『レベッカ』通信 初日まであと2日
11月29日(木)
舞台稽古2日目。
朝のお掃除の後、今日の分のテク・リハを開始したところで“ちょっとした”トラブル。大事には至らず、テク・リハは程なく再開された。が、そもそもが「貴重」だった“時間”が、「とても貴重」な“時間”になる。
舞台稽古は午後イチからスタート。1幕4場より1幕ラストまで、“とても貴重な時間”をやり繰りして、何とか無事に終える。
舞台稽古後は今日もまた照明合わせの続き。もっと“やり繰り上手”にならなくては!
11月29日(木)
舞台稽古2日目。
朝のお掃除の後、今日の分のテク・リハを開始したところで“ちょっとした”トラブル。大事には至らず、テク・リハは程なく再開された。が、そもそもが「貴重」だった“時間”が、「とても貴重」な“時間”になる。
舞台稽古は午後イチからスタート。1幕4場より1幕ラストまで、“とても貴重な時間”をやり繰りして、何とか無事に終える。
舞台稽古後は今日もまた照明合わせの続き。もっと“やり繰り上手”にならなくては!
赤木春恵さんの訃報が届いた。
赤木さんは、お茶の間ではテレビドラマ『渡る世間は鬼ばかり』や『3年B組金八先生』などでお馴染みのはずである。その長く輝かしいキャリアはテレビドラマにとどまらず多岐にわたり、私の生まれる以前より綿々と続いている。
舞台でも数多くの出演作が残された。橋田寿賀子さん&石井ふく子さんの作品や、森光子さんの舞台の常連でいらした。私は演出部時代に、森光子さんや森繁久彌さんの公演でご一緒した。
私の東宝での演出デビュー作は、田辺聖子さんの小説を舞台化した『六十の手習い』(1997年、名鉄ホール)である。その座長を引き受けてくださったのが赤木さんだった。
その後、機会がある毎に「またご一緒したい」とおっしゃっていただいたのだが、それが叶うことはなかった。残念でならない。
ご冥福をお祈りいたします。
11月28日(水)
まず舞台のお掃除。の後、テク・リハの段取り。の後、テク・リハ。を早めに片づけて、照明合わせの続き。の後、サウンド・チェック。と並行して、照明合わせ。
そしてお祓(はら)い。初日の開演前に行われるのが常だが、今回はこのタイミングで。
お祓いの後、舞台上と舞台裏のオリエンテーション。の後、舞台稽古に入る。
今日はプロローグより1幕3場まで。“幕開き”から“モンテカルロ編”の終わりまでをやっつける。
トリプル・キャストの「わたし」はほとんどの場面に登場しているので、どの場面も3回ずつ稽古することになる。シングル・キャストの作品の舞台稽古と比べるとその分時間はかかるのだが、何回も繰り返すことでスタッフ・ワークがどんどん洗練されて行く、と言う嬉しい副産物も。
予定のメニューを予定通りに消化して(今日も巻けなかった)、舞台稽古1日目を無事に終了。残りの時間で照明合わせの続き。
明日は舞台稽古2日目。恐怖に満ちた“マンダレイ編”に突入。
11月27日(火)
シアター1010へ。
午前中は仕込み作業とフォーカス合わせの続き。午後から道具調べ/照明合わせ。
以前の『レベッカ』通信を読み返してみると、2008年の初演時も2010年の再演時も、劇場入りしてからはかなり過酷な作業だったことがうかがえる。
今回の『レベッカ』では“シンプルな表現”を目指している。2010年の“大劇場版”は比べるまでもなく、2008年のシアタークリエ版と比較しても、演出は(舞台美術を含めて)極めてシンプルになっている。
それでも照明合わせにはやはり時間がかかる。が、タイムテーブルにあるメニューをしっかりと消化して、タイムテーブルの時刻通りに1日を終えた(巻けなかった)。
明日から舞台稽古が始まる。その前にオーケストラと音響チームのサウンド・チェック。その前にテクニカル・リハーサル。その前にテク・リハの段取り。その前に舞台のお掃除。
11月26日(月)
