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訃報 八千草薫さん

 八千草薫さんの訃報が届いた。

 八千草さんとご一緒したのは1度きり、2000年の1月に三越劇場で上演された『私だって!』の時のことである。
 「跳ぶなら今 キネマの美女の物語」と副題の付けられたこの作品は斎藤雅文さんが書きおろしてくださったコメディで、“昭和初期のモダン東京”を舞台にしたこの作品で、八千草さんは主人公の帝劇女優=若宮初音を演じてくださった。

 若宮初音は、皆さんが思い描かれるであろう八千草さんのイメージよりもうんと傲慢で自己顕示欲の強い女優として描かれていた。いささか鼻持ちならない所のあるそんな主人公を、八千草さんはとても楽しそうに生き生きと演じていらっしゃった。ミュージカルではなくストレートプレイではあったのだが、八千草さんは歌声もちょっぴり披露してくださった。

 その後、直接お目にかかる機会は得られなかったが、テレビなどで拝見するお姿は最近になってもあのころと全く変わらず、世の中には“時が流れても色褪せることのない美しさ”もあるのだと思っていた。

 ご冥福をお祈りいたします。

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