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2012年11月の記事

『シラノ』通信

11月29日(木)

  オープニング・ナンバー「幕を上げろ」に続く、1幕1場を立ち稽古。

  『シラノ』は、原作である戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』に大変忠実に書かれている。『シラノ・ド・ベルジュラック』が全体を5つの場面に分けているなら、『シラノ』の場割もそうなっている。なので『シラノ』は、現代のミュージカルの中では異例なほど場面数が少ない。1幕が3場面、2幕に至っては2場面である。
  現代では、1エピソード=1場面であることが珍しくない。全体で20場面以上になることもザラである。場面が次々と変わる手法が「映画的である」とするならば、『シラノ』は極めて演劇的な書かれ方をしているミュージカルだ、と言えるだろう。

  結果として1場面、1場面は長くなる。場数の多いミュージカルでは1場面は大抵は5~10分である。1ナンバーだけで1場面、時間にすると2~3分なんてこともザラである。
  が、『シラノ』では1場面=およそ30分である。1幕1場だけでミュージカル・ナンバーも5曲を数える。

  冒頭の6分に及ぶ「幕を上げろ」は昨日整理したので、今日はその後の芝居部分から。既に手を付けてあった「さっと一突き」や「ロクサーヌ」を含め、1場を締めくくるナンバー「相手は百人」までの流れををざっくりと段取った。
  今回の再演では台本とスコアに改定を施している。改定は主に1幕1場に集中している。饒舌過ぎると思われた部分をカットし、「ロクサーヌ」ではアレンジを変更、「相手は百人」では歌詞が全面改稿されコーラスも書き直された。

  より充実した『シラノ』をお目に掛けることができるだろう。

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『シラノ』通信

11月28日(水)

  ミュージカル・ナンバー2曲をステージング。

  ひとつ目は「月から落っこちた」。シラノがド・ギッシュを足止めして翻弄するコミカルなナンバーである。ふたつ目はオープニング・ナンバー「幕を上げろ」。
  『シラノ』は1640年のパリ、バルタザール・バロー作の芝居『クロリーズ』初日の夜のブルゴーニュ座で幕を開ける。その夜、ブルゴーニュ座にはパリ中の芝居好きと野次馬が集まっていた。話題作『クロリーズ』が公演をキャンセルするかもしれないと言う噂が流れたからである。

  「幕を上げろ」では、その騒動の一部始終が描かれる。キャストもほぼ全員が登場し、このナンバーの中で『シラノ』の主要人物も紹介されることになる。初演の時、大変苦労して作ったナンバーなのだが、劇場で観た時、稽古場でイメージしていた程にはダイナミックに感じられず、心残りとなっていたナンバーでもあった。
  で、今日はこのナンバーをリニューアル。基本コンセプトは変わらないが、本来のダイナミックさは表現できたのではないかと思う。ミュージカルらしいわくわく感も増したし。

  明日は芝居の稽古に突入。

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『王様と私』通信

11月27日(火)

  王様と私のアンサンブル、そしてチュラロンコン&ルイスのオーディション。

  今年の夏、各地を回って好評を博したブロードウェイ・ミュージカル『王様と私』が来年の夏に帰って来ることは以前ご報告した通りである。で、来年の再演に向けて、アンサンブルとチュラロンコン&ルイスのオーディションが行われた。
  今日は80名ほどの大人たちと40名ほどの子供たちにお目に掛かった。皆さん、参加してくださってありがとうございました。そしてお疲れさまでした。

  『王様と私』は、一般社団法人映画演劇文化協会が運営する「ハロー・ミュージカル!  プロジェクト」の一環として上演されている。良質なミュージカルを低料金で全国各地へ、と言うのがその趣旨である。
  来年のツアーは7月13日に幕を開け8月25日まで続くことが決まっている。それ以上の詳細はまだ発表されていないが、今夏同様、各地で新しい出会いがあることを期待している。

  どうぞよろしくご支援くださいます様に。

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『シラノ』通信

11月26日(月)