『レベッカ』が再映画化される、というニュースが流れてきた(こちらやこちらなど)。
残念ながら、これはミュージカル版の映画化ではなく、ダフネ・デュ・モーリアの小説の再映画化である。どんな切り口になるのかなど詳細はまだ分からないが、公開を楽しみに待ちたい。
待ちきれない方は1940年の映画版『レベッカ』(アルフレッド・ヒッチコック監督/アカデミー作品賞受賞)をどうぞ。
さて。
シアター1010に来ている。
今日、明日は稽古は無い。終日スタッフの作業である。今日は朝から搬入、仕込み。そして音響の調整、照明のフォーカス合わせ、など。
ある程度作業が進んだところで舞台監督の佐藤さんが「タイムテーブル通りだな」とつぶやいたので、「順調なのだな」と思って聞いていたら、どうやらそうではなかったらしい。
腹づもりでは「タイムテーブルよりも巻く(早く進める)」決意だったらしいのだが、実際には「巻けなかった」ので、ちょっと残念な気持ちが先のつぶやきになったようだ。
明日は巻けますように。
11月25日(日)
稽古場最終日。オケ付き通しの3回目。
今回の『レベッカ』では、3回のピアノ通し、3回のオケ付き通し、合わせて6回の通し稽古を行なった。
トリプル・キャストの「わたし」たちは2回ずつ、ダブル・キャストのミセス・ダンヴァースたちは3回ずつ、それ以外のキャストは6回の通し稽古を行なったわけである。
10月22日の立ち稽古初日からひと月余り。この規模の(ほぼ)新作ミュージカルで、しかも主人公がトリプル・キャスト(その上出ずっぱり)と言う状況で“通し稽古6回”は立派な回数である。
それは偏にキャストとスタッフの“仕事に対するプロフェッショナルな姿勢”のお陰だと思う。この場を借りて敬意を表したい。
上演時間は、1幕が約1時間20分、2幕が約1時間である。これにカーテン・コールが付き、幕間休憩は20分の予定。なので、全体としては2時間45分前後の上演時間になるだろう。
明日からはシアター1010が仕事場である。プレビューの初日は12月1日。今度の土曜日である。
11月24日(土)
オケ付き通し、2回目。その前にカーテン・コールを作る(末永君が)。
新生『レベッカ』は、通し稽古を重ねる毎に“安定感”を増している。
舞台作品で大切なことのひとつは、「“再現性”を備えていなければならない」と言うことである。観劇するたびに“やっていること”が異なっていたり“仕上がり”にばらつきがあったりすることは、舞台の世界ではあまり「いいこと」とはされていない。
舞台の世界では、同じクォリティの公演を、新鮮さを維持しながら繰り返せることが望ましい。が、それは容易なことではない。
なので、『レベッカ』が「通し稽古を重ねる毎に安定度を増している」のは、実にいい傾向なのである。
明日はオケ付き通し、3回目。そして稽古場最終日である。
11月23日(金)
オケ合わせ2日目、昨日の続き。そしてオケ付き通しの1回目。
シルヴェスター・リーヴァイさんのお嬢さん、アリスさんがオケ付き通しを見に来てくださった。
通し稽古終了後は直接お話しすることはできなかったのだが、“I love it.”とおっしゃっていたと伺った。私としては、これでまたひと安心。
事実、一昨日のピアノ通しよりも更に充実した、素晴らしい通し稽古であったと思う。特に2幕後半のドラマの運びが今までになく白熱し、クライマックス感が一層高まった。オケ合わせの間に加えられた様々な修正が大いに効果を上げている。
明日は2回目のオケ付き通し。カーテン・コールも段取るつもり(末永君がね)。
11月22日(木)
オケ合わせ、1日目。
塩田明弘さんの指揮の下、ミュージカル・ナンバーと主要なアンダースコア(いわゆるBGM)を1曲ずつ、或いは2~3曲繋げて、合わせて行く。
