日藝 → 東宝MA
10月1日(木)
午前中は日藝所沢。
先週に引き続き、ある芝居のワンシーンを「30分の持ち時間の中で演出する」課題を行なう。
これはページ数にして10ページ、登場人物2名の、ある芝居の発端部分なのだが、このささやかなシーンをどう解釈して、それをどのように実行するか、演出に名乗りを上げた生徒ひとりひとりの個性が見えて私は飽きることがなかった。
これは何よりも「対俳優」に関する訓練である。演出家の仕事領域は多岐に渡るが、その中で最も大きな比重を占めるのは「俳優との作業」であろう。演出家は自分のイメージをどうすれば他者に伝えられるのか、演出家が求めるものはどのようにすれば獲得できるのか、それを疑似体験することから「演出」について考察して行こう、と言う試みでもある。
午後は東宝ミュージカルアカデミーの稽古場へ。
今日、明日と4期生の試演会が行われており、それを観る。
演目は永井荷風氏の小説を菊田一夫氏が劇化した『濹東奇譚』で、これは1期生、2期生、3期生の時も取り上げた。『濹東奇譚』は、若い俳優たちが取り組むには大変有益な戯曲だと思う。現代口語とは異なるが内容は容易に理解可能な台詞、市井の人々の日常の情景と、その人たちを襲う過酷な運命……。
つまり、登場人物の喜怒哀楽を俳優自身の感情から導き出すことと、昭和初期の玉の井に暮らした人々をかっちりと造形することの2つが同時に求められるのである。
指導は例年同様、山賀教弘先生である。何はともあれ、お疲れ様である。
図らずも今日は、アラトゥ(なんて言葉があるのか? 「20歳前後の人々」の意のつもり)が演劇を学ぶ2つの学校を掛け持ちした。彼ら・彼女たちに伝えたいこと、求めたいものは山ほどある。何よりも、芝居がやりたいことであるならば本気でやって欲しい。
が、彼ら・彼女たちから私が教わることもまた無数にある。今日も彼ら・彼女たちに感謝。
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