  ミュージカル・ナンバー2曲をステージング。

  『シラノ』の振付は前田清実さんである。
  清実さんはパリパリのダンス・ミュージカルの振り付けも素晴らしいが、『シラノ』の様なダンスではないミュージカル・ステージングでもその手腕を遺憾なく発揮する。演じ手の生理に気を配りつつ、それとナンバーの中で観客に渡さなければならない情報を見事に両立させてくれる。

  今日ひとつ目のメニューは「完璧な恋人」。シラノがある企みを思いつき、血気盛んな若者クリスチャンと意気投合して歌うナンバーである。そしてふたつ目は「ロクサーヌ」。シラノが、今まで誰にも明かすことの無かった思いを友人のル・プレに打ち明ける美しいナンバーである。
  「完璧な恋人」ではキュートでコミカルな鹿賀さんを、「ロクサーヌ」ではロマンティックな鹿賀さんをご覧いただける。

  明日は稽古OFF。休み明けもステージング!

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『シラノ』通信

11月25日(日)

  まずはコーラス稽古。
  コーラスも順調に仕上がって来ている。なので今日は、ナンバーの前後や途中にある台詞部分も含めて稽古。『シラノ』のキャストには経験豊富なメンバーが揃っている。大勢が騒いでいるだけの様な半ば捨て台詞にも実に説得力がある。頼もしい。

  その後、プログラムのための対談。
  鹿賀さん、翻訳の松岡和子さん、訳詞の竜真知子さん、そして私のメンバーで。それぞれの立ち場からミュージカル版『シラノ』成立の裏話やその特質などが語られ、当事者の私ですら目から鱗が落ちる。

  更にその後、シラノ、ロクサーヌ、クリスチャンの部分を抜き稽古。
  歌稽古を一歩進めて、台詞も含めての読み合わせ。そのシーンで何が起こっているのか、人物像やその時の気持ち、それらを観客にどう伝えるのか、などを確認。

  少しずつ本格的な稽古に移行中。

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『シラノ』通信

11月24日(土)

  前半は歌稽古。

  今日はまず平方さん、そして彩吹さんの歌稽古。歌の方は随分と仕上がって来ているので、歌の合間に人物像や感情の流れ、台本の解釈などについて少し話す。
  『シラノ』の登場人物を演じる上で最初に注意しておくべきことは「その人物は何を知っていて何を知らないか」である。
  シラノと言う男はクリスチャンにもロクサーヌにも隠し事をしている。それはとても切ない隠し事なので、心情的にはついシラノに感情移入してしまうのだが、隠し事のことを知らないクリスチャンやロクサーヌは感情移入すること無く、無邪気であったり純粋であったりし続けなければならない。つい思いやってしまいそうになるのに注意、なのである。

  後半はアクションの抜き稽古。

  シラノは剣の名手である。そして常に騒ぎを巻き起こす。その結果は決闘である。
  『シラノ』が舞台としているのは『三銃士』と同じ17世紀中頃のパリである。男たちは喧嘩早く、名誉を守るためには剣を抜くことをためらわない。で、このブログではお馴染み、アクションの渥美博さんの出番になる。
  今日はシラノと宿敵ヴァルヴェールの一戦をおさらい。詩人でもあるシラノは、この決闘を「詩を作りながら戦う」と宣言する。なので、鹿賀さんは詩を作る芝居をしながら、ミュージカルなのでその詩を歌い、そしてヴァルヴェールを剣で翻弄しなければならない。
  ヴァルヴェールを演じるのは中山昇さんだが、こちらもアクションの息を合わせると同時に、音楽のタイミングも計りつつ、翻弄され続けなければならない。

  本当にお疲れさまでした。

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『シラノ』通信

11月23日(金)