『レベッカ』の音楽は、クンツェさん&リーヴァイさんの他のミュージカル(『マリー・アントワネット』や『エリザベート』など)と比べると、より“等身大”、と言うか、極めて“演劇的”であるように私は感じる。
アンダースコアも、まるで映画音楽であるかのように緻密に書かれている。そう言った部分にも気を配りながら、1日目のオケ合わせを終えた。
明日は今日の続き。その後、オケ付き通し。
11月21日(水)
ピアノ通し、3回目。
良い感じだった昨日を上回る、最上の通し稽古だったと思う。翻訳・訳詞の竜真知子さんや、衣裳の前田さん、美術の松生さんなど、ギャラリーも賑やかだった。皆さんから好意的な感想を頂けたので、私としてはひと安心である。
通し終了後、いつものように全体でダメ出し。私からの“ダメ”は日に日に少なくなる。
稽古後は、リハーサルを終えたオーケストラを迎え入れるために稽古場の模様替え。明日は“オケ合わせ”。
11月20日(火)
ピアノ通し、2回目。
昨日のダメ出しポイントが改善され、更に良い感じのピアノ通しであった。
通し後は今日もカンパニー全体でダメ出し。その後、幾つかの場面を“粘って”手直し。
稽古後は舞台進行/照明打ち合わせ。照明デザイナーの成瀬さん、舞台監督の佐藤さん、演出助手の末永さん、演出部の石川さん(3石川の1人)と。『レベッカ』は難易度高いなあ……。
それはともかく、「げきぴあ」に稽古場レポートがUPされている。若干“ネタバレ気味”に思えなくもないが……。
こちらからどうぞ。
11月19日(月)
ピアノ通し、1回目。
止めずに通すことで見えてくる色々なことがある。“止めずに通す”と言うことは“本番により近い状態”で稽古していることになるわけなので、ここで見えてきたことは“観客にもそのように伝わる”と思った方がいい。
通してみて“よかったと感じられた点”は、それが定着するように促し、“そう感じられなかった点”には何か手を打たなければいけない。
稽古後のダメ出しは、その内容をカンパニー全体で共有しておきたいので、その場面の関係者だけに伝えるのではなく、スタッフ&キャスト全員参加で行う。
定着させたいことも、手を打つべきことも、全体で共有しておけば、スタッフ&キャストのひとりひとりが主体性を持って作品に参加し易くなるはずである。個々が主体性を持って動けるカンパニーは強い。
オーケストラのリハーサルも別稽古場で始まった。リーヴァイさんから新しいアレンジ/オーケストレーションのスコアが届いている筈である。
11月18日(日)
エピローグを手直し。幾つかのヴァージョンを試してみて、最終的にしっくり来たものを選ぶ。その後、全場面を(“通し”ではないが)当たる。
今日は「歌入り読み合わせ」以来の“豪華リレー”であった(こちらのブログ参照のこと)。
全編を“昨日までより長い”幾つかのブロックに区切り、今まで以上に“流れ重視”で、稽古しては調整を加える、を積み重ねた。
当然のことながら、芝居の精度は確実に上がっている。演出やステージングの問題点も、1歩ずつだが確実にクリアになっている。
そして明日から、ついに“ピアノ通し”に突入する。オーケストラ・リハーサルもいよいよ始まる。
稽古場で過ごす“最後の週”である。
11月16日(金)
アンサンブルさんの衣裳&ウィッグ合わせ。あ、4人目の「あやちゃん」が!(衣裳デザイナーの前田文子さん)
衣裳&ウィッグ合わせの後、“流れ重視おさらい”の3日目。その後、2幕2場「海岸」と2幕5場「廊下」のナンバーを手直し。
一昨日、昨日、今日の3日間で全場面をひと通りさらった。
『レベッカ』オフィシャル・ページの“INTRODUCTION”では、『レベッカ』初演のことが「コンパクトかつ濃密な劇空間で繰り広げられたロマンティック・ミステリー」と紹介されている(それはこちら)。
今現在の『レベッカ』も、まさしくそんな感じである。ただし、今回はその再演ではなく、完全にリニューアルした“新作”であるが。
