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2018年3月の記事

『アニー』2018通信

3月30日(金)

 今日も2幕。

 2幕前半の見せ場のひとつに、2場にある孤児たちのナンバー「Fully Dressed(children)」がある。これは、1幕1場にある「Hard Knock Life」と並ぶ“孤児たちの見せ場”でもある。
 このナンバーでは、仲間であるアニーが出演したラジオ番組「バート・ヒーリーのスマイル・アワー」を聞いた孤児たちの感激や興奮が描かれる。

 時間にすれば2分ほどのナンバーなのだが、これを形にするまでにはそれなりに時間がかかる。子供たちに求められていることが多岐に渡っていて、ひとりひとりが同時に別々のことをしていて、その上で歌って踊って演技をする必要があるからである。

 このナンバーの振り付けには去年も結構時間を費やした。再演である今年も(去年ほどではないが)費やしている。
 去年は、春の東京公演を終えた後、夏のツアー公演に向けての稽古で(完成度を高めるために)振り付けのブラッシュ・アップも行った。今年は、東京公演からそのクォリティで臨みたい。

がんばれ振付チーム! がんばれ子供たち!

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『アニー』2018通信

3月28日(水)

 2幕に入る。

 2幕の1場は「NBCラジオスタジオ」。

 NBCはアメリカのテレビの3大ネットワークのひとつである。『アニー』の時代にはまだテレビ放送は始まっていないのでラジオ局であるが。
 本社とスタジオがあるのは“30・ロックフェラー・プラザ・ビル”(通称“RCAビル”、現在は“コムキャスト・ビル”)。あのロックフェラー・センターの中心にそびえ建つ、アール・デコ・スタイルの摩天楼である。

 スタジオでは「あなたの歯にハリウッドの輝きを」のキャッチフレーズでお馴染みの“オキシデント歯磨き”が提供するラジオ番組「バート・ヒーリーのスマイル・アワー」の生本番中。ゲストで招かれたアニーとウォーバックスが、ラジオを通じてアニーの両親についての手がかりを求めている。

 この場面にはナンセンスな人物が2人登場している。

 まず、腹話術の芸人=フレッド・マクラケン。繰り返すが「スマイル・アワー」はラジオ番組である。絵のない“音だけの番組”で、腹話術の芸をどうやって伝えるつもりなのか?
 そして、覆面アナウンサーのジミー・ジョンソン。ラジオで覆面のある/なしが何の意味を持つのだろう?

 『アニー』の台本には、そんなギャグが至る所に仕込まれている。本筋とは関係のない部分ではあるが、そんなところも楽しんでいただけると嬉しい。

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『アニー』2018通信

3月27日(火)

 今日も1幕のおさらい。

 昨日と今日で1幕の未整理、未消化だった部分に手を付けた。アニーや孤児たち、ダンスキッズを含むニュー・キャストの皆さんも、1幕に関しては“どこで”“何を”やることになるのか、これで理解してもらえたはずである。

 ミュージカル『アニー』のブロードウェイ初演は1977年である。なので、現代のミュージカルと比較すれば、物語の展開も音楽の構成もシンプルで分かりやすい。
 しかし、「シンプルだから上演しやすい」かと言うと、そう言うことでもない。作りがシンプルな分、「そこで何が起きているのか」、「それをどうやって観客に手渡すのか」、それがシビアに問われることになる。

 『アニー』は、物語の設定が「1933年のニューヨーク」なので、ファッションや音楽から、つい「古き良き時代のミュージカル」だと思われがちである。が、作られたのはベトナム戦争終結後間もない1977年である。

 老若男女に愛される体裁をまといながらも、込められたメッセージはアイロニーに満ちている。

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『アニー』2018通信

3月26日(月)

 1幕のおさらい。

 『アニー』のリバイバル公演がロンドンのピカデリー劇場で開幕したのは、私たちの(昨年の)『アニー』が東京公演を終えて間もない2017年の6月5日であった。

 この公演は無期限のロング・ランではなく、もともと2018年の1月6日までの期間限定公演としてスタートした。しかし実際には2月18日まで続演されてクローズした。
 このプロダクションでは、イギリスの女優でコメディエンヌのミランダ・ハートがハニガンを演じることが大々的にプロモートされていた。ネットなどで見かけた“開幕を告知するビジュアル”では、主人公のアニーよりもハニガンの方が大きく扱われていたのが何だか面白かった。

