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2016年10月の記事

『貴婦人の訪問』通信

10月30日(日)

 午前中は音響チームのサウンド・デザイン。お昼から道具調べ・照明合わせ、昨日の続き。そして夜はオーケストラの皆さんと音響チームのサウンド・チェック。並行して道具調べ・照明合わせも。

 劇場入りしてから初日までの間、スタッフとキャストにはお弁当が支給される。劇場外に食べに出る時間が無いからであるが、近年はお弁当の種類も豊富になり、私が演出を始めた頃に比べると味も格段に良くなった。
 しかし、お弁当のクォリティが上がったことで発生する新たな問題もある。お弁当生活は、長い時には一週間に及ぶ。深夜作業があれば夜食も用意される。お弁当は働く若者向けに高カロリーである場合が多く、一日中座りっぱなしの私は日々肥えて行く。

 と言うことで、今日からはケータリングのお菓子に手を出す回数を減らす。そして用事が無くても、とにかく歩き回る。

 現状維持で何とか初日を迎えたい。

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『貴婦人の訪問』通信

10月29日(土)

 シアター1010へ。

 近年は、この劇場で初日を開け、ここからツアーへと出て行く公演が少なくない。現在各地をツアー中の『雪まろげ』もそうであるし、現在シアタークリエで上演中の『一人二役』も、昨年の『貴婦人の訪問』もそうであった。

 今日、明日は終日スタッフ・ワークである。明後日からの舞台稽古に備えて、大勢のスタッフが至る所で動いている。
 作品作りの根幹である“道具調べ・照明合わせ”は14時からスタート。いつもの様に、幕開きから順番にセットを飾り、動かし、そして照明のキューをひとつずつプレビューして行く。

 複数の会場で上演される作品では、舞台美術や照明の仕込み、俳優の位置や動線などは、極力共通で済むように計画を立てることになる。しかし、全ての劇場条件を共通の仕様で乗り切ろうとすると“どの劇場でも中途半端”と言うことにもなりかねない。その兼ね合いが難しい。
 『貴婦人の訪問』は今年は5か所の会場を回る。なので小道具や大道具ワゴンの飾り位置は、会場条件に合わせて幾つかのパターンを作ることになる。そうすることで、それぞれの会場に相応しい見え方を担保しているのである。

 ただ、問題がひとつあって、「初演では、どの会場で、何の位置を、どのように変更したのか」、その記憶がみんな曖昧なのである。残されている“位置データ”の信ぴょう性もイマイチ疑わしい。

 初演ではみんな「幕を開けること」で精いっぱいだったのだなあ……という話である。

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『貴婦人の訪問』通信

10月28日(金)

 稽古場最終日。2回目のオケ付き通し稽古である。

 今日は特に1幕が、今までになく面白く感じた。
 さびれた地方都市のしがない雑貨屋店主=アルフレッドが運命に弄ばれて行くさまが、時にユーモラスに、特に残酷に、説得力を持って伝わって来たからである。

 そして、通し稽古終了後、稽古場最後の駄目出し。
 振り返ってみれば、充実した、手応えのある稽古場であった。カンパニー一同の“芝居と向き合う距離感”の様なものが絶妙だった。

 駄目出しを終えた後、稽古場の撤収をスタッフに任せてシアター1010(せんじゅ)へ。

 1010では朝から仕込み作業がスタートしている。
 私が到着した頃には基本舞台は建ち上がり、その他の大道具の仕込みや、照明のフォーカシング作業が行われていた。

 明日と明後日は終日スタッフ・ワーク。舞台稽古は明々後日から。

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『貴婦人の訪問』通信

10月27日(木)

 オケ合わせ2日目。

 昨日の続きで、2幕4場の「悪が勝つだろう」から、「カーテン・コール」までが今日のメニュー。昨日同様、順調にメニューを消化し、昨日同様に予測された時刻より早くに終了。大休憩を取った後、いよいよオケ付き通し稽古。

 ここでは詳細には触れないが、私としてはとても満足度の高い通し稽古であったことはご報告しておきたい。今回の稽古場では、今のところ最良の出来であったと思う。

 さて。

 明日は稽古場最終日。シアター1010では仕込み作業が始まる。

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『貴婦人の訪問』通信

10月26日(水)