明日は稽古OFF。稽古場“最後の”OFFである。
11月15日(木)
コーラス稽古ふたたび。
前回のコーラス稽古(11月7日)では1幕の楽曲を取り上げたので、今日は2幕を。
コーラス稽古の後はおさらい。
昨日と同様に複数の場面を繋げ、流れを重視するスタイルで。
『レベッカ』の稽古場には3人の「あやちゃん」がいる。平野綾さん、出雲綾さん、島田彩さんである。
稽古中に誰かが「あやちゃん!」と呼ぶと、呼ばれていない「あやちゃんが」返事したりすることが時々起きるので、ちょっとややこしい。
1幕14場「化粧部屋」には3人の人物が登場する。「わたし」と、ベアトリスと、「わたし」付きのメイド=クラリスである。
ベアトリスを演じているのは出雲さんで、クラリスは島田さんである。なので「わたし」を平野さんが演じると、この場面に登場するキャストは全員が「あやちゃん」になる。
『レベッカ』の稽古場には3人の「石川さん」もいるのだが……。
その話はまたの機会に。
11月14日(水)
色々な場面のおさらい。来たるべき通し稽古に備えて、“複数の場面を繋げて”“流れを重視する”稽古に移行する。
今日は密度の濃い、充実した1日であった。今までの“場面毎に”“確認をしながら”稽古していた時には生まれなかった“集中力”、或いは“求心力”が、どの場面からも感じられたからである。
それには3人の「わたし」の進化が大きく影響していると思う。3人が今までコツコツと積み重ねてきた努力が実を結びつつある、と言うことだろう。
その影響はカンパニー全体に波及し、至る所で白熱した演技が繰り広げられることとなった。影響は、もちろんマキシムにも及んだ。
今日のような1日を、明日も、明後日も送りたい。そして、この熱量と求心力を、そのまま劇場に持ち込みたいと思う。
そうなりますように。
11月13日(火)
終日、衣裳の仮縫い&衣裳合わせ、そしてウィッグの合わせ。
『レベッカ』の衣裳デザイナーは前田文子さん、ヘアメイク・デザイナーは川端恵理子さんである。前田さんは今回が『レベッカ』初参加で、川端さんは初演からの続投。
仮縫いは、「デザイン画が描かれ、生地が選ばれ、縫製された衣裳」を、「身に着けた状態で、寸法や仕上がりなどを確認・調整」する作業。衣裳合わせは「できあがっている衣裳」を「身に着けて、寸法や使い勝手などを確認・調整する」作業である。
衣裳とウィッグを着用すると、いつも通りの見慣れた大塚千弘さん、平野綾さん、桜井玲香さんが、目の前で見る見るうちに「わたし」へと変わっていく。涼風真世さんも保坂知寿さんも、瞬く間にミセス・ダンヴァースである。
衣裳とウィッグの力は想像以上に大きい。
衣裳合わせに立ち会って思ったのは、「1幕後半にやってくる“仮装舞踏会”の場面は、思った以上に見どころなのかも知れない」と言うことである。
衣裳とウィッグの力は計り知れないほど大きい。
今日の作業は文字通り“朝から夜まで”であった。衣裳チームの皆さん、ヘアメイク・チームの皆さん、そして演出部の皆さん、ありがとうございました。
11月12日(月)
1幕をおさらい。そしてエピローグを作る。
物語には“始まり”があれば“終わり”がある。プロローグがあればエピローグがあるのである。
エピローグは、プロローグと同じように桜木さんがステージングをしてくれた。そして、プロローグ同様、“夢のような”シークェンスになった。
これで全ての場面に手を着けた。ここまで“駆け足”であったことは否めないが、駆け足でもここまで来ておかないと、この先が厳しくなる。稽古場で過ごせるのもあと2週間である。
……と言うことは「来週の半ばにはオーケストラが稽古場に入って来る」と言うことで、と言うことは「来週の頭から通し稽古だ」と言うことで、と言うことは「粘れるのは今週末までだ」と言うことなのである。
粘るのか?