 既にクローズしてしまったので観劇することはもう叶わないのだが、オフィシャル・ページはまだ残されていて(それはこちら)、舞台のスチールやムービーを見ることができる。
 ブロードウェイの『アニー』とも、私たちの『アニー』とも結構違う、ちょっとポップな『アニー』になっていて、なかなか興味深い。

 私たちの振付家=うーちゃんがロンドンに立ち寄ってこの公演を観ているので、興味のある方はうーちゃんを捕まえて感想を聞いてみてください。

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『アニー』2018通信

3月25日(日)

 今日までに1幕の大半に手を付けた。稽古の1クール目としては「まずまず順調」だと言えるだろう。

 ニュー・キャストの皆さんも徐々に持ち味を発揮し始めた。今シーズンの『ジキルハイド』でもそうだったように、新しいキャストが稽古場に新鮮な風を吹かせてくれている。
 続投キャストの皆さんの芝居も昨年とは少しずつ違っている。私も芝居の細部をいじってみているし、振付のうーちゃん(広崎さん)もダンスに細かく修正を加えている。

 今年の『アニー』は間違いなく昨年の『アニー』の再演なのだが、稽古中の感触は、他の作品の再演とは少し異なっている。

 他の作品の再演が、マイクロソフトが「Windows 8」まで実施していた“数年おきに大規模なヴァージョン・アップを行う”に近い感触だとすれば、今回の『アニー』は、「Windows 10」以降で実施されるようになった“シーズンごとにアップ・デートがやってくる”のような感触なのである。

 PC(それもウィンドウズ)に明るい人にしか通じないような「たとえ」で甚だ恐縮なのだが……なんか“そんな感じ”がするのである。

 “『アニー』アズ・ア・サービス”である。(今日のブログは読者を限定するなぁ……)

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『アニー』2018通信

3月24日(土)

 今年の『アニー』のドッグ・トレーナーは宮忠臣さんである。

 宮さんは日本を代表するドッグ・トレーナーである。映像の世界で「犬に演技をさせる」第一人者であることに異論は出ないだろう。試しに宮さんのお名前をネットで検索してみていただきたい。数々の名作、話題作が並ぶはずである。

 宮さんは本も何冊か出されている。その中で比較的入手しやすいのは『犬と人をつなぐ ―   ドッグトレーナー宮忠臣』である。ご興味のある方はお手に取ってみていただきたい(こちらからどうぞ)。
 そして、東宝の映画のセクションの公式ページに宮さんのプロフィールを見つけたので、リンクを貼っておきます(それはこちら)。

 今回サンディを演じるのは、宮さんがトレーニングしてくださっている“バブ”である。

 バブはレトリバーの血を引くミックス犬の男の子。日本テレビ主催の『アニー』で初演以来登場していたオールド・イングリッシュ・シープドッグとは、雰囲気も気性も結構違う。より野良犬らしく見える、と言えるかも知れない。

 宮さんがトレーニングするのはバブだけにとどまらない。バブを相手に芝居をすることになるアニーにも「犬との接し方」を教えてくださっている。
 映像の世界では大変なキャリアをお持ちの宮さんであるが、意外なことに劇場での仕事は『アニー』が初めてなのだそうだ。
 
 今年は新しいサンディにもご注目いただきたい。

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『アニー』2018通信

3月23日(金)

 今回は、2つある大きなミュージカル・ナンバーの内、「N.Y.C.」に手を入れている。

 今年の『アニー』で「手直しをしたい」と考えている“幾つかの箇所”のひとつがここなのだが、手を入れているのはナンバーの後半である。後半を「もっと分かり易く、もっと楽しく」したい、と画策している。
 ……詳細は劇場で。

 『アニー』の子供キャストは総勢26名。全員揃うと、さすがに稽古場は賑やかである。アニーと、孤児6名と、ダンスキッズ6名の13名×2チームで26名なのであるが、これで賑やかでない方が不自然であろう。
 子供たち全体の印象は、昨年と比べると少し違っているように思う。どこがどう、と言うのはなかなか難しいのだが、強いて言えば、昨年の方がやや“やんちゃ”であったような気がする。

