『王様と私』通信
6月14日(土)
子供たちの稽古デー。1幕4場=アンナ先生の「教室」の場面を稽古。
1860年代の初め。英国夫人アンナ・レオノーエンズは、シャム(現在のタイ)王室より子供たちの教育係として招聘された。王室の子供たちに西欧流の教育を受けさせよう、とシャムの国王が考えたためである。
しかしシャムの伝統的な文化と、アンナが持ち込んだ西欧流の価値観とは水と油であった。王様とアンナは事ある毎に、ことごとく衝突する。
異なる価値観。対立する人々。これらは長年に渡ってミュージカルの主要な題材のひとつであった。『ミー&マイガール』や『ラ・カージュ・オ・フォール』などは、それらを題材としたミュージカルの代表的な作品だろう。
『王様と私』もそんな作品群の1本である。誕生から既に60年を超え、今では古典と呼んでも差し支えないミュージカルだが、観る人の心に訴えかける力は今日でも失われてはいない。
ロジャース&ハマースタインの作品には「異なる価値観、対立する人々、それを克服する勇気」などが描かれた作品が少なくない。『サウンド・オブ・ミュージック』や『南太平洋』などもそれに連なる作品である。
その系譜に新たに加わったミュージカルが、現在帝劇で上演中の『シスター・アクト』である。『シスター・アクト』でも、描かれるのは「異なる価値観による対立とその克服」である。
これらの作品の中では、「もはや修復不可能」と思われた対立が、物語の終わりでは奇跡の様に解消される。もちろん、現実社会では事はそう簡単ではないだろう。ミュージカルの中のハッピー・エンドは確かに綺麗ごとかもしれない。
しかし、「劇場が社会に対して果たすべき役割」があるとすれば、それは「人間も社会も、今より良くなることができる」と示し続けることではないだろうか。たとえそれが「綺麗ごとだ」と受け取られたとしても。
子供たちの「Getting To Know You」を見ながら、そんなことを考えていました。
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コメント
綺麗ごとだとわかってますが(案外冷静です)劇場を出る時は
何故か足取りが軽く楽しくなっているのです♪
投稿: くまこ | 2014年6月15日 (日) 21時22分