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朝倉摂さんのこと

 舞台美術家の朝倉摂さんが亡くなった。

 朝倉さんは、日本の舞台美術の世界に大変大きな足跡を残された。『近松心中物語』に代表される、演出家・蜷川幸雄さんとの共同作業が、私の世代では何よりも記憶に残る。
 朝倉さんは、商業的大劇場から実験的小劇場まで、アップ・トゥ・デートな作品から古典まで、膨大な作品を手がけられた。その幅の広さはとにかく驚異的であり、既成概念にとらわれないその創作姿勢が、古典や商業演劇を最先端の現代劇にし、小劇場演劇に普遍性と付加価値を与えた。

 私は『マディソン郡の橋』(1999年、アートスフィア=現在の銀河劇場で初演)でご一緒させていただいた。
 朝倉さんとの打ち合わせは、決まって午前中の、それも早い時間に行われた。多くの作品が同時進行していてたまたまそうであったのか、どなたとの打ち合わせも朝にされていたのか、それは存じ上げないのだが、我が家から徒歩で行ける朝倉さんのアトリエにお邪魔するのは、駆け出しの演出家にとっては大変有益な、わくわくする時間であった。

 今年の読売演劇大賞では、朝倉さんは芸術栄誉賞を受賞された。2月27日に行なわれた贈呈式では、お嬢様の冨沢亜子さんが代理で壇上に登られ、朝倉さんの近況を報告してくださった。
 それから僅かひと月。まだまだご活躍されることを信じて疑わなかったのだが。

 ご冥福をお祈りいたします。

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