« 2014年7月 | トップページ | 2014年9月 »

2014年8月の記事

『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』通信

8月30日(土)

 1幕の後半、そして2幕の冒頭を稽古。

 コノリーに続いて登場するのは、デーヴィッドの聡明な妻、ローズマリーである。
 ローズマリーは(台本のト書きによれば)デーヴィッドよりやや若い魅力的な女性である。夫の晴れの舞台である「ポンソンビー記念講演」を見届けるためにセント・アンドルーズ病院に駆けつけた。ローズマリーは極めて面倒見の良い女性で、誰かが困っていたり、落ち込んでいたりすると、一声掛けずにはいられない。
 その性格が、これからの数時間を一層ややこしいことにするのだが……。ローズマリーを演じるのは瀬戸カトリーヌさんである。

 ローズマリーの次に登場するのは、デーヴィッドの同僚医師、ヒューバート・ボニーである。
 ヒューバートは(台本のト書きによれば)威厳は感じられないがすぐ熱くなる男である。野心満々のデーヴィッドとは異なり、人生のかなり早い段階で出世コースから外れ今日に至っている。いい年をして独身で、ややマザコンの気味も感じられる。
 そのヒューバートに、人生を180度ひっくり返す様な出来事が待ち受けていた。そんなモノが自分を待ち受けていようとは、彼は知る由もなかった……。ヒューバートを演じるのは酒井敏也さんである。(つづく)

| | コメント (0)

『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』通信

8月29日(金)

 昨日稽古した1幕の前半部分をサクッとさらった後、1幕の後半を稽古。

 芝居が始まって最初に登場するのは、この物語の主人公、デーヴィッド・モーティマー(錦織一清さん)である。時は、暮れも押し迫った12月22日の朝(つまり、誰もが忙しい)。所は、ロンドンのセント・アンドルーズ病院内にある医師専用の談話室である。
 ご承知の通り、イギリスは階級社会である。この談話室も、医師がその特権を享受するために設置されていて、医師以外は立ち入り厳禁の特別な場所なのである。

 デーヴィッドは、今日の正午から世界中の神経科医が集まる学会でスピーチを行うことになっている。このスピーチを見事にやりおおせれば内科部長のポストと将来のサーの称号が約束される。しくじれば……医師生命の終わりであろう。
 そのスピーチを推敲・暗記するために、デーヴィッドは医師談話室に籠っている。ところが、次から次へと邪魔が入り……。

 登場順にキャストをご紹介すると、まず最初に現れるのは若き研修医のマイク・コノリーである。
 コノリーは(台本のト書きによれば)元気溌剌とした医師である。今日のコノリーは患者を診ることは眼中に無く、3日後に迫ったクリスマスの余興の出し物のことで頭が一杯である(クリスマスに、入院患者たちのために病院のスタッフたちによる寸劇が上演されるらしい)。
 コノリーは、何かと忙しい医師や看護婦たちの尻を叩いて余興の稽古に参加させようと躍起になるが……。コノリーを演じるのは土屋裕一さんである。(つづく)

| | コメント (0)

『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』通信

8月28日(木)

 1幕の頭に戻って立ち稽古の2巡目。

 場面を短めに区切って、何度も何度も繰り返しながら細かいタイミングや手順、ニュアンスなどを整理して行く。台本ももちろん手放した。
 4~50分稽古をすると10分程度の休憩を取る。稽古再開後は休憩前にやっていた場面に戻ることもあるし、先に進むこともあるのだが、この稽古場でちょっと興味深いのは休憩の間である。「しーん……。」としているのである。

 『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』の登場人物たちは、とにかく良く喋る。誰ひとりとして黙っていることができない。必然的に、どのキャストも物凄いスピードで喋っているか、そのスピードで他人が喋るのを物凄い集中力で聞いていることになる。
 こういう状態の時は、誰かがひとつつまずくと、それが次に喋る人にも、聞いている人全体にも波及して、あっという間に芝居がガタガタになってしまう。恐ろしいものである。

 それがあるので、稽古が休憩に入っても全員が台本を手にとって黙々と確認に勤しんでいる。或いは、台本を読むことを諦めて喫煙所に向かってしまう。それで「しーん……。」としているのである。