11月11日(日)
丸美屋食品ミュージカル『アニー』。その2019年の“ダンスキッズ”を選ぶオーディションが昨日と今日とで行われた。
日本テレビ製作の『アニー』は、初演から既に30年を超える上演史を持っている。私たちの『アニー』はその3ヴァージョン目で、このヴァージョンは2019年で3年目を迎える。
ダンスキッズは、このヴァージョンになって登場した“ダンスシーンに特化した子供たち”の呼び名である(ダンスキッズについては昨年のブログもご参照いただきたい)。アニー役や孤児役と同様にダブルキャストになっていて(チーム・バケツとチーム・モップ)、チームごとに6人ずつ、合わせて12人のキッズが選ばれることになる。
まず1次審査の書類審査である程度人数が絞られる。そして実技の2次審査。昨日がその1日目であった。審査をするのは振付の広崎うらんさんと振付助手の小山みゆきさん。私は現在『レベッカ』の稽古中なので、最終日である今日のみの参加であった。
既にオフィシャル・ページには“ダンスキッズ決定”の第1報がUPされているが(それはこちら)、今年も本当に甲乙つけがたい、大変充実したオーディションであった。
去年も一昨年もそうだったのだが、子供たち全員から「ダンスが大好き」なことがヒシヒシと伝わってきて、その中から誰かを選ぶことなんて、とてもではないができない。
……と言ってもいられないので、「断腸の思いで(うらんさん談)」12人を選ばせていただいた。
合格した皆さん、本当におめでとう。残念な結果だった皆さん、どうかダンスを辞めないで!
11月10日(土)
2幕のおさらい。
5場~6場、2場、7場、8場、9場~10場~11場をおさらいした後、12場を完成させる。
『レベッカ』の2幕後半を見ていて感じるのは「愛は負けない」と言うことである。負けないのは「わたし」の愛か? それともレベッカの愛か……?
照明デザイナーの成瀬さんが稽古を見に来てくれる。
『レベッカ』の照明デザイナーは、シアタークリエでの初演も、大劇場版の再演も、成瀬さんだった。その時のデザインでは、極細の光線が暗闇に突き刺さる様に差し込んでくる明かりが印象に残る。
今回はどんなデザインになるだろう。
11月9日(金)
2幕9場を完成させ、10場、11場、12場を作る。
10場はマンダレイの「窓辺」。
9場から繋がる場面である。とても短い場面だが、ここにはミュージカル・ナンバー「レベッカが歌う」がある。
11場は「コーンウォールの駅」。
ロンドンからの汽車が発着する、恐らくはローカルな鉄道駅である(実際には“コーンウォール”の名のついた鉄道駅は無いらしい)。ミュージカル・ナンバーは「夜を超えて」がある。
そして12場は「××××××マンダレイ」。
ここにはミュージカル・ナンバー「×××××××」があるが、今日はマンダレイの使用人たちのセクションだけをステージング。それ以外の人たちのセクションは明日のメニュー。
これで手を着けていない場面はエピローグのみとなった。まだラフ・スケッチの段階だが、新しい『レベッカ』の全体像が見えてきた。
開幕まで3週間。どこまで成熟させられるだろう。
11月8日(木)
2幕8場、9場を作る。
8場はマンダレイの「書斎」。直前の場面(7場)の“審問会”で新たに浮上した“事実”が「わたし」の前に立ちはだかる……。
ここにはファベルのミュージカル・ナンバー「持ちつ持たれつ」があるが、それ以外の部分では、まるでストレート・プレイのように緊迫した台詞のやり取りが続く。稽古場の雰囲気もストレート・プレイのそれのようである。
9場は「マンダレイの玄関ホール」。
その日「わたし」は、ジュリアン大佐、ファベルと共にロンドンに赴いた。“あること”を確認する必要が出てきたからである。「わたし」の留守中のマンダレイの様子が、ミュージカル・ナンバー「出発は8時」では描かれる。
稽古場に取材の方がいらしてくださることが続いている。稽古場の様子が記事になったり、オンエアされたり……するかも知れません。
11月7日(水)
稽古がある程度まで進んだので、この辺で改めてコーラス稽古。
音楽監督の甲斐正人さんが、音楽のニュアンスやナンバーの意味合いなどについて、1曲ずつ調整を加えて行く。より音楽的になる、と同時に、より演劇的にもなって行く。甲斐マジック!
