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2020年11月の記事

『オトコ・フタリ』通信

11月29日(日)

 今日も通し稽古。

 『オリ』の音楽を担当してくださるのは江草啓太さんである。
 江草さんとは『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』でご一緒した。『ファースト・デート』ではキーボード/バンドリーダーとしてお世話になった。今回はミュージカルではないので、江草さんにお願いしているのはドラマの音楽(劇伴)である。

 劇中では江草さんが作ってくださった劇伴が要所要所で流れることになるのだが、今回、江草さんは稽古用に“デモ音源”を作ってくださっている。で、できあがった物からどんどん送ってくださるので、届いた物から順次稽古で使用してみている。今日で全曲そろったので、本番の形にまた少し近づいた。

 稽古後は演出部の皆さんと××××のシミュレーション。ネタバレになってもつまらないので具体的なことには触れない。

 ところで、東宝演劇部のTwitterで『オリ』の稽古場レポートが始まっている(こちらからどうぞ)。
 写真で左手前に立っているのが演出助手の末永さんである。最近は“お赤飯のおにぎり”が多方面から差し入れられるらしい。

 食べ過ぎませんように。

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『オトコ・フタリ』通信

11月27日(金)

 全編を通す。

 昨日の稽古で見つけた“もっと効果的”で“もっと面白い”やり方は、おおむね上手く再現できていたと思う。その結果、ドラマのメリハリと言うか、ダイナミズムが高まり、見ごたえのある作品にまた1歩近づいたと思う。
 と同時に、更に調整を加えるべき個所もまた見つかったので、通し後のノートでそれらを共有、次回の通しに備える。

 目下の悩みどころは『オリ』がコメディであるという部分である。
 「コメディは稽古が難しい」という話はこのブログでも再三触れてきた。コメディでは“お客様が笑ってくださるか否か”が勝敗の分かれ目であるのに、そのお客様が稽古場にはいらっしゃらないからである。

 今回は稽古期間にゆとりがあるのでありがたい……という話を昨日書いたばかりだが、ゆとりがあるおかげで何度も稽古を繰り返すことができて(そのお陰でドラマが深まったり演技が充実したりしているのだが)、その反面、最初に稽古した時に面白かった個所にもだんだん慣れてきてしまい、今でも変わらずに面白いのか、今ではそれほどでもないのか、それがもはや分からない。

 料理人が自らの舌を信じてお客様に料理を提供するのと同じように、我々も自らの“笑いセンサーを”信じて稽古を積み重ねるしかないのであろうか。

 悩んでも答えは出ない。

 ……なので明日は稽古OFF。

 (もともと決まっていたお休みであることは言うまでもない)

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『オトコ・フタリ』通信

11月26日(木)

 通さずに全場面を当たる。
 で、昨日の通しで見えてきた“可能性”をひとつずつ試してみる。もっと効果的で、もっと面白いやり方はないか。キャストの皆さんと知恵を絞る。

 稽古期間がギリギリしか確保されていない現場では、稽古の2巡目にはもう“芝居を固めてしまう”ことになりがちである。そうしないと初日に間に合わないからであるが、今回は1巡目をかなりゆとりを持って進めてきたにもかかわらず、2巡目でまだ試行錯誤が許されるのが嬉しい。このような環境での芝居作りがもっともっと広まるといいなぁ。(山口さん曰く「劇団みたい」)

 大道具以外の様々な部分(家具や、×××、△△など)も少しずつ本番仕様の物に置き換えられ、舞台上のことをよりイメージし易くなっている。演出部の皆さんの尽力に“芝居作り”も大いに助けられている。

 明日は再び全編を通すつもり。今日見つけたことが再現できるかどうか……?