 オケ合わせ1日目。

 『貴婦人の訪問』のオーケストラは10人編成。使用するスコアは、音楽のマイケル・リードさんが日本版のために直々にアレンジしてくださったものである。
 そして、我々の『貴婦人の訪問』ではオーケストラ・ピットを使用しない。オーケストラの皆さんは舞台の袖(そで)で演奏することになる。なので、客席と舞台の間に遮るものは何もない。ギュレンの街で起こっていることを臨場感を持ってご覧いただけると思う。

 で、オケ合わせ。今日は幕開きのナンバー「栄光のファンファーレ」から2幕3場のクレアのナンバー「世界は私のもの」までがメニュー。各ナンバーを2回ずつ(時には1回、或いは2・5回)合わせて音楽を仕上げて行く。音楽監督は八幡茂さん、音響デザイナーは山本浩一さんである。

 予測では“終了は20時を過ぎる見込み”であったが、実際には19時前に終了。とてもとても順調なオケ合わせ1日目であった。

 オケ合わせ終了後、『クリエ・ミュージカル・コレクションⅢ』の舞台美術打ち合わせ。美術デザイナーは松井るみさんである。

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『貴婦人の訪問』通信

10月25日(火)

 2回目の通し稽古。

 ピアノでの最後の稽古である。稽古ピアニストの國井雅美さん、宇賀神典子さん、今日までありがとうございました。ひとまずお疲れ様でした。
 それにしても、昨日、今日のアルフレッドはアグレッシブである。そんなアルフレッドに引っ張られるようにして周囲の熱量も上がる。結果、大変ドラマティックな通し稽古になっている。

 通し稽古の後はもちろん駄目出し。この期に及んでも細部のヴァージョン・アップは続く。

 明日からはオーケストラの皆さんとの合わせである。音楽がエモーショナルな分、我々はより冷静でなければならない、と思う。

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『貴婦人の訪問』通信

10月24日(月)

 1回目の通し稽古。

 ほぼメンバーの変わらない(しかも1年という短期間での)再演なので、1回目にしてとても高水準の安定感のある仕上がりであったと思う。通しをご覧になった翻訳・訳詞の竜真知子さんからも「とても見易くなっている」との感想をいただいた。

 通し稽古終了後、全体で駄目出し。

 昨日までの稽古で大方の調整は済んでいるので、“駄目”の量もそう多くはない。まったく無いワケではないが。そして駄目出しの後、若干の抜き稽古。明日の“2回目の通し稽古”に備える。

 別稽古場で行われているオーケストラ・リハーサルは明日で終了。と言うことは、明日の稽古後にはオーケストラが引っ越して来る。と言うことなので、稽古終了後、オーケストラを迎え入れるために稽古場内の配置換え。

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平幹二朗さんのこと

 平幹二朗さんが亡くなった。

 つい最近、舞台『クレシダ』を観劇した人から「平さんはすごい」と聞かされたばかりであったし、現在放送中のドラマでも元気な姿を見せていらしたから、あまりにも突然で、どう受け止めて良いのかわからない。

 平さんと言えば『近松心中物語』や『テンペスト』など、蜷川幸雄さん演出の舞台での圧倒的な姿がまず目に浮かぶ。私は演出助手時代に『お游(ゆう)さま』『孤狸孤狸(こりこり)ばなし』『拝領妻始末』『松のや露八(ろはち)』『殉愛』でご一緒した。
 それらは全て旧・東京宝塚劇場での公演であった。平さんは、森繁久彌さんをはじめ、山田五十鈴さん、三津田健さん、植木等さんなど、演劇史に残る今は亡き名優たちと共演されていた。

 演出家としては『鹿鳴館』(2002年初演/ル・テアトル銀座)でご一緒した。
 平さんは、実際の“元夫婦”でいらした佐久間良子さんと夫婦役での共演を果たされ、お2人の実子である平岳大さんが俳優デビューを飾られた。

 平さんが堂々たるスケールで役を作り演じる俳優でいらしたことは論を俟たない。が、『孤狸孤狸ばなし』や『松のや露八』での、軽妙な三枚目役を実に楽しそうに演じていらした姿も忘れ難い。

