沢島監督のこと
映画監督の沢島忠さんが亡くなった。
沢島さんが映画監督として活躍されたのは昭和30~40年代にかけてである。美空ひばりさんや萬屋錦之介さんの主演作をはじめ、約20年間で50本近い監督作品を生み出された。
映画界を離れてからは舞台に活躍の場を移された。沢島さんの舞台での脚本・演出作品の1本に『赤ひげ診療譚』がある。
山本周五郎の同名小説を舞台化した『赤ひげ診療譚』は、1978年に東京宝塚劇場で初演された。タイトル・ロールの“赤ひげ”こと、小石川養生所の医師=新出去定(にいで・きょじょう)を演じたのは森繁久彌さんであった。
1983年に名古屋の御園座で再演され、更には1991年に帝劇で、そして1994年に再び東京宝塚劇場で上演されている。私は91年の再演に演出部の1人として参加し、94年の公演では沢島さんの演出助手を務めた。
沢島さんとのお仕事は『赤ひげ診療譚』1作品のみであった。が、演出助手を務めた94年の際には、常に沢島さんの横について、ダメ取り(演出家のダメ出しを書き留めること)などをさせていただいた。
沢島さんは時おり私の耳元で「監督の心得」を囁かれた。沢島さんに代わって稽古を始める「よーい!」の声をかけさせてくださったり、その声にダメを出してくださったりもした。その時に教わり今でも守っている教えがいくつもある。
『赤ひげ診療譚』以降、お仕事でご一緒することは無かったが、ご自身の脚本・演出された舞台に何度もお招きくださった。観劇後はいつも美味しい物を食べに出かけた。
食べるお店、食べる物や食べ方にも一家言お持ちでいらした。ダンディで、洒脱で、とても優しく接してしてくださった。
ご冥福をお祈りいたします。
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