 しかし、稽古はまだ始まったばかりである。子供たちひとりひとりの個性や特徴が見えてくるのはこれからだろう。

 ひと月後の開幕を楽しみに待ちたい。

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『アニー』2018通信

3月22日(木)

 今日はミュージカル・ナンバーの振り付けを中心にした稽古。

 『アニー』には大きなミュージカル・ナンバーが2つある。
 ひとつは、グレースとウォーバックス邸の使用人たちがアニーを迎えるナンバー「I Think I'm Gonna Like It Here」で、もうひとつは、ウォーバックスがアニーとグレースを連れて映画館ロキシーに向かう「N.Y.C.」である。

 どちらも大勢の登場人物が次々と出入りする複雑な構成のナンバーである。昨年の初演時には、形にするまでにどちらも何日も費やした。なかなか手強いナンバーなのである。
 今年は昨年のヴァージョンを叩き台にしてスタートしているので、続投するキャストやスタッフにはナンバーの全体像が見えている。なので、ナンバーに変更を加える時でも、そのイメージを共有するのにも、それが形になるのにも、それほど時間はかからない。

 それにしても、昨日の東京地方は寒かった。
 稽古場に入ると8時間は建物の中なので、今日の日中の気温がどの程度だったのかはよく分からない。が、帰宅時の東京は寒さも緩んで、出勤時の服ではやや汗ばむくらいであった。

 春は確実に近づいている(こんどこそ……?)

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『アニー』2018通信

3月20日(火)

 演出をする時、私は俳優の演技をできる限り尊重するように心掛けている。演技を生み出すのは俳優の仕事の根幹だと思うからである。
 演じることについては、当然ながら演技経験のない私より、それを職業としている人の方が経験も知識も技術も遥かに豊富である。餅は餅屋に任せるべきである。

 『アニー』の演出でも、そのスタンスは変わらない。
  ……変わらないのだが、『アニー』のキャストの半分は、演じることを職業にしていない子供たちである。稽古もいつものようには行かないのである。

 アニーや孤児たちに「どんな演技をして欲しいか」説明する時は、できるだけ「こういう風にやりなさい」とは言わないように注意している。
 「その場面では、その時何が起きているのだろうか」「自分だったら、そんな時どんな風に感じるだろうか」「そんな風に感じたら、どんな行動や反応をするだろうか」。その答えを自分で探して欲しいからである。

 子供たちを演出するのは無条件に楽しい。が、いつもの稽古以上に私の電池切れも早い。

 ……明日はふた月ぶりのOFF。

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『アニー』2018通信

3月19日(月)

 現在は1幕の前半を立ち稽古中である。

 今年の『アニー』では、演出や振り付け、ステージングなどは、新演出1年目だった昨年を踏襲している。が、昨年をそのまま再現しているわけではなく、細かな部分で変更や調整を加えている。個人的には“今年のテーマ”は「もっと分かり易く、もっと楽しく」である。

 東京地方はこの一週間、汗ばむように温かかったかと思えば急に寒さがぶり返したりして、体の調子もおかしくなりそうな陽気であった。が、昨日、今日の日中などは寒さも緩み、17日には桜の開花宣言も出された。
 稽古場の近くの遊歩道にも桜並木があり、「見ごろはもう間もなく」といった様子になってきた。帰りにその道を通ったら、ライトアップの試験点灯が行われていた。

 春は確実に近づいている(と思ったのに、明日はまた寒いらしいです)

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『ジキル&ハイド』東京公演千穐楽 そして『アニー』2018通信

3月18日(日)

 『ジキルハイド』の東京公演が早くも千穐楽。ご観劇、ご声援くださった皆さん、本当にありがとうございました。

 今回は前回公演から2年という比較的早いタイミングでの再演であったが、主要なキャストには大幅な入れ替わりがあった。
 一方、アンサンブル・キャストのほとんどは続投で、結果として稽古場では“新たに生み出す作業”と“引き継ぎ成熟させる作業”とが「絶妙」と言うにふさわしいバランスで両立した。

 今回も、前回に勝るとも劣らない、収穫の少なくない公演であったと思う。
 東京公演が2週間ちょっとしかなかったことが惜しまれるが、今回の最大の収穫は“『ジキルハイド』にはまだまだ進化の余地がある”ということを我々クリエイティブ・チームに実感させてくれたことではないかと思う。