 ご冥福をお祈りいたします。

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『貴婦人の訪問』通信

10月23日(日)

 2幕を台本順に、全場面おさらい。

 昨日も記したが、通し稽古目前となった現在は“場面の繋がり”に比重を置いている。
 それは、現代のミュージカルが“いくつかの場面を積み重ねて”初めて意味を成すような作りになっていることの裏返しでもあるのだが、今日は2幕を大きく“前半”と“後半”に分け、極力ドラマを途切れさせないことに留意して稽古を進める。

 本編の稽古終了後、カーテン・コールの段取りをつける。ここは、いつもの様に演出助手の末永さんにお任せ。

 さて。

 明日より別稽古場でオーケストラのリハーサルが始まる。こちらはピアノで、1回目の通し稽古である。

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『貴婦人の訪問』通信

10月22日(土)

 午前中はアンサンブルの皆さんの衣裳とヘアの合わせ。

 新作の衣裳合わせでは、「これだ!」と思えるアイテムが見つかるまで、全員が着たり脱いだりを延々と繰り返すことになる。なので、場合によっては1日がかりの大作業である。
 が、再演では、アイテムは既に決まっているので、「寸法を確認するための試着」程度で済む場合が多い。特に今回のように大きな変更が無い場合はそうなのであるが、それはそれで「再演までの間の生活態度」をチェックされている……みたいでもある。

 果たして、何人のキャストが“お直し”を必要としたであろうか?

 午後は2幕3場~ラストまでをおさらい。

 『貴婦人の訪問』の上演時間は、1幕が約1時間15分、2幕がおおよそ1時間弱である。
 2幕はただでさえコンパクトである上に、中盤以降は物語の性質上、何度も繰り返し稽古するようなことにはなり難い。なので、今日の稽古は結構早く終了。でも、たまにはこう言う日があってもいいだろう。

 明日も2幕。出来るだけ繋げて行きたいので、今日以上に早く終ってしまうかも?

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『貴婦人の訪問』通信

10月20日(木)

 1幕を台本順に、全場面おさらい。

 今日もちょっとした“新しいやり方”を色々な場面で試している。
 そのちょっとしたことが積み重なって、全体としては「初演とは異なる印象の作品」に見えたら面白い、と思うのだが。物語はどこも変わっていないのに、である。

 明日は稽古場最後のOFF。稽古場で過ごすのもあと7日である。

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『貴婦人の訪問』通信

10月19日(水)

 1幕のおさらい。クレアの登場する場面を中心に。

 今回の再演では“演出を大きく変える”と言う様なことはしていない。
 が、このブログでも既に何度か触れた様に、細かい修正(配役の変更だったり、新しいステージングだったり、異なる芝居の運び方だったり……)は数知れずやっている。

 今日のおさらいでもまた新しいことを試してみた。お客様のほとんどは気づかないであろうその試みを実現するために、演出部の皆さんとキャストの皆さんが率先して動いてくださった。
 演出家としては、それは本当にありがたい。そして、『貴婦人の訪問』の稽古場がそんな稽古場であることを誇らしく思う。

 明日も1幕。明日は全場面やるつもり。

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『貴婦人の訪問』通信

10月18日(火)

 立ち稽古。昨日と同様に、まずミュージカル・ナンバーをいくつか整理。その後、2幕1場~2場、2幕4場~6場をおさらい。

 話は全く変わるが、アメリカの大統領選に関する報道を眺めていて、なるほど、と思う記事に出会った。
 その記事では集団心理という糸口から現在大統領選で起こっていることを紐解いているのだが、記事の中で示されていることは“ギュレンの街で起こったこと”をも想起させる。なるほど、と思ったのは、記事を読んでそう感じたからである。

 ご興味のある方のために記事へのリンクを張っておく。が、ネタバレにもなりかねないので、それを避けたい方はご観劇後にお読みいただくことをお勧めする。(その記事はこちら)。

 明日は1幕に戻っておさらい。

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『貴婦人の訪問』通信

10月17日(月)

