岩谷時子さん
岩谷時子さんの訃報に接した。
ちょうど1年前の今ごろ、岩谷時子さんと越路吹雪さんのお2人を主人公に、その出会いから別れまでを描いた音楽劇『Chanson de 越路吹雪 ラストダンス』の稽古をしていた。
その準備段階で、岩谷さんの著作を改めて何冊も読み返して、岩谷さんに対する尊敬と畏怖の念を新たにしたのだった。
岩谷さんがこの国のショー・ビジネス界に果たされた役割は途轍もなく大きく、残された功績は今も燦然と光り輝いている。我々ショー・ビジネスの世界で働く者は全て、岩谷さんの恩恵に浴している。
私は2本のミュージカルで、訳詞家と演出家として岩谷さんとご一緒する機会に恵まれた。『I Do! I Do!』と『南太平洋』である(『王様と私』『ラ・カージュ・オ・フォール』も岩谷さんの訳詞だが、既に繰り返し上演されていた作品なので、岩谷さんと私の間に直接の遣り取りはなかった)。
『南太平洋』の稽古場で、駆け出しの演出家であった私は、上履きとして雪駄(せった)を履いていた。
舞台の裏方には雪駄を履くしきたりがあり、裏方時代からの習慣で私はその時も雪駄を履いていたのだが、雪駄の私を観て岩谷さんが手提げの草履袋をくださった。
今も愛用している草履袋は、岩谷さんから頂戴した物であった。
合掌。
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