  今日は「いいふみ(良い文)の日」だそうだ。1123の語呂合わせなのだが、かつての郵政省が決めた記念日らしい。

  で、『シラノ』の「いいふみの日イベント」が行われるフジテレビへ。
  このイベントは、『シラノ』の劇中で重要な働きをする「手紙」に因んで行われた。誰かに宛てた手紙をオーディエンスの前で読み上げて、その誰かさんご本人に聞いてもらう、というイベントなのであった。
  イベントには選ばれた9名の方が登場された。手紙は、親御さんや友人に宛てた物がほとんど(特に母親に宛てた物が多かった)で、シラノの様に熱烈なラヴ・レターを書いた方はいらっしゃらなかった。ちょっと残念。

  イベントには、審査員として鹿賀丈史さん、彩吹真央さん、平方元基さん、そして私が参加した。披露された手紙は、どれも書いた方の人柄が反映された素敵なものであった。傍で聞いていると、ついうるうるしてしまいそうになるのだが、いい歳をして照れくさいので我慢した。
  イベントの終わりには、平方さんが鹿賀さんに手紙を読み上げる、と言うサプライズが用意されていた。私も知らされていなかったことなので、ちょっとびっくり。発案者の思惑通りであろう。

  イベントは、シラノ賞、ロクサーヌ賞、クリスチャン賞を選んで終了した。ご参加くださった皆さん、ありがとうございました。

  さて、今日は『シラノ』のイベントがもうひとつ行われた。日比谷シャンテで行われたクリスマスイ・ルミネーションの点灯式だが、こちらには彩吹さん、平方さん、そしてアンサンブルの皆さんが登場した。
  私は所用のため不参加だったのだが、こちらに足を運んでくださった皆さんもありがとうございました。

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『シラノ』通信

11月22日(木)

  今日も 歌稽古。

  前半はコーラス稽古。
  『シラノ』には、とにかく歌えるキャストが揃っている。これだけのメンバーが揃っていると、コーラスも、その間に挟まれるちょっとしたソロも、全てが鳥肌ものである。
  華やかな幕開きの「幕を上げろ」や男くさい「我らガスコン」「栄光に向かって」、キュートな「料理人で詩人」、ロマンティックな「パリの思い出」、そして女性コーラスが美しい「秋の日」まで、鳥肌だけでなく、ため息の連続である。
  今日はやや狭い稽古場だったせいもあって、コーラスの音圧にも圧倒された。人間の声ってすごい。

  後半はシラノ、ロクサーヌ、クリスチャンの歌稽古。
  ロクサーヌは濱田めぐみさんと彩吹真央さんのダブル・キャスト、クリスチャンは田代万里生さんと平方元基さんのダブル・キャスト。4名とも新キャストである。
  シラノとロクサーヌには「ベルジュラックの夏」「運命の人」「あの人を守って」「幸せで」と言ったナンバーがあるが、こうして並べてみると、2人が幼くして出会った時から老年を迎えるまでの軌跡が音楽で見事に表わされていることが分かる。
  シラノとクリスチャンのナンバーには「完璧な恋人」「さよならの手紙」「愛されてるのは」があり、更にロクサーヌとクリスチャンのデュエット「これが恋」があり、そして3人の「どんな日も」がある。

  『シラノ』は全編が歌で綴られるタイプのミュージカルではない。優れたミュージカルであると同時に優れた台詞劇でもある。台詞と台詞をミュージカル・ナンバーの数々が繋ぎ、膨らませ、飛翔させて行く。

  『シラノ』は本当にミュージカルらしいミュージカルだと思う。

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『シラノ』通信

11月20日(火)

  シラノの歌稽古が始まっている。

  ミュージカル『シラノ』は2009年5月に日生劇場で初演された。脚本・作詞はレスリー・ブリカッスさん、音楽はフランク・ワイルドホーンさんである。
  今回は3年半ぶりの再演となる。キャストが一部入れ替わり、台本や歌詞、スコアにも手を入れた。