 立ち稽古。ミュージカル・ナンバーをいくつか整理した後、2幕3場、7場、8場を稽古。

 2幕3場は再び「ホテルのスイート・ルーム」である。
 クレアが逗留しているあの部屋に、今度は校長と市長が現われる。2人はクレアに“建設的な”提案をするためにやって来たのだが、その提案を聞いたクレアは……。
 この場面にはクレアのナンバー「世界は私のもの」がある。その中で、校長と市長は“驚くべき事実”を知ることになる。

 2幕7場は3度目の「コンラーツヴァイラーの森」。
 ここまでに色々な展開があって、ああなってこうなって、で、アルフレッドはクレアに会うために森を訪れる。そして2人は「愛は永遠に」を歌う。

 そして、ラスト・シーンである2幕8場。「ホテル“黄金の天使”の中」である。
 1幕でクレアの歓迎式典が行われた場所であるが、ここでは“別の”集会が行われている。お世辞にも美しいとは言えなかった大広間もリノベーションを終えて見違えるようになっている。何の集会が行われているのか、と言うと……。

 これで全場面にひと通り手を着けた。まずは「ホッとひと息」である。
 昨年の初演時の稽古は試行錯誤に次ぐ試行錯誤で、作っては壊し、また別のものを作ってまた壊し……と言った様相であった。
 今回は、叩き台として初演の上演成果があるので、変更やヴァージョン・アップはあるにせよ、稽古はスムーズである。

 まだ全体を繋げてみた訳ではないので判断するには時期尚早かもしれないが、色々な個所に施された細かい修正や調整が確実に実を結びつつある、と感じる。早く通してみたくてウズウズしている。

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『貴婦人の訪問』通信

10月16日(日)

 立ち稽古。

 まず、M20「モラルの殿堂」をヴァージョン・アップ。続いて、M20を含む2幕4場を稽古。更に2幕5場、そして6場を稽古。

 2幕の4場、5場、6場は、ともに「イルの雑貨店」である。
 原作者のデュレンマットは『老貴婦人の訪問』を“悲劇的な喜劇”と呼んだが、物語もこの辺り(2幕の中盤)まで来ると、今まで喜劇的に見えていたギュレンの街の出来事も、もはや笑い話として片づけるわけには行かなくなるだろう。

 それはともかく、今日の稽古場は、前半と後半とで随分とその雰囲気が違っていた。
 前半は大人数で、賑やかな音楽と華やかなステージング満載の、とてもミュージカルらしい稽古場であったが、後半は一転、少人数で緊張感の途切れることのない、シリアスな人間ドラマのような稽古場であった。

 その両面が『貴婦人の訪問』の中では同居している。そこも『貴婦人の訪問』の面白さのひとつなのだと思う。

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『貴婦人の訪問』通信 そして『クリ・コレⅢ』からのお知らせ

10月14日(金)

 稽古前にプログラム向けの対談。

 先日の男性編に続いて今日は女性編。メンバーは涼風真世さん、瀬奈じゅんさん、それに私である。
 男性編に負けず劣らず、内容の濃い充実した対談であった。その中で、今年は涼風さんのデビュー35周年で、瀬奈さんの25周年だということが明らかになった。涼風さん&瀬奈さん、おめでとうございます。

 稽古は1幕1場~7場をおさらい。
 まだ場面ごとに止めながら、だが、前回の稽古と比較すると、スピード、メリハリ、共に大進歩である。再演の意義は大いにある、と思う。

 ところで、来年の2~3月にシアタークリエで上演されるクリエ・ミュージカル・コレクションⅢでは、キャストの皆さんに歌って欲しいミュージカル・ナンバーのリクエストを募集中である。
 『貴婦人の訪問』からは山口さん、涼風さん、瀬奈さん、今さん、そして木内健人さんがご出演の『クリエ・ミュージカル・コレクションⅢ』。過去の『クリ・コレ』(ⅠとⅡですね)で取り上げられた楽曲でも構いませんので、皆さんのイメージやアイデアをどしどしお寄せください。

 応募フォームへはこちらからどうぞ。締め切りは10月25日(火)。お忘れなく!

