『台所太平記』通信
5月11日(月)
立ち稽古3日目。
沢口靖子さんとは、私が演出家になる以前、演出部の時代に2度ほどご一緒した。もう20年以上も前の話である。演出家としては、この『台所太平記』が初めてご一緒する仕事となる。
今回、稽古場で再会した沢口さんは、その二十数年前と全く変わらない。いや、実際にはそんなことはないのだろうが、少なくとも印象は何ひとつ違わない。これを驚異と言わずして何と言おうか。
喜劇『台所太平記』は「抱腹絶倒、大爆笑の連続」と言う様なコメディではない。登場人物ひとりひとりの愚直さや不器用さ、気持ちのすれ違いなどが観る者の頬を自然に緩ませる、そう言うタイプのヒューマン・ドラマである。
こう言う作品の主人公として沢口さんは適任だと思う。どこまでも真っすぐに、至って真剣に演じてくださるからである。沢口さんの演じる初のひたむきさを見ているとつい頬が緩んでしまう。
沢口さんは天性のコメディエンヌである。そう断言しても恐らく異論は出ないであろう。(つづく)
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