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『オトコ・フタリ』通信

11月25日(水)

 全編を通してみる。

 稽古前の山口さんは今日もおしゃべりであった。が、浦井さんと保坂さんに気を使われたのであろう。お2人からは離れたところにいた私と末永さんの所にいらして喋り倒された。
 おしゃべりは、山口さんにとっては恐らくはウォーミング・アップなのだろう。誰かとしゃべりながら“演じるために必要な身体と精神の様々な部分”の調子を探り、整え、演技に必要なレベルまで持ち上げているのではないか、と私は思う。“稽古前のおしゃべり”は演じるのに不可欠な儀式なのである。

 初めての通しは大きな混乱も破綻もなく無事にラストまでたどり着いた。まずそのことを素直に喜びたい。
 そして繋がってみるといろいろと見えてくることもある。今日のノートでは、その見えてきたことについてキャストの皆さんと意見交換。これが残りの稽古期間の目標となるだろう。

 ノートの後はいくつかの場面を微調整。稽古の残り期間にまだ余裕があるので、難易度の高そうな領域にも踏み込んでみるつもり。

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『オトコ・フタリ』通信

11月24日(火)

 衣裳/ウィッグ合わせ。

 先日の会見やポスター/チラシなどでキャストの皆さんが着用している物以外にも衣裳は何点かある。今日はそれらの合わせ。衣裳デザイナーは前田文子さん、ヘアメイク・デザイナーは川端恵理子さんである。

 『オリ』は現代の日本を舞台にしたストレート・プレイなので、“衣裳”や“ウィッグ”と言っても至って現実的な物ばかりである。マントをバッサバッサ翻したりするようなことは間違ってもない。
 と言うわけで、衣裳もウィッグも極めて“日常的”な物が選ばれた。衣裳とウィッグを着用しているにもかかわらず「保坂さん、早く衣裳着てください!」などと言われてしまうタイプの物ばかりである。

 稽古では後半を通してみる。

 一昨日と同様に悪くない出来であった。が、課題はまだまだあるので、ノートでそれらを共有をした後、再度後半を通す。
 2回目の始まる前に山口さんが「次は“安全運転”をせずに行くところまで行ってみます」的なことをおっしゃった。稽古では常に“安全”を心がけていらっしゃる山口さんにしては珍しくアグレッシブなご発言で、私は心の中で秘かに喝采を送った。

 さて。

 一昨日は前半、そして今日は後半を通した。明日はいよいよ全編を通す。

 ……つもり。

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『オトコ・フタリ』通信

11月22日(日)

 稽古風景を撮影するスチール・カメラが入った。カメラマンは東宝系の稽古場/舞台写真でお馴染みの田内俊平さんである(このページ左側にある私も田内さん撮影)。今日撮られた写真は公演プログラムの数ページを飾ることになる。

 東宝系の作品の公演プログラムでは“稽古場風景のページ”があるのが常であった。
 “あった”と過去形なのは、コロナ禍以降に作成された公演プログラムにはそのページが無いからである。『ローマの休日』の公演プログラムでも稽古場風景は掲載されなかった。理由はいくつか考えられるが、稽古場の人数を1人でも少なく保ちたいことや、感染対策をしての稽古が“絵になりにくい”ことなどがあるだろう。

 と言うわけで、東宝系公演のプログラムでは『オリ』が稽古場風景を掲載する再開第1号と言うことになるらしい。『オリ』の稽古場がキャストとスタッフを合わせても少人数であることもその判断を後押ししただろう。

 稽古では前半を通してみる。

 もう少し“取りこぼし”があるかと予想していたのだが、それに反して悪くない出来であった。と言っても改善すべき点は多々あるので、ノート(かつて「ダメ出し」と呼ばれていた作業)でそれを共有。その後、再度前半を通す。
 その結果、劇的に良くなった2回目であった。ノートで共有したことがほぼすべて改善され、物語の構造がくっきりと浮かび上がってきた。

 芝居と言うものは、ちょっとしたことでびっくりするような進化を見せることがある。今日は収穫のとても多い1日となった。そのご褒美に明日の稽古はお休みに。

 嘘です。

 ご褒美だからではなく、もともと決まっていたお休みです。

 ……また嘘をついてしまいました。

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『オトコ・フタリ』通信

11月21日(土)

 先日行われた会見の映像はもうご覧いただけただろうか?(まだの方はこちらからどうぞ)

