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2010年1月の記事

『レベッカ』通信

1月30日(土)

  1幕4場、5場をさらった後、6場、7場、8場を稽古。

  「マンダレイ」と言うのは、「イギリスのコーンウォール地方にある」とされる、マキシムの住む広大な屋敷の名前である。原作小説にも登場するが、これは架空の名前である。『風と共に去りぬ』の主人公スカーレット・オハラが住む土地「タラ」が架空の名前である様に。
  原作者ダフネ・デュ・モーリアは1907年にロンドンで生まれだが、子供のころに訪れたコーンウォールが気に入り、1920年代にコーンウォールに移り住んだ。マンダレイにはモデルとなった屋敷があり、デュ・モーリアが住んだフォーイの近くにある「メナビリー」と言う屋敷がそれだと言う。

  さて、幸せ一杯でマンダレイにやって来た「わたし」だったが、ここでの暮らしは右も左も分からぬことばかりであった。お屋敷の女主人の役割、使用人たちとの接し方……。  何よりも「わたし」を不安にさせたのは家政婦頭のミセス・ダンヴァースの存在であった。
  そんなある日、いつもは優しく物静かなマキシムが突然激昂し……。

  『レベッカ』のことを書こうとすると「……」が多くなるなあ。

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『レベッカ』通信

1月29日(金)

  1幕4場、5場を稽古。

  昨日まで稽古していた場面の舞台は、風光明美な地中海沿岸のリゾート地モンテカルロであった。モンテカルロでマキシム・ド・ウィンターにプロポーズされた「わたし」は、イギリスのコーンウォール地方にあるマキシムの屋敷「マンダレイ」へと向かうことになる。
  1幕4場はその大邸宅に「わたし」とマキシムが到着した場面。マンダレイでは大勢の使用人、屋敷の管理人であるフランク・クロウリー、そして家政婦頭のミセス・ダンヴァースが2人を出迎える。『レベッカ』は、いよいよここからが本筋である。物語はここからぐっと怖くなる。

  1幕4場はマンダレイの玄関ホール。
  今回はマンダレイの舞台美術も一新されるのだが、ストーリーや人物像が変わる訳ではないので、それぞれの場面で起こる出来事は当然ながら変わらない。ただし、大勢の使用人たちのステージングなどは新たに作り直している。モンテカルロのホテル場面がそうであった様に。
  この場面で登場する最も重要な人物はミセス・ダンヴァースである。ミセス・ダンヴァースは、1年ほど前にヨットの事故で亡くなったマキシムの先妻・レベッカと一緒にマンダレイにやって来た。まだレベッカがが少女だった頃からレベッカの世話をしてきた人物である。
  このミセス・ダンヴァースを初演から演じているのは、ご存じの通りシルビア・グラブさんである。シルビアさんはこの役で菊田一夫演劇賞を受賞された。正に「はまり役」と言っていいと思う。そして今回から涼風真世さんが、もうひとりのミセス・ダンヴァースとしてキャストに加わった。
  涼風さんのミセス・ダンヴァースはものすごく怖い。シルビアさんのミセス・ダンヴァースもものすごく怖いのだが、その怖さとは違った怖さが涼風さんのダンヴァースにはある。シルビアさん演じるダンヴァースの怖さが「ドライな怖さ」であるとしたら、涼風さんのそれは「ウェット」である。

  その「怖さ」の違いを劇場で見比べてみて欲しい。

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『レベッカ』通信

1月28日(木)

  1幕3場を稽古。その後、1幕1場、2場をおさらい。更にその後、ヴォーカル稽古。

  1幕3場は、「わたし」の雇い主ヴァン・ホッパー夫人の気まぐれで、「わたし」が急にモンテカルロを離れなければならなくなった場面である。数日の間にマキシムととても親しくなっていた「わたし」は、マキシムに会って何とかそのことを伝えようと試みるが……。

  一度手掛けた作品を演出を変えて再演する時は、何だかとても奇妙な感覚に襲われる。初演を作っていた時の様々な感情がふと蘇ったり、新たに作った手順と前回の手順を混同したり……。
  今回の「大劇場ヴァージョン」が身体の中に定着するまで、当分はこんな感覚が続くのであろうが、これは結構気持ちが悪い。

  明日はいよいよマンダレイへ。

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『レベッカ』通信

1月27日(水)

  立ち稽古始まる。

  プロローグを後回しにして、1幕1場、2場を稽古。
  1幕1場はモンテカルロにある高級ホテルのロビー。主人公「わたし」が、ヨットの事故で愛する妻を失ったイギリスの富豪ジョージ・フォルテスキュー・マキシミリアン・ド・ウィンターと出会う場面である。
  初演の立ち稽古1日目もこの場面からであった。その日のブログ(こちら)を読み返してみたら、今日書こうと思ったのとまったく同じことが書いてあった。つまり、今日も大いに時間が掛かったのである。
  時間が掛かったのには理由がある。今回は舞台美術が一新されているため、ホテルのロビーの構造も前回通りではない。ロビーを回遊するゲストたちの動線(ミザンセーヌもステージングも)もゼロからやり直しなのである。

  初演の立ち稽古1日目と違うことは、今回は既に広い稽古場で稽古ができている、と言うことである。「広い」とは言っても、初演の時に使用したのと同じ稽古場なので、クリエには広いが、帝劇にはちょっと狭い。今はまだ良いが、やがてオーケストラが入って来たら大変なことになるかも知れない。