今日のコーラス稽古を振ってくれたのは(指揮をしてくれたのは)宇賀神典子さん。今回の『レベッカ』は塩田さんの指揮で開幕し、宇賀神さんに引き継がれることになっている。
コーラス稽古の後、2幕のおさらい。
今日のメニューは1場abc、3場、4場、2場、そして5場。2場と5場は完成途中であったものを最後まで作り終える。
まだ手を着けていないのは6場面。今週末までに、なんとかラストシーンまでたどり着きたい(たどり着けるといいな)。
11月6日(火)
2幕5場、6場、7場を作る。
5場はマンダレイの「廊下」。
この場面にあるミュージカル・ナンバーは「新しいミセス・ド・ウィンター(リプライズ)」。桜木さんが驚異的なスピードでステージング……している途中で演出家から注文が入り、一気呵成ではなくなる。
6場は「モーニング・ルーム」。
ここにはミュージカル・ナンバー「それは私よ」があり、“それ”とは何か、“私”とは誰かが気になるところであるが、ここでは触れない。
そして7場は「裁判所」。ミュージカル・ナンバーは「審問会」。
触れたいが触れない。
モーニング・ルームは、マンダレイの奥様(ミセス・ド・ウィンター)が、手紙を書いたり電話をかけたりして午前中を過ごすためだけの部屋である。
と言うことは、ハイヌーン・ルームやレイトナイト・ルームもある――と言うことなのか?
11月5日(月)
2幕2場、3場ab、4場を作る。
2場は(コーンウォールの!)「海岸」である。
ここは大勢の人物が登場する場面。ミュージカル・ナンバーは「流れ着いたもの」があり、桜木さんが驚異的なスピードで一気呵成にステージング。
3場aは再び「ボートハウス」。連続する3場bは「告白」である。
……あれ? なぜ3場bは「告白」なのだろうか? 他の場面は「なんとかルーム」や「なになに部屋」のように“場所”なのに……?
それはともかく、ストーリー上、ここは極めて重要なことが語られる場面である。登場人物は3場aの冒頭にベンがちょこっと姿を見せる以外は「わたし」とマキシムの2人きりである。
稽古では、3人の「わたし」が“この場面で起こっていること”や“表現しなければならないこと”をしっかりとキャッチできるように、 いつも以上に時間をかけてじっくりと確認。
「ほとんど1人で歌っている」「×(かける)3」のマキシム様、どうぞお疲れが出ませんように。
そして4場は「ブレックファスト・ルーム」。
ここには「わたし」とベアトリスのナンバー「女は強くなる」がある。これは、ウィーンではとても人気のあるナンバーであるらしい。
ブレックファスト(朝食)のルームがあると言うことは、マンダレイにはランチ・ルームやアフタヌーンティ・ルームもある――と言うことなのか?
11月4日(日)
私のパソコンは、ロック画面に日替わりで“風景”や“生き物”などの写真がランダムに表示される設定になっている。
パソコンを立ち上げて、心臓が口から飛び出るかと思うほど驚いた。ディスプレイに映し出されたのが、レベッカがヨットの事故で命を落とした“コーンウォールの海岸”だったからである。
それはともかく、1幕11場(コーンウォールの海岸!)と12場をおさらい。おさらいの後、2幕の立ち稽古に入る。
今日、新たに手を着けたのは2幕1場a、1場b、1場c。
1場aはマンダレイの「廊下」で、1場bは「レベッカの寝室」、1場cは「窓辺」で、abcで連続したひとつの場面となっている。
1場aには「わたし」のナンバー「あれもこれも」があり、1場bにはミセス・ダンヴァースと「わたし」の「レベッカ Ⅲ」が、そして1場cにはミセス・ダンヴァースの「ほんの一歩で」がある。
今日は少人数の稽古場だった。
1幕11場に登場するのは「わたし」とマキシムとベンの3人だけだし、12場も「わたし」とフランクと執事のフリス(朝隈濯朗さん)の、やはり3人である。
2幕1場に至っては「わたし」とミセス・ダンヴァースしか登場しない。が、「わたし」は3人、ミセス・ダンヴァースは2人いるので、今日の稽古中では一番賑やかだったのだが。
明日は一転、大勢の人物が登場する場面から。(あ、その後は少人数だ……)
