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『シスター・アクト』通信

4月10日(木)

 「ギャングによる殺人を目撃してしまったため、ギャングの追跡から逃れるために身を隠す」と聞いて、ある映画を思い出さないだろうか?

 ビリー・ワイルダー脚本・監督の名作『お熱いのがお好き』(1959)である。

 『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』では逃げるのは冴えないクラブ・シンガーだが、『お熱いのがお好き』では2人のバンド・マン(トニー・カーティスとジャック・レモンが演じる)が身を隠す羽目になる。
 時代設定は、『シスター・アクト』がディスコ・ブームの1977年で、『お熱いのがお好き』は禁酒法時代の1929年。そして主人公が身を隠す先が『シスター・アクト』では修道院、『お熱いのがお好き』では、メンバーを募集していた女の子だけのバンド。バンド・マン2人は女装してまんまとバンド・メンバーに納まる。

 「音楽と歌が、価値観の異なる人々を結び付ける」というプロットも様々な名作を想起させる。

 例えば『サウンド・オブ・ミュージック』

 主人公のマリアは、家庭教師として派遣された先で、当主のフォン・トラップ大佐とことごとく衝突する。その家には7人の子供がいて、子供たちも初めはマリアと敵対するが、マリアの前向きな生き方と歌が、やがて両者の距離を無くして行く。
 『シスター・アクト』ではマリアはデロリスで、子供たちはメアリー・ラザールス、メアリー・パトリック、メアリー・ロバートをはじめとする修道女たちであり、トラップ大佐は修道院長であろう。

 数々の名作が持っている力強い構造を『シスター・アクト』は備えている。そして、それら名作の単なる焼き直しにもパロディにも堕していない所が『シスター・アクト』の素晴らしいところなのだと思う。(つづく)

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