カン・シークェンス」を衣裳付きで当たる。
  「カン・カン」(フレンチ・カンカンと呼ばれることも多い)は、19世紀後半から20世紀にかけてパリで大いに評判を呼んだ、陽気で激しくセクシーなダンスである。踊り子たちが大きく足を上げたり、走り回ったり、股を割ったり、スカートをたくし上げてお尻を見せたり……と、それこそ『ラ・カージュ・オ・フォール』に相応しい。
  「カン・カン・シークェンス」の振りは、衣裳を巧みに捌くことで成り立っている。その衣裳がかさ張る上に重い。加えて、その衣装でアクロバットもこなさなければならない。なので、安全に、美しく、楽々と演じてる様に見えるために、入念に確認をしながらの稽古であった。

  『ラ・カージュ・オ・フォール』の稽古後は王様と私の打合わせへ。

  今回の『王様と私』は、「ハロー・ミュージカル!  プロジェクト」の「ミュージカル・ツアー」第1弾である。
  「ハロー・ミュージカル!  プロジェクト」は、一般社団法人映画演劇文化協会が運営する、「ミュージカルを手軽に多くの人に楽しんでもらいたい」と言うプロジェクトで、「ミュージカル・ツアー」は、本格的なミュージカルを全国各地で上演しようとする試みなのである。

  今まで本格的なミュージカルが上演されることの少なかった場所に出掛けて行く、と言うことはとても意味のあることだと思う。ミュージカルや演劇などのパフォーミング・アーツは、生(ライヴ)で、その場にいて鑑賞することが最大の価値だと思うからである。
  が、それぞれ条件が異なる各地の会場を効率よく巡業して回るのは、その理念とは裏腹に数々の困難が伴うのも現実である。
  その困難をどう乗り越えて行くか。そのために各セクションがどう知恵を絞るか、と言うのが今日の打合せの趣旨であった。

  このプロジェクトが軌道に乗り、全国の様々な都市で、毎年の様に素晴らしいミュージカルが上演される様になることを願って止まない。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

12月21日(水)  

  立ち稽古。今日こそ全幕、全場面である。

  マエストロは、今日は極めて事務的に登場した。昨日の一件で、もしかするとマエストロのモチベーションが大幅に下がっているのかもしれない。演出助手の落石君も、そう言って心配顔になった。
  こう言う時は、マエストロに少しでも多く活躍して貰うに限る。で、今日は、昨日までは割愛してきたオーヴァーチュアから稽古をスタートすることにした。
  もちろん、我々の悪い想像は杞憂であった。ひとたびタクトを握れば、いつもと同じ熱い熱いマエストロであった。今「タクトを握れば」と書いたが、筆が滑った。稽古場ではマエストロは素手で指揮をしていて、指揮棒は握っていないのであった。

  それはともかく、今回の『ラ・カージュ・オ・フォール』は、芝居部分の密度が更に濃くなっている。ファニーな部分は更にファニーに、切ない部分は更に切なく。こうして再演の機会が与えられたことに心から感謝したい。

  明日はいよいよ通し稽古。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

12月20日(火)

  2幕をおさらい。

  今日は音楽監督・指揮の塩田さんの意気込みが違っていた。朝、家を出る時から既に気持ちが高ぶっていたらしい。恐らく昨夜からそうだっただろう。そう思わせる様な高揚感で、マエストロは稽古場に登場した。
  塩田さんの『ラ・カージュ・オ・フォール』に対する思い入れの強さは、誰よりも良く知っているつもりであった。この日記でも、幾度となくそのことに触れて来た(こちら)。が、今日のマエストロは、私の知るマエストロ以上に熱く熱く燃えていた。

  高揚したマエストロは、ミュージシャンの何人かにも声をかけ、稽古場に誘って来て下さった。キーボードの村松さんは、わざわざ楽器まで持ち込んでくださった。
   稽古も終盤に入り、まもなく通し稽古を迎える、と言う時期である。マエストロの心意気が何よりも嬉しく、そして心強く感じられた。
  が、マエストロが今日ハイ・テンションで登場したのは、「今日は全場面を稽古する日」だと勘違いしていたからなのであった。ミュージシャンの皆さんも、「今日は全場面が見られる」と意気込んで稽古場にやって来たのであった。

  明日は全場面を稽古。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

12月19日(月)

  衣裳合わせデー。稽古は無し。

  『ラ・カージュ・オ・フォール』が世界初演された劇場は、ブロードウェイのパレス・シアターである。
  パレス・シアターは1913年3月24日にヴォードヴィルの殿堂として開場した。アル・ジョルソン、エディ・キャンター、ボブ・ホープ、ファニー・ブライスと言った、錚々たるスターたちが当時のパレスに立っている。
  やがてミュージカルの時代が訪れると、パレスでも数々のミュージカルが上演されるようになった。『スィート・チャリティ』『アプローズ』『ウーマン・オブ・ジ・イヤー』『ウィル・ロジャース・フォーリーズ』『美女と野獣』『アイーダ』『オール・シュック・アップ』『リーガリー・ブロンド』等である。
  同時に、パレスはスーパースターのライヴ会場としても歴史を刻んで来た。ジョセフイン・ベーカー、シャーリー・マクレーン、ダイアナ・ロス、ベット・ミドラーなどがその名を留めている。
  ジュディ・ガーランドもパレスでライヴを行ったひとりである。そして、その娘ライザ・ミネリも。共に“At the Palace”と言うアルバムを残しているが、ライザのそれは、2人の足跡がだぶって一際感動的である。

  『ラ・カージュ・オ・フォール』も、そんなパレスの1ページである。以前、「パレス・シアターは、日本で言えば帝劇みたいな所だよ」と教わったことがある。
  『ラ・カージュ・オ・フォール』が日本では帝劇で初演されたのは、あながち偶然ではなかっただろう、と思う。

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『ジキル&ハイド』通信

12月18日(日)

  『ラ・カージュ・オ・フォール』はお休み。『ジキルハイド』の舞台美術打ち合わせ。

  基本的な美術プランはほぼ出来上がっている。今日は照明デザインと大道具製作の観点からのミーティングであった。
  美術デザイナーの大田創さん、照明デザイナーの高見和義さん、舞台監督の小林清隆さん、演出助手の郷田拓実さん、それに大道具製作の俳優座劇場舞台美術部の皆さんが集まってくださった。

  出席者に演出プランをひと通り説明している途中で、初演(2001年)時の打ち合わせのことに話が及んだ。

  山田「10年前も同じ様な話してたけど」
  高見「あれは、もう10年前ですか!?」

  その通り。あれからもう10年も経ったのである。帝劇の地下稽古場で、厚紙で舞台模型を作りながら(私も作った)、毎回毎回、何時間も何時間も、ああでもない、こうでもないと知恵を絞った、あれからもう10年が過ぎたのだ。
  あの時あの場所にいた人は(大田さんも郷田さんも)、みんな同じような感想を抱いただろうと思う。私もとても10年前とは思えない。

  高見「どうりで頭も白くなる訳だ」

  と、私と生年月日が同じ高見さんは言った。私の場合は頭よりも髭が白くなったけど。

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