 この後は名古屋と大阪での公演が控えている。そして遠くないいつか、再びこの作品と向き合える時が来ることを願って止まない。

 さて。

 『アニー』の稽古場へ。

 今年から新しくなる大事なキャストのことを書き忘れていた。物語の中でアニーが出会う野良犬=サンディである(その姿はこちらの「トピックス」をどうぞ)。
 ニュー・キャストなので、一体どんなサンディになるのか、私たちにもまだ予測がつかない。が、去年とは一味違った、キュートなサンディになりそうである。

 どうぞお楽しみに。

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『アニー』2018通信

3月17日(土)

 (昨日よりつづく)1幕1場は「ニューヨーク市立女子孤児院の共同寝室」。ここでは7人の孤児たち=アニー、ダフィ、ジュライ、ペパー、テシー、ケイト、モリーが暮らしている。
 7人はいずれも個性豊か。キャラが被るようなことは間違っても無い。年齢も上は13歳から下は6歳までと幅があり、その7人が常に個性的に(或いは自分勝手に)生活しているのである。

 物語の中ではそうなのであるが、稽古では7人が勝手に振る舞っていたのでは、いつまでたってもストーリーが進まない。
 なので、ひとりひとりの“
個性的な”行動や反応を、ストーリーに即して、毎回同じように(そして自然に見えるように)再現できるようになるまで稽古を重ねる必要がある。
 これはそれなりに時間のかかる(そして忍耐力が試される)作業である。

 加えて、この場面には孤児たちのミュージカル・ナンバーが3つもある(「Maybe」、「Hard Knock Life」、「Hard Knock Life/Reprise」)。稽古の持ち時間は羽が生えたように飛んでいってしまう。

 それでも2年目となる今年は昨年のヴァージョンを叩き台にして稽古を始めることができるので、初回であった昨年よりはまだ“まし”である。

 その余力を使って、昨年以上の『アニー』に仕上げたい。

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『アニー』2018通信

3月16日(金)

 ニュー・キャストのお3方=辺見えみりさん、白羽ゆりさん、伊藤俊彦さんとは、ご一緒するのは今回が初めてである。

 初めての方とご一緒する時は、もちろん私も緊張する。
 「芝居作りに対する価値観」が共有できるか。同じことを「面白い」と感じるのか。そもそも「嫌な奴」ではないのか……。“緊張のもと”となる心配の種は幾らでもある。
 緊張がもっとも高まるのは稽古初日であるが、そういう心配はいつも杞憂に終わる。こういうのを“取り越し苦労”と言うのである。

  昨日も触れたように子供たちは全員がニュー・キャストである。ハニガンさんもニュー・キャストなので、1幕の最初の場面「ニューヨーク市立女子孤児院の共同寝室」の稽古では全員が『アニー』未経験者と言うことになる。
 ただ1人、出入りの洗濯業者=バンドルズを演じる森雄基さんを除いては。(つづく)

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『アニー』2018通信

3月15日(木)

 立ち稽古に入る。

 毎年上演される
『アニー』では、アニー役を含む子供たちは毎年新しい顔触れに入れ代わる。が、大人のキャストは、入れ代わる人もいれば続投する人もいる。

 2018年の『アニー』では、ウォーバックス役の藤本隆宏さん、ルースター役の青柳塁斗さん、リリー役の山本沙也加さんが続投で、グレース役の白羽ゆりさん、ルーズベルト大統領役の伊藤俊彦さん、そしてミス・ハニガンを演じる辺見えみりさんがニュー・キャスト。アンサンブルでは、伊藤広祥さん、大竹尚さん、岩崎ルリ子さん、川井美奈子さんがニュー・キャストである。

 辺見えみりさんは、お母様の辺見マリさんが2006年の『アニー』でミス・ハニガンを演じていらっしゃるので、親子2代にわたってのミス・ハニガンである。
 さすがは『アニー』。30年を超える歴史を持つミュージカルだけのことはある。

 今年はニューヴァージョンになって2年目。去年に負けない素敵な『アニー』にしたい。

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『アニー』2018通信

3月14日(水)