  今日最初に現れたのは鹿賀丈史さん。鹿賀さんは、断続的にだが、ひと月以上前から歌稽古を重ねていらした。なので、ナンバーは既に鹿賀さんの身体に入っている。
  鹿賀さんの歌うナンバーは全部で22曲と多く、初演時に大変苦労して覚え演じたので、今回はその轍を踏まぬ様に、かなり余裕を持ってスケジュールが組まれている。
  その甲斐もあって、現在の鹿賀さんは大変良い状態をキープされている。歌唱指導の林アキラさんも、そう太鼓判を押してくださっている。

  次に現れたのは新キャストのひとり、平方元基さん。平方さんも(断続的にだが)ひと月以上歌稽古を重ねて来ている。で、今日は鹿賀さんと幾つかのナンバーを一緒に歌った。そして鹿賀さんに引っ張られてハモリのメロディが良く分からなくなった(笑)。
  シラノとクリスチャンは大半の時間、行動を共にしている。シラノとクリスチャンは、ある意味2人で1人である。今後、稽古場で平方さんが鹿賀さんと共に過ごす時間もそれ相当に増えることだろう。

  最後に現れたのは鈴木綜馬さん。いらして早々に「殆ど何も覚えてない」と、いきなり弱音を吐かれたが、歌っている内に様々なことが蘇っていらした。音楽とはそう言うものである。
  「名誉のスカーフ」を歌いながら、「思い出した。ここで鹿賀さんにいじめられてたんだ」とおっしゃっていたが、それを言うなら「ド・ギッシュがシラノにからかわれた」であろう。

  皆さん、誤解のない様に。

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大平和登さんのこと

  大平和登さんが亡くなった。

  私が大学で演劇を学んでいた頃、そして東宝に入り芝居作りを職業として歩き始めた頃、ブロードウェイの演劇状況を知る唯一の手段は、大平さんが映画雑誌『キネマ旬報』に連載されていた「ブロードウェイ通信」を読むことだった。インターネットが普及し海外の様々な情報に直接アクセスできるようになるのは、それから15年以上後の事である。
  「ブロードウェイ通信」は単行本化され、1975年から80年の記事が『ブロードウェイ』に、80年から85年の記事が『ブロードウェイ Part 2』にまとめられた。この2冊はその時代のブロードウェイの大変貴重なレポートである。そして私のバイブルでもあった。

  大平さんは東宝のニューヨーク駐在員として長年を過ごされた。ブロードウェイの演劇人たちの似顔絵で有名なレストラン「Sardi’s」で、大平さんの似顔絵が飾られているのを見たことがあるが(今も飾られているだろうか?)、そのことだけでも、大平さんがどれだけブロードウェイの演劇界に貢献されて来たかが分かる。
  私はニューヨークの大平さんの事務所で一度だけお目に掛かったことがある。その頃はもう東宝の駐在員ではいらっしゃらなかったが、大平さんが日本の演劇状況にも大変詳しかったことに驚いたことを鮮明に覚えている。

  私のこの拙ブログ「××××通信」は、大平さんの「ブロードウェイ通信」から拝借したものであった。大平さんの文章に憧れ、大平さんが紹介されたブロードウェイのプロフェッショナルたちに一歩でも近づきたくて付けた題名であった。

  合掌。

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初日! 『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月16日(金)

  越路さんが亡くなられた時、私はまだ大学1年だった。当然仕事での接点は無く、生の舞台も拝見せずに終わった。返す返すも残念なことである。
  しかし繋がりが全くない訳ではなく、越路さんが主演されたブロードウェイ・ミュージカルを、後に何作も演出することになる。『サウンド・オブ・ミュージック』『南太平洋』『I Do! I Do!(結婚物語)』そして『王様と私』である。もちろん越路さんではないキャストで、であるが。

  初日。何と良いお天気であったろう。晴れ男(女)は誰だ?

