4月14日(土)
愛知県芸術劇場へ。
キャパシティ2500の大ホールは、紛れも無く、日本の『ジキル&ハイド』史上、最大の会場である。梅田芸術劇場のメインホールも空間としてはかなり大きな部類であったが、愛知は梅田を遥かに凌ぐ。客席は5階席まであるのである。
客席だけではない。舞台空間もどこよりも広大である。但し、アクティング・エリアは日生、梅田、愛知と共通に設定している。
私は今までこの劇場を訪れる機会が無かった。なので今回が初訪問である。
訪問前の想像では、空間が無駄に大き過ぎるのではないか、とか、4階席・5階席は遠過ぎるのではないか、或いは、オペラの為に建てられた劇場なのでホールの残響が長過ぎるのではないか、などと危惧していたのだが、全ては杞憂であった。
この劇場が持つスケール感と華やぎが、『ジキル&ハイド』のそれらと見事にマッチして、思いもよらぬ相乗効果を挙げてくれるのである。
サウンド・デザイナーの山本さんとマエストロ・塩田さんは、オーケストラの響きをデザインし直した。ホールの響きの良さと相まって、聞こえてくる音楽のスケールも格段に大きくなっている。塩田さんによれば、上手舞台袖に作られたピット内の条件も、どこよりも良いらしい。
石丸幹二さんも、ここは自分の声が届いていることが分かるので安心して歌える、とおっしゃっていた。つまり、キャストにとってもスタッフにとっても、ここはストレスの少ない、本来やるべきことだけに集中していれば良い、最良の劇場なのである。
今日は、2階席(と言う名称だが、通常の劇場でイメージすれば1階席のやや後方、)の最前列、PA卓のすぐ後ろの席から観たのだが、我々が意図したことの全てが見え、全てが聞こえて来た。キャストの歌も演技も今までに無く安定している。
既に千穐楽目前で、キャストの表現もスタッフ・ワークも、共に成熟して来たことの表れでもあるだろう。大阪後のしばしの休息も効いているかもしれない。
が、舞台上の環境や諸条件が演じ手にとってすこぶる良いことが最大の要因の様に私には感じられた。
今日を観ることができて、私は本当に嬉しかった。我々が目指した『ジキル&ハイド』の理想の形がそこにあったからである。
と同時に、舞台の難しさを今更の様に痛感した。いつご覧頂いても、今日と同程度のパフォーマンスをご覧いただくことが何故容易ではないのか。その実現のために演劇界が取り組まなければならないことは余りにも多い。
さて、明日は本当の千穐楽である。
観ようか止そうか迷っている方、観ないと一生後悔することになりますよ。
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