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深町幸男さんのこと

 深町幸男さんが亡くなった。

 深町さんは、昭和の頃のNHKを代表するディレクターであった。代表作は『夢千代日記』『あ・うん』『事件』など、枚挙にいとまが無い。NHKを退職された後も引き続きテレビで、加えて映画や舞台でも演出活動を続けられていた。

 私は、深町さんが東宝で演出された2本の舞台に演出部のひとりとして付いた。1987年に東京宝塚劇場と御園座で上演された『螢』と、翌年に東京宝塚劇場で上演された『夢見通りの人びと』である。
 主演は共に森繁久彌さんで、やはりNHKで美術デザインをされていた川口直次さんによる巨大な舞台美術に難儀したことも思い出深い。
 稽古場での深町監督は、額に巻いたバンダナがトレード・マークであった。で、演出補の井上思(おもう)さん以下、私たち演出部も、監督に倣ってバンダナを巻いて気勢を上げた。

 その後は仕事でご一緒する機会は無かった。が、私が演出した『マディソン郡の橋』(1998年)をご覧になって、直々にお電話をくださったり、2012年に日大芸術学部の実習発表で『ゼブラ』を取り上げた時、「監督の教え子が出ている」ということで、わざわざ江古田までお運びくださったりした。
 その時、東宝での仕事以来四半世紀の時を経て、お目に掛かってお話をさせていただくことができた。それが監督との最後となった。往時と何も変わらない、気さくで情熱家の監督のままであった。

 ご冥福をお祈りいたします。

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