  開演前に昨日の駄目出し。と言っても、細かなことが幾つかだけである。出来上がった芝居の良し悪しはお客様が入って初めて分かる。お客様無しのゲネプロで一喜一憂しても仕方あるまい。
  開場は開演の30分前。かめありリリオホールは建物の9階にあるので、ロビーからの眺めが素晴らしい。足元には豆粒の様な両津勘吉巡査長が、正面には、やや離れてはいるがスカイツリーの雄姿も。
  初日は14時の定刻に開演。1幕が約1時間15分、20分の休憩をはさんで、2幕が1時間35分。全体で約3時間15分の舞台であった。

  終演後、楽屋の一画で初日の乾杯。
  初日と言っても亀有での公演は今日だけである。緞帳が下りるや否や、スタッフは撤収に取り掛かっている。楽屋だって原状復帰して引き渡さなければならない。乾杯でも初日が開いた感慨に耽る間はなく、各自早々に身支度に戻った。

  今日から12月30日まで続く旅の始まりである。道中が安全で楽しいものであります様に!

  これで『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信はお終いである。ご愛読ありがとうございました。次は『シラノ』通信。数日後に始まる予定です。

  それでは劇場で!

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月15日(木)

  朝から照明合わせの続き。舞台稽古までの時間に最重点箇所のみテクリハ。午後は舞台稽古。テキパキと進行し予想時刻より早く終える。キャストの皆さん&スタッフ一同に感謝。18時よりゲネプロ。あたふたした部分もあったが総じて良い感じ。スタッフ・ワークが素晴らしい。残り時間で各セクションの調整。退館時刻になったので帰宅。

  明日は初日。14時開演、於・かめありリリオホール。祈・千客万来。その前に今日のゲネの駄目出し。合わせて、内容充実な「まんまるまる絵Blog」を参照されたし。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月14日(水)

  朝からテクニカル・リハーサル。その後、照明合わせの続き。午後からいよいよ舞台稽古。きれいな、わくわくする様な、そんな舞台である。

  舞台稽古1日目の今日は、予定通り2幕1場までのメニューを消化して終了。続きとゲネプロは明日のメニュー。
  舞台稽古終了後は照明合わせの続き。明日も朝から舞台稽古の前に、そのまた続き。

  嬉しいニュースがひとつ。
  もう何も始まらないのかと思われていた公式ブログが、「まんまるまる絵Blog」のタイトルで、何と今頃になって始動!  こちらからどうぞ。

  ムチャ振りされたまり絵ちゃん……、お察しします。

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訃報 森光子さん

  森光子さんが亡くなられた。

  私は演出部、演出助手時代に何度かご一緒させていただいたことがあった。『恋風』『春は爛漫』『花迷宮』などである。
  森さんの座組は、いつも笑いが絶えないアットホームな座組であった。開演前のひととき、共演者は森さんの楽屋に集うのが常だったし、我々裏方に対しても森さんは、誰よりも気さくにお付き合いくださった。
  森さんは、東宝育ちの最後の大劇場俳優でいらした、と私は理解している。大劇場演劇のひとつの時代が確実に終わった。

  謹んでご冥福をお祈りいたします。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月13日(火)

  舞台では終日道具調べ・照明合わせ。その合間に音響チームのチェック。楽屋周りでは衣裳、ヘアメイクチームが明日からの舞台稽古に備えてスタンバイ。

  『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』は場面数も音楽シークェンスも少なくないので、照明Cueも普通のミュージカル並みの数にはなる。つまり「多い」と言うことである。
  今日も終日、照明のデザインを優先して作業したが、進行状況はタイム・テーブルよりやや遅れている。照明や音響のデザインは、時間をかければかけた分だけ良くなる。だからデザイナーの皆さんも私も、つい粘ってしまうのであるが、さて、どこでどうやってその分を取り返そうか。

  明日から舞台稽古が始まる。が、その前にテクニカル・リハーサル。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月12日(月)