 ご覧いただけば“キャスト3人の仲の良さ”は一目瞭然であろう。9月17日に帝劇で行われたスペシャル・トークショーでもすでに仲良しであったが、稽古場の3人はその何倍もフレンドリーである(稽古場は何と言っても“非公開”だからね)。

 稽古が始まる前は3人の“おしゃべりタイム”である。話題は日によって変わるが、天気の話題だったり、食べ物の話だったり、その日のニュースのことであったり、過去の失敗談であったり……様々である。
 思いのほか“おしゃべり”なのは山口さんで、稽古時刻が近づいてくると浦井さんと保坂さんは台本に目を落として仕事モードへと移行するのだが、山口さんはほとんどの場合“おしゃべり”を続けている。今日の山口さんはほとんど“かまってちゃん”であった。

 しかし、そんな仲の良さが“演じる時”には問題となる。

 物語の発端では、登場人物はまだ“お互いのことをよく知らない”設定である。そして登場人物同士が激しく言い争うような場面も現れる。そんな設定や場面であるにもかかわらず、登場人物同士が“気脈を通じている”ように見えてしまうことが再三再四あった。
 演技には“日常の人間関係”が透けて見えてしまう。これはとても恐ろしいことである。

 “険悪な場面を実現するために日常も険悪に過ごす”と言う考え方もあるだろう。が、(映像作品はさておいて)こと舞台に限ってはそれは逆効果であると私は思う。そういう部分は稽古を重ねて行く中で解消されるべきである。

 仲良きことは美しいのである。

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『オトコ・フタリ』通信

11月20日(金)

 稽古は2巡目に入っている。ひとまずラストシーンまでたどり着いたので、幕開きに戻っておさらい、と言うか、更に深める作業に取り組んでいる。

 キャスト3人の中で稽古場に一番乗りするのは決まって浦井健治さんである。私もどちらかと言えば早い方だが、浦井さんは私より早い。早く到着して浦井さんが何をしているのかと言うと、イヤホンを耳に1人で稽古場をうろうろと歩きながら芝居の予習、または復習をしている。

 俳優には2通りあって、浦井さんのように「早く稽古場に入って(或いは遅くまで稽古場に残って)予習・復習を繰り返すタイプ」と「予習・復習は稽古場では一切やらないタイプ」とに分けられる。山口祐一郎さんはどちらかと言えば後者である。

 山口さんは稽古場外で予習と復習を重ねていらっしゃると思われる。思われる……と言うのは、見たことがないし聞いてみたこともないからなのであるが、山口さんの台本を見れば徹底的に準備をされていることは明らかである。山口さんの台本はおびただしいほどの付箋で倍の厚さになっているし、書き込みも誰よりも多い。

 保坂知寿さんは山口さん、浦井さんとはまた違ったタイプである。浦井さんほど早く稽古場にいらっしゃるわけでもないし、台本も付箋だらけではない。が、稽古が始まれば誰よりもしっかりと準備ができている。
 保坂さんも「稽古場外で予習・復習をするタイプ」であると思われるが、山口さんの方法とはまた異なる方法でそれをなさっているのだろうと想像する。

 たった3人のキャストでも芝居への取り組み方に個性が現れていて面白い。
 たった3人だからこそ、いつもはあまり気にしていないそんな部分にも目が行くのであるが。

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『末永陽一』通信

11月19日(木)

 今日の末永さんは稽古前に“コンビニおにぎり”と“コンビニ納豆巻き”を食べていた(あと“なめこのお味噌汁”も)。

 どちらもお赤飯ではなかったので「今日も温存しているのだな」と思って聞いてみると、今日は本当に売り切れだったらしい。
 その時点で私は目の前が真っ暗になった。完璧に準備していた“稽古の進行計画”が何の意味もなさなくなってしまったからである。

 今日の稽古の進行には自信があった。稽古場で演出家のなすべきことに集中しているように見せながら、“お赤飯のおにぎり”に相応しい完璧な登場場面をお膳立てする。今日は私の演出家人生の“秘かなハイライト”になるはずの日であった。

 なのに……。

 が、しかし、である。

 人生は何が起こるかわからない。
 山口祐一郎さんのマネージャーである山川さんが、なんと末永さんのために“お赤飯のおにぎり”を買っておいてくれていたのである。陽の目を見ることはないと思われた“稽古の進行計画”は息を吹き返した。

 今日の私はいい仕事をしたと思う。誰もが「小腹が空いた」と感じる絶妙なタイミングに“ちょっとした小休止”を宣言した。私は目立たぬように“お赤飯のおにぎり”を口に運ぶ末永さんを見逃さなかった。

 で、稽古は……まあ順調なんじゃない?