  劇場が大きくなったのに合わせて稽古場も大きくしておけば良かった。

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千田是也賞

1月26日(火)

  東京プリンスホテルにて千田是也賞の授賞式

  千田是也さんは劇団俳優座の創設者のひとりで、劇団代表を長年に渡って務め、俳優として、そして演出家としても日本演劇史に大きな足跡を残された方である。
  その千田是也さんのお名前を冠した賞が千田是也賞で、「該当年に目覚ましい活躍をした中堅から新人までの演出家1人を表彰」する賞である。
  その12回目、2009年度の受賞者として私が選ばれた。対象作品は『ミュージカル「シラノ」』と『ラ・カージュ・オ・フォール』であった。

  千田是也賞の授賞式は毎日芸術賞の中の一部門として行われる。
  毎日芸術賞は毎日新聞社が同社の文化事業の最も上位に位置付けている権威ある賞で、50年を超える歴史を持っている。受賞者も文学、音楽、建築、美術……など、様々なジャンルから選出されているので、壇上も会場もどちらを向いても大勢の文化人で溢れている。
  菊田一夫演劇賞や読売演劇賞などでも授賞式は盛大に行われるが、会場にいらっしゃる方の殆んどは演劇関係者である。気心が知れている方も多いし、会場の雰囲気も寛いだものであることが多い。
  が、今日は……。

  大いに緊張した1日でした。

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『レベッカ』通信

1月25日(月)

  東京會館にて『レベッカ』名古屋・東京・大阪  3大都市連続上演の製作発表(速報はこちらから)。

  ミュージカル『レベッカ』については今更説明するまでもないと思うが、ミヒャエル・クンツェ氏とシルヴェスター・リーヴァイ氏が手掛けたロマンティック・ミステリーである。日本初演は2008年の3~5月で、シアタークリエのオープニング・シリーズの第3弾としての上演であった。
  今回の再演では劇場のサイズが一気に大きくなる。初演では、シアタークリエのコンパクトなサイズを生かして小劇場スタイルで演出したのだが、今回はその演出とは異なる大劇場版となる。

  『レベッカ』は、ミステリーであるという作品の性格上、作品の内容についてここであまり触れる訳にはいかない。初演の時も、ブログを書く時にそのことで大いに苦労した(初演時のブログはこちらから)。今回も、ミステリーとしての興味を失わない範囲で、日々のことを綴って行きたいと思う。

  さて、製作発表の後は稽古場に移動して顔寄せと読み合わせ。
  歌稽古は既に先々週よりスタートしていたので、今日の読み合わせも「歌入り」である。ミュージカルの読み合わせでミュージカル・ナンバーを割愛したら、そもそも読み合わせをやる意味がない。
  今回の再演では初演メンバーの殆んどが続投している。そのせいもあってか、今日はとても完成度の高い読み合わせであった。明後日から始まる立ち稽古を、このレベルから始められるのはとてもありがたい。

  私自身、開幕が待ち遠しくなった。

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全公演終了! 『パイレート・クイーン』

1月11日(月)

  梅田芸術劇場にて『パイレート・クイーン』千穐楽。ご観劇下さった皆さん、ありがとうございました。キャスト&スタッフの皆さん、お疲れ様でした。

  『パイレート・クイーン』のことを知ったのは『竜馬の妻とその夫と愛人』のニューヨーク公演の時であった(こちらの日記参照)。その時は、よもや自分が演出することになろうとは夢にも思わなかった。
  日本での上演が決定し、私に演出の依頼があったのは2年前の今頃だったと思う。クリエイティブ・チームを決めて準備をスタートし、主要キャストの選定、アンサンブルの皆さんのオーディション(こちらを参照)、2009年の6月からはアイリッシュ・ダンスのワークショップが始まり、製作発表が行われたのが夏(こちら)、そして秋口から本稽古に入った。

  どんなミュージカルも、多くの時間と沢山の人々の熱意とで出来上がる。『パイレート・クイーン』も例外ではない。

  「自分で演出した作品で好きな作品は何ですか?」と聞かれることが多々あるのだが、芝居作りとは「子育て」みたいな作業である。親にしてみればどの子も愛おしいのである。
  が、やはり直近のものに一番愛着がある。だから今は『パイレート・クイーン』が愛おしい。やがて時間の経過と共にその作品が入れ替わって行く。春が来る頃には『レベッカ』が一番愛おしくなっているだろう。

  ではまた。劇場で!

 

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『パイレート・クイーン』大阪初日!

1月1日(金)

  謹賀新年。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

  さて、『パイレート・クイーン』大阪公演の初日である。ほぼ満席の場内には着物姿のお客様もちらほら。梅田芸術劇場メインホールはお正月らしい華やかさに溢れていた。
  開演は13時30分。オーケストラのチューニングと共に場内が暗くなる。アイルランドと英国の旗が風になびき、ひとりのホイッスラーが現れると、そこはもう『パイレート・クイーン』の世界であった。

  お正月らしかったことは、幕間休憩に抽選会が行われたこと、そしてカーテンコールで出演者6名の挨拶があったことであろう。なにはともあれ、大阪のお客様のとても温かい拍手に包まれて、『パイレート・クイーン』は無事に初日の幕を下ろすことができた。

  『パイレート・クイーン』は1月11日まで上演中。お見逃しなく!

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