  葛飾区亀有に来ている。駅前で両津勘吉巡査長の立像が出迎えてくれる、亀有である。

  先日までの稽古が「シアター1010(せんじゅ)」内の稽古場で行われていたため、関係者の中にも「そのままシアター1010で開幕する」と錯覚してしまう者が後を絶たない。
  間違いのない様にこの場をお借りして言わせていただくが、11月16日(金)に初日の幕を開けるのは「亀有リリオホール」である。シアター1010でもシアタークリエでもない。

  さて。

  今日、明日は終日スタッフ・ワーク。今日は朝から搬入、そして各セクションの仕込み。夕方にはタッパを決めて、その後、照明のフォーカシングに入る。
  『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』はツアーも組まれているので、舞台美術も照明も音響も当然「旅仕様」であるが、どのセクションも一見そうとは思えない丁寧な仕事ぶりである。
  話は変わるが、上演時間についてのお問い合わせをいただいている。
  まだ舞台稽古前なので最終的なところは申し上げられないのだが、休憩を入れて3時間は超えるだろう。恐らく3時間10分~15分位になるのではないかと思われる。参考にしていただければ幸いである。

   明日は朝から今日の続き、そして道具調べ・照明合わせに入る。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月10日(土)

  稽古場最終日。最後の通し稽古。

  昨日の戦場とは打って変わって、今日は落ち着いた、集中した通し稽古であった。
  昨日は特に2幕が良い出来だったのだが、今日は1幕が良くなった。メリハリがあって、良い意味でのあざとさがあって、スピーディで、何より観ていて楽しかった。
  『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』のキャストは正にドリーム・チームである。このチームだからこそ出てくるもの、このチームにしか起こせないこと、そんな瞬間に稽古中も休み時間にも次々と出くわした。このキャストとこの素材に取り組むことができて、私は本当に幸運であった。

  さて、嵐の様だった稽古も無事に終わり、この稽古場ともお別れである。明日はスタッフが稽古場を撤収し、明後日からはいよいよ亀有リリオホールである。
  よく森繁久彌さんが「百里の道も九十九里をもって道半ばとす」と仰っていた。我々バック・ステージの人間にはここから先が正念場、である。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月9日(金)

  衣裳、ヘアメイク付きで通し稽古。不自由な稽古場でそれを実現させてくれたスタッフと関係者の全員に何よりも感謝したい。

  脚本の髙平哲郎さんが通し稽古を観に来てくださって、「オフ・ブロードウェイの芝居みたいだね」とおっしゃった。私もそう思う。
  オフの作品にはオンとは違う種類の楽しさや魅力があるが、『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』にも、帝劇や日生などの作品とは違った楽しさや魅力があると思う。そう言う作品を作りたい、と思って取り組んできた仕事でもあるが。

  稽古後は照明打ち合わせ。照明デザイナーは、シアタークリエと言えばこの人、(最寄り駅と生年月日が私と同じことで、このブログでは有名な)高見和義さんである。

  来週の今日はもう初日である。月並みで申し訳ないが、良い初日を迎えられます様に!

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月8日(木)

  通し稽古。

  もっと混乱するかな、と予想していたのだが、そんなことも無く、初回としてはとても順調に流れた通し稽古であった。どちらかと言えば、私は悪い方に考えておいて後から安心したいタイプなのである(好きな物は最後まで取っておいて食べるタイプでもある)
  お陰で、通し後の駄目出しも手短に終えることができた。ここのところ稽古時間が長めで、キャストにもスタッフにも負担が大きかったと思うのだが、残りの日々は今日の様にありたい。

  明日は衣裳付きで通し稽古。稽古場は明日、戦場になるのである。稽古後、演出部の皆さんが稽古場を戦場に変える作業に着手していた。また居場所がなくなるのかなあ……。

  話は変わるが、『王様と私』が来夏、帰って来る。こちらからどうぞ。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月7日(水)