 休憩の間くらい雑談でもして気分転換すれば良いのに、と思わないでもないのだが、キャストの全員が真面目な方なので……。

 頭が下がります。

| | コメント (0)

『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』通信 そして『王様と私』大千穐楽

8月25日(月)

 2幕の残り(ラストシーンまで)に手を付ける。

 立ち稽古に入って6日目で、何はともあれ全場面を荒立ち(あらだち)した。
 「萩本欽一さんが手掛ける舞台」以外の作品には数える程しか出演した経験が無い、と言うはしのえみさんから「この進み方は普通のペースなんですか?」と言う質問を頂いた。はしのさん、これはとてもとても速いペースだと思います。

 さて。

 3年間で46都道府県の55会場を回ったブロードウェイ・ミュージカル『王様と私』が、王様役の松平健さんの故郷・豊橋市にて本日遂に大千穐楽。3年間での上演回数は85ステージに及んだ。
 スタッフ&キャストの皆さん、ご支援いただいた方々、そして何よりも会場に足を運んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。

 ミュージカルに携わる者のひとりとして、ロジャース&ハマースタイン作品に関われたことは何よりの幸せであった。いつの日かまた『王様と私』と再会できる日が訪れることを願って止まない。だって、沖縄県が未訪問のままで残されているのだから。

 『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』の方は、明日、明後日と稽古OFF。つまり連休である。その間はこのブログもお休み。悪しからず。

| | コメント (1)

『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』通信

8月24日(日)

 2幕の前半をおさらい。その後、それに続く2幕の中盤に手を着ける。

 昨日の稽古では、台本のページ数で言えば60ページ近くを消化した。それに引き換え、今日は30ページ弱しか進むことができなかった。
 もちろん、昨日は1日かけての60ページで、今日はその60ページをさらった上での30ページなので単純に比較はできないのだが、昨日手を着けた2幕の前半は、同時に登場する人物もそれほど多くなく話もまだこんがらがってはいないので、何回か繰り返している間に段取りや位置関係も自然と落ち着くところに落ち着いて来る、稽古も比較的サクサク進むブロックであった。
 が、今日の30ページ辺りまで来ると、ストーリーは複雑に絡まり始め、次から次へと新たな問題も運び込まれ、同時に登場する人物も増え、舞台も立体的に使う必要が出て来るし、並走する別々のエピソードを同期もさせなければならない。

 こういうシークェンスは、何度も何度も繰り返して試行錯誤して、辛抱強く最適解を見つけ出すしか稽古の方法はない。
 キャストの皆さんも、今日は結構消耗しただろうと思われる。特に、出ずっぱりで膨大な量の台詞を休む間もなく繰り出し続けなければならない錦織さんは。

 錦織さん、特にお疲れ様でした。

| | コメント (0)

『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』通信

8月23日(土)

 立ち稽古4日目。2幕に入る。

 『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』は2幕のコメディである。
 途中に休憩が1回入る訳だが、その休憩の間を除いて、物語中では「時間」がノン・ストップで流れ続ける設定になっている。「舞台上の時間経過」と「現実世界の時間経過」とが一致する様に書かれているのである。

 舞台上には実際に時を刻む時計も設置されていて、その時計の針が指し示している時刻を俳優が読み上げなければならない瞬間も何度か登場する。なので、俳優たちには、たっぷりと芝居をしたりして上演時間を延ばすことが許されない。
 それは、演出家にとっては「芝居がダレて上演時間が延びる心配がない」と言うことなので、ちょっと嬉しい。

 明日は、今日手を付けた2幕前半をおさらい。そして、さらにその先へ行く予定。

| | コメント (0)

『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』通信

8月22日(金)

 日本版『チャーリー・ガール』で主人公のジョー・スタッドホームを演じたのは錦織一清さんである。なので、錦織さんとレイ・クーニーに取り組むのは、実は今回で2度目なのである。

 錦織さんと演出家としてご一緒したのは『少年隊ミュージカル/Playzone ’96 Rythm』(1996年/青山劇場、他)が最初であった。その後、『チャーリー・ガール』が2002年にあり、そして今回である。
 今回は3度目、12年振りの仕事と言うことになる(演出助手時代に『天井桟敷の人びと』(1995年/帝劇)があるのだが)。