 丸美屋食品ミュージカル『アニー』の稽古が始まった。

 ……と言うことは、昨年の“ニュー・ヴァージョン初演”の稽古から1年が経ったわけである。年月の経つのはなんと早いのだろう。正に光陰矢の如し。
 で、今日のブログを書くにあたって昨年の『アニー』通信を読み返してみたのだが、あの“なかなか大変だった”稽古中に書いたにしてはそこそこ“まとも”だし、読み応えも無くはない。

 初演時のブログがおざなりな文章であった場合、再演のブログはとても書きやすい。
 が、初演の『アニー』通信の様に豆知識やエピソードが頻繁に登場している場合は、再演時にはもう書くべきネタはほとんど残っていないと思っていただいて間違いはない。

 というわけで、まずはこの記事の右側にある「カテゴリー」欄から『アニー』をクリックしていただいて、初演時のブログをお楽しみください。

 『アニー』は4月21日(土)から5月7日(月)まで、東京/初台の新国立劇場 中劇場にて上演です。夏休みには、福岡、大阪、新潟、名古屋にまいります(詳細はこちら)。どうぞお楽しみに。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』初日!

3月9日(金)

 初日。

 今日は18時開演である。なので、万全を期して、昼過ぎから幾つかの場面を舞台にて小返し。その後、初日のお祓い。

 今日の東京地方は終日“降ったり止んだり”の天気であったが、日生劇場には大勢のお客様が詰めかけてくださった。
 定刻を1、2分過ぎてオーケストラのチューニングが始まる。そしてオーヴァーチュアの演奏とともに場内が暗くなると、我らがマエストロ=塩田明弘さんが、楽しむ気満々の客席を煽りに煽る。

 途中、手に汗握るような場面もなかったわけではないが、今日の『ラ・カージュ・オ・フォール』は、私にとっては過去10年で最良の『ラ・カージュ・オ・フォール』であった。
 終演後は緞帳を下ろした舞台で初日の乾杯。キャストも、オーケストラも、スタッフも、主催者も……、その場にいた全員が、この仕事に携わる誇りを感じていたはずである。

 この作品には心に残る台詞や歌詞が次から次へと出てくるが、今日の私に一番刺さったのはラスト・シーン。
 ショーのフィナーレが終わり、ジョルジュがジャン・ミッシェルを温かく送り出した後、白のスーツで現れたアルバンがジョルジュに優しく歌いかける時の歌詞であった。

 「時は過ぎたけれど 今よみがえる 若い日よ」

 鹿賀さんと市村さんの45年に及ぶ足跡。そして(私事だが)『ラ・カージュ・オ・フォール』に初めて触れた33年前の日本初演……。

 終演後の日生劇場は、地球上で一番愛の溢れる場所であった。

 これで『ラ・カージュ・オ・フォール』通信はおしまいである。ご愛読ありがとうございました。次は『アニー』2018通信。来週あたりから始まります。

 『ジキルハイド』の初日、そして今夜、劇場に小峰リリーさんの姿がなかったことが寂しい。『ラ・カージュ・オ・フォール』日本初演の演出家でいらした青井陽治さんの姿も。

 ご冥福をお祈りいたします。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

3月8日(木)

 舞台稽古2日目。今日のメニューは2幕。そしてゲネプロ。

 1幕と比べると、2幕はそもそも場面数が少ない。複雑で難易度の高いダンス・ナンバーもない。なので、舞台稽古も“さくさくっ”と進行。

 大休憩を挟み、ゲネプロ。

 『ラ・カージュ・オ・フォール』では、ゲネプロを観劇している関係者の皆さんには、できるだけ前方の席に詰めて座っていただくことにしている。作品の性質上、“舞台と客席とのやり取り”が何度も出てくるので、最終稽古であるゲネプロで“お客様の存在”をシミュレーションしておきたいからてある。
 その効果もあってか、舞台も客席もヒート・アップ。「初日か!?」と見まがうような盛り上がりの、素敵なゲネプロであった。

 ゲネプロ終了後、何人かの関係者が近寄ってきて、口々に「やっぱり『ラ・カージュ……』はいいですねぇ」と、しみじみと呟いた。皆さん「やっぱり泣いちゃいました」と付け加えて。

 さて。

 明日はいよいよ初日。お天気がやや気掛かりではあるが……。

 「でそれは皆様、しっかりと目を開けて。いよいよ開幕、ラ・カージュ・オ・フォール!!」

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

3月7日(水)