  越路吹雪さんが亡くなったのは1980年(昭和55年)の11月7日。今日は越路さんの命日である。

  越路さんは、川崎市にある本遠寺(ほんのんじ。公式ページはこちらから)に、夫君の内藤法美(ないとう・つねみ)さんと共に眠っていらっしゃる。33回忌となる今日、キャストの皆さんとお2人のお墓をお参りさせていただいた。
  向かって右側に越路さんのお墓が、その左側に内藤さんのお墓が、寄り添う様に立っている。墓前には、きっと楽屋がそうであったであろうみたいに、沢山の花が供えられていた。越路さんがお好きだったと言うコスモスの花も。
  墓石の横には陶器の子犬が鎮座している。生前、越路さんを玄関で出迎えていた子犬だろうか。

  越路さんのご葬儀の日は寒い日だったそうだが、今日は風も無く、良く晴れて、日向では暑く感じる位の陽気であった。
  本遠寺さんには、越路さんが愛用されていた品々も収められていて、越路さんの楽屋着であった浴衣や、ご自宅に置かれていたソファなどなどを見せていただくことができた。

  さて。

  ご法要を終えて一同稽古場へ。1日かけて衣裳パレード。

  衣裳の点数が多いことは以前触れた通りであるが、衣裳替えが多くなればなるほど、着替えのための持ち時間は反比例して少なくなる。衣裳を替えるだけでなく、時にはヘアやメイクも同時に変えなければならない(そして人格も)。これはもう運動会どころではない。戦争である。
  帝劇や日生劇場などでの大型ミュージカルで、次々と衣裳を変えたキャラクターが登場することは珍しいことではないかも知れない。が、『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』の様な、出演者たった6人のプチ音楽劇でのそれは、見ようによっては大変贅沢であり、そして実にゴージャスである。

  贅沢でゴージャスな体育会系音楽劇『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』(しかもバック・ステージは戦争)をお楽しみに。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月6日(火)

  午前中、『シラノ』のステージング打ち合わせ。

  『シラノ』のステージングは前田清実さんである。『シラノ』には大きなダンスナンバーは無いが、こう言う芝居寄りのミュージカルでも清実さんの存在は決して小さくない。
  清実さんは、実に幅広いジャンルでダンスや、ダンスではなかもしれないけど面白いことを手掛けていらっしゃる。その幅広さが、『シラノ』の世界を大きく広げてくれるのである。

  打ち合わせを終えて『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』の稽古場へ。

  稽古前に、瀬奈さんの衣裳合わせ・パート4。
  今日合わせたのは和服である。瀬奈さんの和服姿は初めて拝見したのであるが、洋装に劣らず、和服の瀬奈さんも実に魅力的。

  稽古は台本順に全場面を当たる。
  『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』は場面数が少なくない。特に1幕では時代がどんどん進んで行くし、進む毎に新しい人物が登場するので、場面場面をじっくり稽古していると前後関係などが良く分からなくなってしまう。
  なので、多少粗削りでも良いから繋がりや流れを把握しよう、と言うのが今日の稽古のテーマであった。
  確かに粗削りではあったが、繋がりや流れは良く分かった。それだけでなく、演じ手にとっては相当しんどい作品であることも改めて分かった。始まってしまったら、これはもう運動会である。

  体育会系音楽劇『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』をお楽しみに。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月5日(月)

  一昨日録音した音楽が上がって来た。

  今まではピアノの音色だけで稽古して来たのだが、ピアノだけでも様々な表情を見せてくれていた音楽が、様々な楽器が加わって更にリッチにゴージャスになった。江草啓太さんのアレンジも素晴らしい。
  ある楽曲ではオリジナルのアレンジに敬意が表され、また、ある楽曲では新たな解釈の新アレンジが施され、懐かしかったり新鮮だったり、贅沢この上ない。
  流行りの言葉で言えば、『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』は、越路さんの生きた世界をリブート、或いは再定義する音楽劇である。

  さて、その上がって来た音楽を使って、今日は1幕、2幕から稽古量が不足していそうな場面を稽古。
  早いもので、稽古場で過ごす日々は残り1週間を切った。来週の今日には劇場入りである。今週もやらなければいけないことが目白押しだが、残り時間を大切に使って良い形で初日を迎えたい。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月4日(日)