11月2日(金)
まず1幕13場~15場をおさらい。その後、1幕4場~10場をおさらい。
演出助手の末永さんが、おさらいの中にシレッと15場を入れてきた。危ない危ない。15場は、まだ手を着けていない場面=1幕のラスト・シーンである。どんな場面なのか……には、ここでは触れない。
今回の『レベッカ』では、マンダレイで「わたし」を迎える側の人々の様子も、今まで以上にしっかりと描きたいと思っている。昨日の記事でも触れたことだが、『レベッカ』では、主人公を取り囲む人々の態度とその変化こそがストーリーだからである。
2人のミセス・ダンヴァースは、その持ち味や、そこから受ける印象が結構異なる。
涼風ダンヴァースも保坂ダンヴァースも、現時点ではまだ芝居を固めずに様々な演じ方を試している。その結果、見えてくるものも毎回違うので、そのどれをチョイスするべきなのか、そこが大いに悩ましい。
もう少し悩みます。
11月1日(木)
昨日までの稽古場から新しい稽古場へ引越し。
演出部の皆さんが、稽古を休みにすることなく引越しを済ませてくれた。ここは、10年前『レベッカ』の初演を稽古した思い出深い場所である。
で、プロローグから1幕3場までをおさらい。
先々にどのような出来事が待ち受けているのか、それをどのように表現するのか、それらが分かったところでもう一度物語の発端に戻り、芝居を確認し修正をかける。
桜木さんによって手を入れられて、プロローグは更にいい感じになった。1場では、ミセス・ヴァン・ホッパーがスピーディな展開に悪戦苦闘している。「わたし」たちは、それぞれに新しいやり方をお試し中。
『レベッカ』では、アンサンブルさんたちも重要な役割を担っている。
「劇中で起きていること」の印象は、主人公を取り囲む人々の反応や態度によって大きく変わる。観客は、周囲の人々(アンサンブルさんたち)の様子から、無意識にストーリーを感じ取っているのである。
アンサンブルの皆さんは、物語の発端ではモンテカルロのリゾート客たちを演じ、舞台がマンダレイに移ってからは屋敷の使用人たち、更にはイギリスの上流階級の人びと、そしてマンダレイの領民たち……などを演じることになる。
彼らの表情や仕草のひとつひとつが、観客に「主人公に起きていること」を届けるのである。
明日もおさらい。
10月31日(水)
今日は2つの稽古場に分かれて稽古。
広い稽古場では「今宵 マンダレイで」と「アメリカン・ウーマン」のブラッシュ・アップ。狭い方では1幕11場と12場を作る。広い方は桜木さんの担当で、私は狭い方の担当。
1幕11場は「ボートハウス」。
マンダレイの小さな入り江を臨む海岸にひっそりと佇む、人気(ひとけ)のないボートハウス。その近くで、“ベン”と名乗る男(tekkanさん)が貝殻を集めていた……。
1幕12場は「クロウリーのオフィス」。
マンダレイの管理人=フランク・クロウリーの仕事場である。そこは、彼らの雇い主たち(マキシムやレベッカやベアトリスやジャイルズ……)が顔を出すような場所ではない。そこへひょっこりと現れたのは……。
その後、広い稽古場に戻って1幕14場を作る。
1幕14場は「化粧部屋」。
13場に続く、仮装舞踏会当日の場面である。舞踏会の主催者である「わたし」がどんな“仮装”に身を包んで現れるのか。それは招待客たちはだけでなく、マキシムにも伏せられていた。
化粧部屋では「わたし」がメイドのクラリスの手を借りて支度の真っ最中。お披露目の時間は刻一刻と迫って……。ここで歌われるのは「夢の主役」である。
今回、改めて台本を読み返してみて、8年前とは違った“読み方”ができる部分が少なからず存在することに気づく。8年前を共に過ごしたキャストたちの“読み方”も、8年前と現在とでは異なるだろう。
そして今回から参加する皆さんの“新鮮な”読み方。それらが合わさって、きっと『レベッカ』は生まれ変わるに違いない。
立ち稽古開始から10日余り。既に1幕のほとんどに手を付けた。そしてつくづく感じるのは……
『レベッカ』は本当に面白い。
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