 舞台稽古、1日目。今日のメニューは1幕。

 幕開きからブロックごとに、まず場当たり。必要な確認が済んだ所で、オーケストラと共にそのブロックを流す。
 音響チームの調整や照明の修正、芝居や振りの確認などなどが入った後、必要があれば同じブロックをもう1度やり、必要がなければ次のブロックの場当たりに進む。このような進行で今日のメニューを順調に消化した。

 劇場入りしてから初日を迎えるまでの間は“時間との戦い”で劇場中が殺気立っていることも少なくない。私のブログでも大半の作品でその様子に触れている。だが、今回の『ラ・カージュ・オ・フォール』は、そういう空気とは無縁である。
 4回目であること、劇場が4回とも日生劇場であること、キャストとスタッフの大半が『ラ・カージュ・オ・フォール』経験者であること、現場に以前のノウハウが蓄積されていること……などなど、(昨日も記したが)好条件が重なって時間との戦いに陥らないで済んでいる。

 どんな作品でも、できる限りこのようでありたい。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

3月6日(火)

 朝から転換稽古。

 スムーズな舞台転換は『ラ・カージュ・オ・フォール』の要ともいうべき大切な要素である。なので、上演のたびにしっかりと時間を取って転換稽古が行われる。

 10年前、このヴァージョンの初演時の転換稽古には大変な時間を費やした。なかなか複雑でデリケートな転換が行われているからである。
 が、4度目ともなると、舞台監督をはじめ、大道具を操作するスタッフにも、照明チーム、音響チームにも『ラ・カージュ……』経験者が大勢残っている。なので、今日の転換稽古はとてもスピーディに進行し、転換自体のクォリティも高かった。「1発OK」の場面も少なからずあった。

 転換稽古の後、照明合わせ。

 『ラ・カージュ・オ・フォール』の照明デザイナーは沢田祐二さんである。
 沢田さんは『ラ・カージュ……』日本初演時(1985年/帝劇)のデザイナーであり、鹿賀さんや市村さんの劇団時代の仲間であり、舞台とテレビ界の照明家の集まりである公益社団法人“日本照明家協会”の会長であり、私の大学の大大大先輩でもある。
 今回は再々々演でもあり、照明合わせも手際よく進んだ。が、照明デザインに気になるところがあれば、その場ですかさず修正が入れられる。
 舞台上のテクニカルな部分も、芝居の中身と同様に上演のたびに進化しているのである。

 夜は大きなダンス・ナンバーの幾つかを舞台で場当たり。
 舞台稽古は明日からであるが、明日以降を能率よく進行するために、これも不可欠な作業。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

3月5日(月)

 日生劇場へ。

 今日は終日スタッフの作業。

 舞台では仕込みの続き。楽屋周りでは衣裳やヘアメイクのチームが舞台稽古に向けての準備。オーケストラ・ピットには楽器が並べられ、音響チームはサウンドの調整。
 仕込みが一段落したところで舞台を照明チームに明け渡し、残りの時間はフォーカス合わせ。

 明日はテクニカル・リハーサルと照明合わせ。その後、大きなミュージカル・ナンバーの幾つかを舞台で当たって、明後日からの舞台稽古に備える。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信

3月4日(日)

 『ジキルハイド』の合間に日生劇場へ。

 日生劇場で初めて演出させていただいたのは『サウンド・オブ・ミュージック』である。私にとっては初めての本格的なミュージカルの演出で、ミュージカルの演出家としての人生はその時から始まった。
 『サウンド・オブ・ミュージック』1998年の3~4月公演だったので、今回の『ラ・カージュ・オ・フォール』は「鹿賀さん&市村さんのコンビ誕生10周年」であるとともに、私の「日生劇場演出デビュー20周年」でもある。

 それはともかく、今日、明日はスタッフのみでの作業。今日は搬入と仕込みである。

 日生劇場では、大道具は奈落から大迫り(おおぜり=舞台面に切られた昇降装置を「迫り(せり)」と言うが、大迫りは文字通り「大きな迫り」のこと)を使って舞台面まで上げられる。
 見慣れた大道具が次々と迫り上がってきて、舞台面で広げられ、ある物は組み立てられ、またある物は昇降バトンに吊り込まれて行く。