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『貴婦人の訪問』通信

10月13日(木)

 立ち稽古。1幕8場「ホテルのスイート・ルーム」、12場「ホテル前の広場」、13場「コンラーツヴァイラーの森」を思い出し。

 8場のホテルは、クレアが滞在している、かつてはこの街一番の格式を誇ったであろうホテルである。今では見る影もないが、そのホテルのスイート・ルームをクレアはオフィス代わりに使用している。彼女は世界を股に掛けるビジネス・ウーマンでもあるのだ。
 その部屋をアルフレッドが訪れる。クレアの“不当な”提案に抗議するためであった。しかし、クレアは顔色ひとつ変えることなく……。

 12場は、そのホテルの前の広場である。ギュレンの街で“ある事件”が勃発し、警察や自警団が出動する騒ぎとなる。そして、響き渡る2発の銃声……。

 “コンラーツヴァイラーの森”は、物語の中で都合3回登場する。1幕の2場と、今日のメニューである13場、そして2幕の7場である。
 この森はアルフレッドとクレアにとっては特別な場所である。30年以上も昔、幸せだった日々を2人きりで過ごした場所だからである。この場所のことを知る者は、2人以外には誰もいない……。

 今日はデザイナーの皆さんが続々と顔を見せてくださった。美術の伊藤雅子さん、照明の成瀬一裕さん、衣裳の前田文子さんである。

 再演である今回は、初演時の様に「デザイナーの皆さんと頻繁にやり取りをする」と言うことは無い。デザインは初演の時点で既になされているからである。
 それでも、再演に当たって細々としたことを確認する必要は出てくる。それがたまたま今日に集中した。でも、たまたまだったとしても、皆さんと顔を合わせるのは嬉しい。2人より3人はなお嬉しい。

 子供みたいなのである。

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『貴婦人の訪問』通信

10月12日(水)

 立ち稽古。2幕1場と2場の思い出し。

 2幕1場は「イルの雑貨店」。
 深夜、或いは早朝かも知れない。何れにせよ、人々が寝静まっている様な時刻である。そんな時刻にアルフレッドは家を飛び出そうとしている。マチルデはアルフレッドを必死に引き止めるのだが……。

 続く2場は「ギュレン駅」。
 アルフレッドが向かった先は鉄道の駅であった。駅では意外な人々が彼を待ち受けていた。こんな時刻に……?

 この場面にあるミュージカル・ナンバーは「元気で アルフレッド」である。このちょっと不思議なナンバーでは、アルフレッドの身に起こったことがアルフレッドの目を通して描かれる(なのでデフォルメされている)。
 アルフレッドの周囲では何か異常なことが進行している。でも異常なのは周囲なのか、アルフレッド自身なのか……?

 1場、2場を終えた後、M18「世界は私のもの」の、アンサンブルさんのパートを思い出し&ヴァージョン・アップ。

 今回の『貴婦人の訪問』は至る所でヴァージョン・アップしている。ヴァージョン・アップの嵐である。

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『貴婦人の訪問』通信

10月11日(火)

 立ち稽古。まずM1「栄光のファンファーレ」をおさらい。続いて1幕9場、10場、11場を思い出し。

 1幕9場は「ギュレンの警察署」。主人公=アルフレッド・イル(山口祐一郎さん)は幼馴染の警察署長=ゲルハルト・ラング(今拓哉さん)を訪ねる。
 ここではミュージカル・ナンバー「永遠の友達」が歌われる。いつまでも変わることのない“美しい友情”を歌ったナンバーである。が……。
 ここにはもう1曲「奴を追え」がある。「奴を追え」は、間に芝居を挟みつつ、11場の終わりまで続く。

 「奴を追え」で9場とつながる10場は「市庁舎」。アルフレッドはここでは市長=マティアス・リヒター(今井清隆さん)と対峙する。そして11場は「教会の礼拝堂」。ここを司るのは牧師のヨハネス・ライテンベルグ(中山昇さん)である。
 世界的大富豪=クレア・ツァハナシアンが街主催の歓迎式典で行った“ある提案”。それがアルフレッドを苦しめることになる。アルフレッドが感じた大いなる不安。それは彼の思い過ごしなのか。それとも……?