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『オトコ・フタリ』通信

11月18日(水)

 稽古前、演出助手の末永さんは海苔の巻かれた普通のおにぎりを頬張っていた。

 「お赤飯のおにぎりは売り切れだったのだな」と思ったので、そう聞いてみた。すると末永さんは袋の中からもぞもぞとお赤飯のおにぎりを取り出して見せてくれた。お赤飯のおにぎりを温存していたのである。
 「末永さんは“好きなものを一番最後に食べる”タイプなのだな」と思ったので、今度はそう聞いてみた。すると末永さんは「そうではない」のだと言う。

 こう言うことらしい。

 普通のおにぎりは、まずおにぎりの山頂からぐるりと一周している“ビニールのリボン”を剥きはがし、続いて“表のビニール”と“海苔とお米を隔てているビニール”を左右に引き抜き、そうしてようやく食べられる状態になる。
 食べられる状態になるまでに手間がかかる上に、周囲に「いま食べてます」感を強くアピールしてしまうことになるわけで、これはでは“ちょっとした稽古の小休止”にこっそりと小腹を満たすにしては存在感が大きすぎてしまう。

 だから「そんな時にお赤飯のおにぎりなのですよ」と末永さんは言う。お赤飯のおにぎりなら、ちょっとした隙間時間にさっと開封してそのまま口に運ぶことができて、稽古場の“芝居を生み出す空気”を壊さずに済むのであるらしい。何と美しい演劇人魂であろうか。

 それはともかく。

 今日の稽古は思いがけず想定より早く終了した。なので末永さんは、せっかく温存した“お赤飯のおにぎり”を本来の意図通りには食べられなかったのではないかと思う。
 明日の稽古は“もう少し粘ろう”と思う。そして誰もが「小腹が空いた」と感じるころに“ちょっとした小休止”を取ろうと思う。

 売り切れていませんように。

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『オトコ・フタリ』通信

11月17日(火)

 12日に行われた会見の映像がYouTubeにUPされている。第1弾はこちら、第2弾はこちら、そして第3弾はこちらである。
 ネット上のレポートも、“続報”というか、“より掘り下げた”質疑応答が追加でUPされているので(しかも複数)、第1報をお読みになった方もまた検索してみてください。

 さて。

 稽古休みを利用して演出部の皆さんが稽古場をヴァージョン・アップしてくれた。より本番に近い仕様になり芝居の細部を検証し易くなった。演技もより具体的になるはずである。

 そして照明デザイナーの服部基さんが登場。稽古を観ていただき、作中の“キモ”となるシーンについて意見交換。
 服部さんには『サウンド・オブ・ミュージック』『南太平洋』などのブロードウェイ・ミュージカル、『バイ・マイセルフ』『きららの指輪たち』などの日本の現代劇、そして『ローマの休日』『ダンス オブ ヴァンパイア』(どちらも初演ヴァージョン)などの帝劇グランド・ミュージカルなどでお世話になってきた。今回は久しぶりにストレートプレイでご一緒する。

 更に音響デザイナーの山本浩一さんも登場。稽古後、音響打ち合わせ。
 山本さんには近年のミュージカルのほとんどでお世話になっている。山本さんとも相当久しぶりのストレートプレイである。もしかして『フラガール』以来……?