 で、立ち稽古3日目。

 ものすごく「荒く」ではあるし、台本もまだ手放していないのだが、3日間で1幕のラストまで辿り着いた。
 もちろん、まだ辿り着いただけで、整理整頓もこれからだし、暫定的に「そんなことが起こります」で通過した個所もあちこちに残っている。が、何はともあれ辿り着いた。なので、明日は2幕の立ち稽古に入ることにする。

 とにかく、どんどん行くつもり。

| | コメント (1)

『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』通信

8月21日(木)

 私が『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』を最初に演出したのは(一昨日記した通り)2004年のことである。が、レイ・クーニーとの出会いは、それ以前に遡る。

 2002年に帝劇(4月)と梅田コマ劇場(10月)で上演されたロンドン発のミュージカル・コメディ『チャーリー・ガール』。それが私とレイ・クーニーとの出会いである。レイ・クーニーは、『チャーリー・ガール』の脚本をヒュー&マーガレット・ウィリアムズと共同で書いている。
 『チャーリー・ガール』は、1965年にウエストエンドのアデルフィ劇場で初演され、6年間で2201回の上演を記録する大ロング・ランとなったヒット・ミュージカルである。同じロンドン発のミュージカル・コメディ『ミー&マイガール』ととてもよく似た構造と内容を持っていて、どちらもイギリスの貴族の大邸宅を舞台とし、身分や階級の差が引き起こす混乱と、それを乗り越える愛の素晴らしさが描かれている。

 『チャーリー・ガール』『ミー&マイガール』で大きく異なるのは、『チャーリー・ガール』の方が「笑い」に対してより貪欲で直接的である、と言う部分であろう。『チャーリー・ガール』は3人の脚本家の共作なので、どの部分がレイ・クーニーの功績なのか判然としない。が、彼が参加したことで「笑い」のポイントは確実に増えている筈である。

 で、立ち稽古2日目。

 昨日手を着けた1幕の前半をさらい、それに続く中盤部分に手を着ける。
 まだアウトラインをなぞっている段階で、細かい手順やニュアンスやタイミングに踏み込んでいる訳ではない。が、そういう細部よりも、「まずはひと通り立ってみよう」と言うのが現在の方針である。

 明日も(台本を放さないで)立ち稽古。
 「台本を持った立ち稽古」が「読み合わせ」と決定的に違うのは、そこには演劇にとって極めて重要な情報=「登場人物の位置関係」(ミザンセーヌ)が含まれていることである。

 それはともかく、また明日。

| | コメント (0)

『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』通信

8月20日(水)

 1932年生まれのレイ・クーニーが本格的に戯曲を書き始めるのは1960年代に入ってのことである。彼の公式ページにはウエストエンドで上演された作品のリストが載っているが、(それはこちら)、それは60年代から始まっている。最大のヒット作は『ラン・フォー・ユア・ワイフ』で、これはウエストエンドで9年に渡って続演された。
 日本で彼の名がポピュラーになるのは、代表作である『ラン・フォー・ユア・ワイフ』が上演された1993年以降のことであろう。同作と『パパ、I LOVE YOU!』(『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』日本初演時の題名)が納められた戯曲集(『レイ・クーニー笑劇集』)も1994年に出版された。

 で、稽古3日目にして、早くも立ち稽古である。

 立ち稽古……と言っても、キャストの皆さんはまだ台本を手にした状態である。そう言う意味では「座っていないだけの読み合わせ」と言えなくもないが、まあ立ち稽古である。

 『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』の主人公は、ロンドンのセント・アンドルーズ病院に勤務する精神科医、デーヴィッド・モーティマーである。
 医師として出世の階段を滑り落ちずにどうにかこうにか今日を迎えたデーヴィッドは、世界中の医師が集まる学会でのレクチャーを成功させれば内科部長の椅子が、そして将来の「サー」の称号が約束されていた。
 ところが、レクチャーが始まる1時間前になって昔の不倫相手が現われ、「18年前にあなたの子供を身籠った」と告げられる。そのことが他人に知られれば、医師生命はもちろん、内科部長の椅子も、「サー」の称号も、そして幸せな結婚生活も、全てはパーである。
 デーヴィッドは全てを守り抜く決意を固めて……。