 10年前、このヴァージョンの『ラ・カージュ・オ・フォール』をここで初演した時には、まさかこんなに繰り返し上演されることになるとは(10年の間に4回!)思ってもみなかった。

 何よりも嬉しい誤算である。

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『ラ・カージュ・オ・フォール』通信 そして『ジキル&ハイド』初日

3月3日(土)

 『ラ・カージュ・オ・フォール』の稽古場へ。オケ付き通し稽古。

 自然体でありながらメリハリがあり、適度に力は抜けているのにパワフル……と言う、なんだか“演劇の理想形”を見せられたような気がするオケ付き通しであった。
 『ラ・カージュ・オ・フォール』はこれで稽古場を撤収。 明日はいよいよ小屋入りである。

 さて。

 東京国際フォーラム ホールCへ。『ジキルハイド』初日。

 まず、ご来場くださった皆さん、本当にありがとうございました。
 公演はいかにも初日らしい緊張感の漂うものだった(舞台転換などにもミスが幾つかあったし)。本番中、何度も胃に穴が開くかと思ったが、何とかラスト・シーンまで辿り着くことができた。
 カーテン・コールではスペシャル・ゲストのフランク・ワイルドホーンさんが舞台に登場。キャストやスタッフ、そしてオーケストラの労をねぎらってくださった。

 舞台袖でカーテン・コールの出番を待つ間にワイルドホーンさんと話をした。

 フランク「始まりは2001年だよ。あれから17年だよ。あのころは僕たちも若かったよねえ。」
 山田「僕は30代でした。」
 フランク「僕は40代前半だった。」

 舞台上でワイルドホーンさんはこうもおっしゃった。「あと17年続きますように。」

 これで2018年の『ジキルハイド』通信はおしまいである。ご愛読ありがとうございました。引き続き『ラ・カージュ・オ・フォール』通信をよろしくお願いいたします。

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『ジキル&ハイド』通信

3月2日(金)

 午前中はテクリハの残り。午後から舞台稽古の続き。舞台稽古を終えた後、ゲネプロ。無事にゲネプロまで辿り着いた。

 今回の再演は「2016年上演版」に基づいているが、様々な部分で変更や修正が施されている。このストーリーをより効果的に、よりエキサイティングに、より説得力を持って、皆さんに楽しんでいただきたいからである。
 そして、今回から参加してくださるニュー・キャスト。ニュー・キャストの皆さんと、新しいルーシーやエマ、ダンヴァース卿やアターソンを作ってきた。今までの上演をご存知の方にはずいぶんと異なる印象に映るかも知れないが、ご観劇の後に、ご覧くださった皆さんで「喧々諤々(けんけんがくがく)」とやっていただければ嬉しい。

 さて。

 フランク・ワイルドホーンさんが、ゲネプロに顔を出してくださった。今日は挨拶程度しか言葉を交わすことができなかったのだが……。

 明日は初日。スペシャル・ゲストはフランク・ワイルドホーンさんである。

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『ジキル&ハイド』通信

3月1日(木)

 出勤時は荒天ではなかった。ひと安心。

 で、午前中はテクニカル・リハーサル。午後から舞台稽古、昨日の続き。

 舞台稽古のメニューは1幕5場~2幕2場。ここには「劇場入りしてからでないと確認や調整が困難な場面」が連続する。その確認や調整に、予想以上に時間を費やす。
 過去の舞台稽古でも「そうでなかった」試しがない。『ジキルハイド』は、やはり“大変な”ミュージカルである。

 明日は舞台稽古3日目。無事にゲネプロまで辿り着けるか?

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『ジキル&ハイド』通信

2月28日(水)

 朝から道具調べ/照明合わせ。並行してオーケストラと音響チームのサウンドチェック。

 タイム・テーブル的には、昨日の夜の時点で作業に結構な遅れが出ていた。今日以降、それがどのように影響してくるか、内心ではかなり悲観的な予測もしていたのだが、照明デザイナーの高見さんがそれを丸々取り返してくださった。

 で、予定通りの時刻より舞台稽古に突入。幕開きから1幕4場まで、しっかりと稽古を進めることができた。

 明日は今日の続き。出勤時の天候が気がかり。

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