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『オトコ・フタリ』通信

11月15日(日)

 昨日手を着けた場面をおさらい。更にその先へと進む。

 稽古が始まる前、いつも美味しそうに“おにぎり”を頬張っているのは演出助手の末永さんである。
 “おにぎり”ではない日もあるのだが、おにぎりであったにせよなかったにせよ、末永さんが頬張っている食べ物のほとんどは“お赤飯”である。どうやら末永さんはお赤飯が好物であるらしい。

 試しに「“おこわ”全般が好きなのか」尋ねてみたのだが、そういうワケではなく「お赤飯が好き」なのだという。毎日お赤飯でもいいくらいであるらしい。
 が、「3度の食事がお赤飯でもいいいか」どうか尋ねてみると、3食ともお赤飯なのは嫌であるらしい。「3食食べてもいい」のはカレーライスであるようだ。

 というわけで、スタッフのお弁当を手配してくださる皆さん、1日1食は末永さんのお弁当をお赤飯にしてあげてください(あるいは3食ともカレーライス)。

※お詫び※
 今日も稽古をそっちのけにすることができず、キャストの皆さんの様子をご報告することができませんでした。
 お詫びの印に演出助手・末永さんの様子を報告させていただきました。
 お詫びになっていない感じもするので、反省を示すために明日の『オリ』通信は休載します。

 嘘です。

 明日は稽古がお休みなので……(てへぺろ)。

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『オトコ・フタリ』通信

11月14日(土)

 予定通り新しい場面に進む。

 今日稽古したのは“後半のクライマックス”ともいうべき場面である。ここでは“思いもよらないこと”が次々と明らかになるのだが、“思いもよらないこと”である以上、ここでその内容に触れるわけにはいかない。

 話は変わる。

 『オリ』通信では、本当はキャストの皆さんの稽古場での様子や気の利いたエピソードなどを書きたいと思っている。
 今日も稽古場入りした時点ではそう考えていた。いたのであるが、稽古時間が近づくとどうしても“芝居の中身のこと”に考えが移ってしまい、結果として“ちょっとした瞬間のキャストの皆さんの様子”などを観察しそびれてしまうのである。

 で、今までは「がんばらない」ことを記したりして何とかお茶を濁してきたのであるが、さすがに連日それではこのブログを覗きに来てくださっている皆さんも愛想が尽きるに違いない。

 明日からは心を入れ替える。

 心を入れ替えて稽古そっちのけでキャストの皆さんの様子をご報告したいと思う。

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『オトコ・フタリ』通信

11月13日(金)

 昨日の会見はとても楽しく和やかなものであったらしい。ネット上でも幾つかのレポートを見ることができるので、ご興味のある方は【オトコ・フタリ】でご検索いただきたい。

 さて。

 今日は“おさらいデー”。今までに手を着けた部分を冒頭から丁寧にさらう。

 通常の「がんばってしまいがち」な稽古場では「ラスト・シーンまでとにかく行ってみる」という風に稽古を進めがちである。「細かい部分は後回しにして、ざっくりとでいいから全場面をあたってしまう」わけであるが、そのやり方にもメリットはそれなりにあるので、なのでがんばって「とにかくまずやってしまう」ことになる。

 が、今回の稽古場は「細かい部分にも気を配りながら、慌てずに焦らずに進む」のである。『オリ』にはその方がメリットが多そうだと感じるからである。

 今日はいい感じにおさらいを終えることができたので、明日は先に進む。

 ……つもり。

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帰って来た『オトコ・フタリ』通信

11月11日(水)

 今日の東京地方は実に気持ちの良いお天気であった。稽古場の窓から見上げる空も澄みきっていて、誰もが「こんな日に稽古場に籠っているのはなんだかもったいないなぁ……」と感じていた。

 「せっかくですから豊洲の……海の見えるあたりで台詞合わせるっていうのは……」

 そうおっしゃったのは山口祐一郎さんである。稽古場のほぼ全員が同意しそうになった。
 なったのだが踏みとどまった。踏みとどまって、物語の後半に踏み込む。そして物語前半の後半を少しおさらい。

 さて。

 明日はキャストの皆さんは会見と取材の日である。皆さんは扮装で(衣裳・ヘアメイクありで)少なくない数の取材に臨むらしい。その様子はいろいろな媒体で順次報告されるだろう。

