ワダエミさん
ワダエミさんの訃報が届いた。
ワダエミさんとは『浪人街』(2004年/青山劇場)でご一緒した。
『浪人街』は何もかもが桁違いの大作であった。クリエイティブ・チームにアカデミー賞(日本のではない。ハリウッドのである)の受賞者が2人もいる……というような感じである。そのおひとりがワダエミさんであった(もうひとりは坂本龍一さん)。
『浪人街』の衣装は全点がワダさんのデザインによるオーダーメイドであった。衣装デザインを依頼するにあたってワダさんは「糸を染めるところからやります」とおっしゃった。当時チャン・イーモウ監督とのコラボレーションが続いていたワダさんは、中国にお付き合いのある染色工房などが沢山おありだったのだと思う。
どうしてそんな手間のかかるやり方が可能だったのかと言うと、『浪人街』では準備期間にも桁違いの期間が取られていたからである。ワダさんと最初に衣装の打ち合わせをしたのは2002年の10月9日。本番の1年半以上も前のことである。
衣装は稽古開始前に全点が出来上がっていた。稽古で衣装を着用して初日までに着古した感じにして欲しい、というのがワダさんの狙いであった。
あんな仕事のやり方は二度とできないだろう。
通常、私は「衣裳」と言う漢字を使うのだが、ワダさんの場合は「衣装」である。ワダさんご自身のこだわりであった。
ご冥福をお祈りいたします。
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