 『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』は、要約すればそういう話である。
 全てを守るためにデーヴィッドはその場しのぎの嘘をつく。しかし、その嘘が嘘とバレないためには次の嘘が必要となり、更にその嘘を守るためにまた新たな嘘が必要となり……。

 明日も立ち稽古(まだ台本は放さない)。

| | コメント (0)

『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』通信

8月19日(火)

 『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』は、1987年11月21日にイギリスのギルドフォードにあるイヴォンヌ・アルノー劇場で初演の幕を開けた。ロンドン公演は1992年8月17日にプレイハウス劇場で開幕した。
 演出はどちらもレイ・クーニー自身が手掛け、同時にクーニーは両公演で登場人物のひとり、ヒューバート・ボニー医師を演じている。

 日本での初演は1994年。『パパ、I LOVE YOU!』のタイトルで、加藤健一事務所によって上演された。演出は綾田俊樹さんであった。
 今回と同じPARCO劇場のプロデュースで、『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー~パパと呼ばないで~』のタイトルで上演されたのは2004年。その時が私とこの作品との出会いであった。今は無きル・テアトル銀座で幕を開け、続いて福岡、大阪、名古屋を巡演した。

 で、稽古2日目の今日も読み合わせ。

 昨日は「ト書き」を演出助手の則岡さんに読んでもらい、途中で止めることをせずに読み合わせたのだが、今日は所々で止めて確認をしつつ、また、ト書きを読むことも省略した。
 長大なト書きが会話の途中に挿入されていたりするので(そのお陰で各場面が重層的に展開し、笑いも重層的になるのであるが)、せっかくのテンポやスピードが途切れてしまうからである。

 さて。

 我々が小さい稽古場で読み合わせをしている間に、舞台監督の山矢さん率いるチームは大きい稽古場に稽古用の大道具を立て込んで、小道具を搬入してくださった。これで、いつ立ち稽古に入っても大丈夫な態勢が整った。

 という訳で、明日から立ち稽古。

| | コメント (0)

『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』通信

8月18日(月)

 イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー~パパと呼ばないで~の稽古が始まった。

 『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』は、イギリスの劇作家(兼・演出家/俳優)レイ・クーニー作のコメディである。
 ひと口に「コメディ」と言ってもそのスタイルは様々であるが、『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』は「大ドタバタコメディ」である。従ってここには「笑いながらジーンとする」とか、「笑いながら考えさせられる」とか、「笑いながら背筋がゾッとする」などと言った複雑な笑いは存在しない。
 「ヒューマニズム」や「社会性」とは一切無縁の(「社会風刺」はあるかもしれないが)、ただただ観客を笑わせることだけを考えて書かれた、気持ちの良いくらい潔いコメディなのである。

 稽古初日の今日は顔合わせと読み合わせ。

 東宝などの現場では「顔寄せ」と呼ぶこともあるが、ここでは「顔合わせ」である(どちらでも内容に余り違いはないのだが)。祖父江プロデューサーの進行で、キャストの皆さん、クリエイティブ・チームとスタッフ、そして関係者の皆さんが紹介される。
 続いて、翻訳の小田島雄志さん・恒志さん父子を代表して、お父上の雄志さんがご挨拶。ロンドンでご覧になった『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー』初演時のエピソードをご紹介くださった。

 続いて読み合わせ。

 実際のキャストの声で台詞を聞くのは今日が最初である。
 いつも色々と想像を逞しくしてこの日を迎えるのだが、今日は「想像通り」とほくそ笑む瞬間があちこちにあり、「想像以上」の嬉しい驚きを感じた瞬間も少なくなかった。実に収穫の多い読み合わせであった。

 さて。

 初日の9月20日(土)までひと月余り。どうぞよろしくお付き合いください。

| | コメント (1)

『ファースト・デート』公式ページ リニューアル

 ブロードウェイ・ミュージカル『ファースト・デート』の公式ページがリニューアル!

 こちらからどうぞ。

| | コメント (0)

« 2014年7月 | トップページ | 2014年9月 »