 なので稽古は無し。私は呼ばれていないので、帰って来た『オリ』通信も(帰って来たばっかりなのに)お休み。

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帰って来た『オトコ・フタリ』通信

11月10日(火)

 稽古は今日で全体の半分程度まで進んだ。

 登場人物3人だけの芝居では、キャストの皆さんは「他の誰かの出番の間にひと休みする」というようなワケには行かない。舞台上でも気の抜ける暇がない。膨大な台詞を喋り、或いは聞き、そして反応し、行動しなければならない。それには大変な集中力が不可欠となる。
 が、“大変に集中する”ことはエネルギーを思いのほか消費する。稽古を数回繰り返すとキャストの誰かが“電池切れ”のような状態になり、不可欠な集中も途切れがちとなる。

 そんな時は糖分の補給である。低血糖になるとボ~っとして集中力が無くなる、無気力になる、イライラして落ち着かなくなる……とネットにも記してあった。
 糖分の補給方法は人それぞれであるが、リンゴやバナナなどのフルーツをつまんだり、飴やチョコレートを口にしたり、甘いジュースなどで補給する人もいる。因みに私はチョコレートであることが多い。

 話は変わる。

 美術デザイナーの伊藤雅子さんが舞台美術の模型を稽古場に持ってきてくれた。
 決して大掛かりではないが機能的な使い勝手の良いセットである。実際の大道具もこの模型のように仕上がってくれたら嬉しい。

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『オトコ・フタリ』通信

11月6日(金)

 稽古場で“がんばらない”のはキャストの皆さんだけではない。演出家も“がんばらない”のである。

 既に四半世紀ほど演出の仕事をしているが、今回「がんばらない」ことを稽古場のモットーにしてみて、自分も知らず知らずのうちに“がんばっていた”ことに気づいた。で、試みに“がんばらないで”演出をしてみると、それで何の問題も起こらない。
 演出家ががんばらなくても素敵な芝居はできるものなのだなぁ……。

 というわけで稽古は順調に進行している。
 その日の“稽古メニュー”はあらかじめ決められていてるのだが、時にメニューを消化できずに終わる日も無くはない。しかしだからと言ってメニューを消化するためにがんばることはしない。「そのためにがんばること」と「いい芝居を作ること」とはイコールではないのである。

 さて。

 明日より3日間は稽古OFF。

 がんばらない。

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『オトコ・フタリ』通信

11月5日(木)

 昨日のブログの最後に思わず「がんばれ~」と記してしまったのだが、稽古場のモットーは実は「がんばらない」である。

 私たちは今までの習性でつい“がんばって”しまう。
 キャストの皆さんは一刻も早く台本を手放し、与えられた段取りは1回で記憶し、少しでも多くの稽古メニューを消化しようとがんばってしまう。そういう“がんばり”を、この稽古場ではやめてみることにしているのである。

 その結果、何とも居心地のいい稽古場になっているのである。
 おしゃべりが続いている間は時間になっても稽古は始めない。上手くいかなかった個所は繰り返したい人がいる限り何度でも繰り返す。こまめに小休止し長時間に及ぶ稽古はやらない。思いついたことはどんなことでも試す。
 なんて風通しの良い稽古場だろう(実際にも窓を開放して常時空気を入れ替えているのだが)。

 ところで、9月17日に帝劇で行われた今回のキャスト3名によるトークショーのダイジェスト映像が公開されている。3人の扮装(衣裳とウィッグ)は『オリ』のためにデザインされた物である。

 こちらからどうぞ。

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『オトコ・フタリ』通信

11月4日(水)

 保坂知寿さんが演じるのは禅定寺家の家政婦・中村好子(なかむら よしこ)である。

 好子は禅定寺家に来て6年になる。
 炊事、洗濯、掃除、買い物……など、禅定寺家の家事は恐らくすべて好子が切り盛りしている。恭一郎も絵を描くこと以外のすべてを好子に一任している。そして好子は、どうやら恭一郎の次作——集大成となるはずの“愛”をテーマにした大作——の行方が気がかりであるらしい。
 そんな折に須藤冬馬は現れた。冬馬は……。