  1幕をおさらい。

  11月1日のブログに記した様に、1幕のことは皆さん本当に忘れているんじゃないか、と少々不安な気持ちで稽古を始めたのだが、それは杞憂であった。
  杞憂どころか、シーン・チェンジなどのスタッフ・ワークが整理され、ドラマもどこへ向かおうとしているのかが明確になり、むしろ手応え十分な1幕であった。

  今日は稽古場に「謎のサンバ隊」が出没した。「イ・チ・マ・ク・サ・ン・バッ!  1幕3場!」と叫びながら軽快にサンバステップを踏む、異常にテンションの高い集団である。
  その雄姿を記録した宇野まり絵さんのブログはこちらから。

  稽古後は、昨日のオーディションの続きへ急行。コール・バックの皆さん、今日もありがとうございました。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月3日(土)

  今日は稽古は無し。早稲田のアバコ・クリエイティブ・スタジオで終日、音楽の録音。

  ……なのだが、私は別件。来年秋に上演されるミュージカルのための、アンサンブルの皆さんのオーディションへ。
  まだ情報公開前なので詳細に触れる訳には行かないのだが、参加してくださった皆さん、ありがとうございました。そしてお疲れさまでした。皆さんが流した汗と笑顔は(たとえ、どんなにえ引きつっていたとしても)しっかりと受け取めました。

  で……。

  音楽録音の方は順調に進んだのだろうか?  順調だったのであれば良いのだが。
  その音を早く稽古場で聞いてみたくて、うずうずしている。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

11月1日(木)

  稽古前に大澄さんと宇野さんの衣裳合わせ。

  大澄さんはスーツが実に良く似合う。姿勢が美しいからであろう。「小林一三さん」役でソフト帽をかぶりステッキを手に現れた時にはこちらが姿勢を正してしまった。私も東宝の人間のひとりなので。
  宇野さんはキャストの中で衣裳の点数が一番少ない。出番が少ない訳ではない。役が少ないのでもない。……どう言うことでしょう?

  稽古は2幕のラストを作る。その後、2幕をおさらい。

  立ち稽古開始から10日余りで、何はともあれ全場面を当たった。膨大な台詞と、歌と、目まぐるしく変わる役柄とを思えば、とても順調であったと思う。
  と言っても、もちろん当たり終えただけで、それが手の内に入った訳ではない。斉藤由貴さんは「2幕をやったら1幕を全部忘れちゃった」とおっしゃっていたが、他のキャストの皆さんも概ね同様だろうと思われる。

  残り時間を有意義に過ごして、『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』を大勢の記憶に残る作品にしたい。

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『Chanson de 越路吹雪/ラストダンス』通信

10月31日(水)

  稽古前に斉藤由貴さんの衣裳合わせ。

  越路吹雪さんの衣裳がひたすら華やかで派手であるとすれば、岩谷時子さんのそれは地味で慎ましい。お2人の個性や役割はコインの表と裏の様に異なるが、だからこそ、それぞれが唯一無二の存在であり続けることができたのだろう。斉藤さんの衣裳合わせを眺めながら、改めてそんなことを考えた。
  斉藤さんと言えば、オフィシャルブログにこんな書き込みをされている。1年振りの書き込みだそうであるが、「その2」はあるんでしょうね?

  稽古は2幕を抜粋しておさらい。

  台詞や歌や段取りや……覚えることが膨大でキャストの皆さんは悪戦苦闘している。が、誰かがとちったり、やろうとしたことが不発だったりすると、一斉にツッコミが入る前向きさは失われていない。
  時にはそれが「花緑っ!」「賢也っ!」「哲也っ!」と、大向う(おおむこう)の掛け声の様になったりもするのだが、こうなると、最早ツッコミだかなんだかよく分からない。

  相当楽しい稽古場であることは間違いない。

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