 稽古は更に、1幕6場“テレホン・シークェンス”とM3「彼女は型破り」のおさらい。そして稽古後、プログラム向けの対談。
 対談のメンバーは山口さん、今井さん、石川さん、今さん、中山さん、それに私である。稽古と同様に和気あいあいと進んだ対談であった。と同時に大変内容の濃い対談でもあった。もしプログラムを読んで「簡潔で明瞭な良い対談だ」と感じたとしたら、それはライターさんの功績が大である。

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『貴婦人の訪問』通信

10月10日(月)

 立ち稽古。

 まず一昨日の続きで、M7「贅沢しても」のヴァージョン・アップ。
 このナンバーの中ほどに「ティファニー!」「プラダ!」「エルメス!」と言う台詞があるのだが、ティファニー(風)の商品の中で“舞台映え”しそうな物と言ったらどんな物があるのか、試しにAmazoneで「ティファニー」を検索してみた。
 想像以上に多くの商品がヒットして、それがまず驚きだったのだが、一番驚いたのは“価格の高い順番”に並び替えた時の“最も高価な商品”の価格である。誰がAmazonでそんな価格の商品を買うのだろうか?(配送料無料)

 続いて、1幕5場と7場のおさらい。更にその後、M9「正義」とM11「奴を追え」の、アンサンブルさんのパートの思い出し。

 それにしても、“思い出す”という作業は本当に面白い。
 昨日のことの様にはっきりと思い出せることもあれば、思い出すも何も、何ひとつ覚えていないこともある。ある人たちはよく覚えているのに他の人たちはそうでなかったり、記憶が食い違ったりすることもある。とても楽に思い出せる時も、脳みそが脂汗をかくような感じの時もある。

 思い出す、と言うのは実にスリリングな作業である。これも再演の醍醐味のひとつだと思う。

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『貴婦人の訪問』通信

10月8日(土)

 ミュージカル・ナンバーのステージング。

 1幕7場「イルの雑貨店」にあるM7「贅沢しても」を、思い出しつつヴァージョン・アップ。
 このナンバーと2幕にある「モラルの殿堂」の2曲は、いかにも“賑やかで楽しいミュージカル・ショー”風のナンバーである。が、この2曲が愛憎渦巻く『貴婦人の訪問』のストーリーの中に置かれると、その明るさや楽しさが別の意味を見せ始める。
 そここそが『貴婦人の訪問』のユニークなところである。そして、そのユニークさが『貴婦人の訪問』を特別なミュージカルにしている。ちょっと似たような所がミュージカル版の『イーストウィックの魔女たち』にもあるかも知れない。

 しかし、そう言うタイプの作品を成立させるのは殊の外難しい。作り手や演じ手にとっては何とも手強い作品だと思う。

 だからこそ遣り甲斐があるのだが。

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『貴婦人の訪問』通信

10月7日(金)

 立ち稽古。

 まず1幕6場「それぞれの場所(通称“テレホン・シークェンス”)」の思い出し。
 テレホン・シークェンスに登場するのは市長(今井清隆さん)、牧師(中山昇さん)、警察署長(今拓哉さん)、そして校長(石川禅さん)の4人である。キャストの4人は全員初演からの続投なので、思い出しもサクサクと手際よく進む。が、「受話器をどちらの手で持っていたか」の話になった時、ささやかな波紋が起こった。

 受話器を右手で持つか左手で持つかは、ワイヤレス・マイクの装着位置と密接に関わってくる。音響さんには「ワイヤレス・マイクを左右どちら側に装着したか」の記録が残されているのだが、その記録とご自身の記憶とが一致しなかった方が1名。石川禅さんである。
 初演時に何十回と繰り返した手順でもそう言うことはあるのである。結果的には禅さんの記憶が間違っていらしたのだが……。

 人間の記憶なんてアテにならないなあ(自戒を込めて)。

 続いて1幕1場をおさらい。更に1幕3場「ホテル“黄金の天使”の中」を思い出してM3と合体。更にその後1幕4場をさらって、最後に1幕5場「イルの雑貨店」を稽古。

 稽古の進行具合としては、これまでのところは至って順調である。これくらいのペースで1巡目を最後まで進めることができたら、いいなあ。

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『貴婦人の訪問』通信

10月4日(火)