 今回、稽古場の空間にも稽古のペースにもゆとりがあることは昨日までに記した通りである。
 『オリ』が出演者3人だけの“こぢんまりとした芝居”であることがその“ゆとり”をもたらしているのであるが、キャストが3人だけしかいないということは、別の言い方をすれば舞台上の3人はほぼ“出づっぱり”だということである。

 稽古場や稽古のペースにゆとりを持たせているのは、逆に言えば、それだけ3人が大変な芝居だ……ということなのかもしれない。

 がんばれ~!

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『オトコ・フタリ』通信

11月3日(火)

 浦井健治さんが演じるのは弟子志願の若者・須藤冬馬(すどう とうま)である。

 物語は恭一郎の自宅に設えられたアトリエから始まる。
 ある日の午後、恭一郎が創作の合間にひと息入れていると玄関のチャイムが鳴る。来訪者は須藤冬馬と名乗り、恭一郎に「弟子になりたい」と告げる。が、奇妙なことに若者は「弟子志願」と言いながら生意気で喧嘩腰ですらある。話を聞いている内に……。

 『オリ』は稽古の進行も至ってのんびりしている。
 例えば大劇場のミュージカル(近年では“グランド・ミュージカル”と呼ばれたりする)の稽古では、消化しなければならないメニューがとにかく膨大で(歌稽古や振り付けや芝居稽古や大勢の登場人物のミザンセーヌや……)、なので稽古場も常に時間との戦いになってくる。

 しかし今回は登場人物は3人だけであるしミュージカルでもない。稽古期間も余裕をもって確保されているので、いつもの稽古場のように先を急ぐ必要もそれほどはないのである。

 これは精神衛生的にはとってもいいなあ。

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『オトコ・フタリ』通信

11月2日(月)

 山口祐一郎さんが演じるのは抽象絵画の巨匠・禅定寺恭一郎(ぜんじょうじ きょういちろう)である。

 恭一郎は国内の名だたる賞を総なめにしたうえに、パリのエレーヌ世界展やイタリア現代美術展など海外の賞も次々と物にしている重鎮である。おまけに独身で「とにかく女性にオモテになる」(禅定寺家の家政婦・談)らしい。次作として、集大成ともなる「愛」をテーマにした大作を準備しているのだが……。

 3人だけの出演者に私と演出助手の末永さん、舞台監督の山本圭太さんや演出部の皆さんを合わせても、稽古場内に常駐している人数は10人程度である。日生劇場クラスのミュージカルでも使用する稽古場なので、これは今までにちょっと経験したことのない“ゆとり”である。

 スペースのゆとりが気持ちにも影響するのか、新作の稽古場に付き物の“緊張感”のようなものもまるでない。それは“稽古場のゆとり”だけでなく、キャスト3人のお人柄とお互いの信頼関係のお陰でもあるのだが。

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『オトコ・フタリ』通信

11月1日(日)

 『オリ』の稽古が始まった。

 『オリ』は、脚本家・作家の田渕久美子さんが書き下ろしてくださった出演者3人だけのコメディである。田渕さんは、この5月にNHKで放送された日本/台湾共同制作ドラマ『路~台湾エクスプレス~』や、大河ドラマ『篤姫』『江~姫たちの戦国~』の脚本などでおなじみであろう。

 たった3人の出演者は山口祐一郎さん、浦井健治さん、そして保坂知寿さんである。この顔ぶれだが『オリ』はミュージカルではない。そして外国の話でもない。舞台は日本で、山口さん、浦井さん、保坂さんが演じるのも当然日本人である。私にとっても現代の日本を舞台とする作品を演出するのは『田茂神家の一族』以来のことになる。

 『オリ』は12月12日(土)にシアタークリエで開幕し、その後は大阪の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティと愛知の刈谷市総合文化センターアイリスでの上演が予定されている。

 ではクリエ開幕までのひと月半、どうぞよろしくお付き合いください。

 

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