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『オトコ・フタリ』通信

11月18日(水)

 稽古前、演出助手の末永さんは海苔の巻かれた普通のおにぎりを頬張っていた。

 「お赤飯のおにぎりは売り切れだったのだな」と思ったので、そう聞いてみた。すると末永さんは袋の中からもぞもぞとお赤飯のおにぎりを取り出して見せてくれた。お赤飯のおにぎりを温存していたのである。
 「末永さんは“好きなものを一番最後に食べる”タイプなのだな」と思ったので、今度はそう聞いてみた。すると末永さんは「そうではない」のだと言う。

 こう言うことらしい。

 普通のおにぎりは、まずおにぎりの山頂からぐるりと一周している“ビニールのリボン”を剥きはがし、続いて“表のビニール”と“海苔とお米を隔てているビニール”を左右に引き抜き、そうしてようやく食べられる状態になる。
 食べられる状態になるまでに手間がかかる上に、周囲に「いま食べてます」感を強くアピールしてしまうことになるわけで、これはでは“ちょっとした稽古の小休止”にこっそりと小腹を満たすにしては存在感が大きすぎてしまう。

 だから「そんな時にお赤飯のおにぎりなのですよ」と末永さんは言う。お赤飯のおにぎりなら、ちょっとした隙間時間にさっと開封してそのまま口に運ぶことができて、稽古場の“芝居を生み出す空気”を壊さずに済むのであるらしい。何と美しい演劇人魂であろうか。

 それはともかく。

 今日の稽古は思いがけず想定より早く終了した。なので末永さんは、せっかく温存した“お赤飯のおにぎり”を本来の意図通りには食べられなかったのではないかと思う。
 明日の稽古は“もう少し粘ろう”と思う。そして誰もが「小腹が空いた」と感じるころに“ちょっとした小休止”を取ろうと思う。

 売り切れていませんように。

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