 立ち稽古。

 まず1幕1場「ギュレン駅」の芝居部分を整理。その後、昨日のメニュー、M1「栄光のファンファーレ」とドッキング。
 このミュージカルの原作となった戯曲『老貴婦人の訪問』を書いたフリードリヒ・デュレンマットは、劇作家としての顔の他にミステリー作家としての顔も持っている。ミュージカル版『貴婦人の訪問』の脚本もミステリー仕立てで書かれているので、その語り口を徹底するべく細部に修正を施す。(ミュージカル版の脚本はデュレンマットの作ではないが)

 続いて1幕2場「コンラーツヴァイラーの森」、1幕4場「ホテル“黄金の天使”の中」を思い出し。更にその後、M4「とんでもない」とM3「彼女は型破り」を思い出し。
 「初演でやり残した」と感じる箇所はどの場面にもある。そう感じるのは私だけでなく、振付の桜木さんも、キャストの皆さんもそうだろう。なので(昨日も記したが)“思い出し”のつもりの稽古も、やっている内に“思い出し”では済まなくなる。

 なので、稽古にはそれなりに時間が掛かっている。その分、とても創造的な稽古場であるが。

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『貴婦人の訪問』通信

10月3日(月)

 顔寄せ。

 いつもの様にキャスト、スタッフ、公演関係者が稽古場に集合。司会は服部プロデューサーである。
 まず、関係者を代表して東宝の池田取締役がご挨拶。続いてスタッフ、キャスト、劇場関係者、各地の主催者の皆さんなどが紹介され、最後に私も一言述べさせていただく。

 顔寄せ終了後、歌入り読み合わせ。

 キャストひとりひとりの余分な力が抜け、ナチュラルな部分はよりナチュラルに、激しい場面は更に激しくなった様に感じられた。前回から1年余り、と言う時間がそうさせたのか?

 読み合せ終了後、さっそく立ち稽古に入る。メニューはM1「栄光のファンファーレ」の思い出し。“思い出し”と記したが、振付の桜木涼介さんは要所要所で結構新しく作り直している。どうやら創作意欲がムズムズするらしい。

 立ち稽古1日目にして結構なハイ・ペースである。まあ、このくらいのペースでやっておかないと、後々苦労するからね。

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『アニー』!

10月2日(日)

 30年以上に渡って日本で毎年上演されてきたブロードウェイ・ミュージカル『アニー』。その演出を新たに担当させていただくことになった。

 上演は来年(2017年)であるが、その2017年版の“アニー”と“孤児たち”を演じる子供たちを探すオーディションが先週末と昨日、今日で行われ、その結果が早速発表された。それに合わせて、私たちクリエイティブ・チームの名前も公表された。
 『アニー』を目指す子供たちの姿は毎年テレビで紹介されているので、ご存知の方も少なくないだろう。今年もオーディション初日から沢山のカメラが入っていた。稽古の様子なども含めて、いずれオンエアされることになるだろう。

 衣裳も舞台美術も振り付けも……、何もかもが一新される新生『アニー』

 どうぞよろしくお願いいたします。

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『貴婦人の訪問』通信

10月1日(土)

 本日も歌稽古。

 ……だが、所用のため私は欠席。

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『貴婦人の訪問』通信

9月30日(金)

 本日も歌稽古。

 昨日のブログで「マチルデ以外の全キャストが続投」と言う風に記したが、それは正確ではない。正しくは「マチルデと“レーナ”以外の全キャストが続投」である。

 レーナは『貴婦人の訪問』に登場する“10歳くらいの少女”(台本より)の名前である。素性はよく分からないし、ドラマに大きくかかわるわけでもないのだが、時々現れて、ちょっと不思議な印象を残す。
 レーナ役は、初演では青木璃乃さんと日浦美奈子さんがWキャストで演じていた。2人ともとても素敵なレーナだったが、子供はわずか1年でも大きく成長する。で、オーディションの結果、今回は新たに新井夢乃さんと​​大石優季​さんが配役された。

 今日の歌稽古にはその2人が登場。1回目の稽古なのでまだ緊張感も漂わせてはいたが、初日までにはきっと素敵なレーナになるだろう。

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