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2009年4月の記事

『シラノ』通信

4月29日(水)

  2回目のオケ付き通し稽古。

  「オケ付きで通す」と言うこともあって、今日の稽古場にはいつもより多くのギャラリーが見受けられた(公演関係者です。念のため)。それらの人々の反応から推測するに、『シラノ』の仕上がりはどうやら悪くはなさそうだ。
  もちろん、自分では最良の『シラノ・ド・ベルジュラック』だと思って稽古しているのだが、「自分でそう感じている」ということと「客観的な仕上がり」はまた別問題な訳で。既にひと月半も稽古していると、中々客観的には作品を観られなくもなっているので、今日のギャラリーの反応にはひと安心。胸を撫で下ろした。

  明日は遂に稽古場最終日。3度目にして最後のオケ付き通し。

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『シラノ』通信

4月28日(火)

  午前中は東宝ミュージカルアカデミー、午後は『シラノ』。両者は同じ稽古場ビルのフロア違いのスタジオなので楽チンである。が、今日は12時間以上ここにいた。

  さて『シラノ』はまずはオケ合わせ、昨日の続き。
  『シラノ』は「全編が歌で進行する」と言うタイプの作品ではない。ミュージカル・ナンバーの合間には台詞だけの部分も結構ある。そう言う意味ではオケ合わせの物量はそれほどでもないのだが、テンポの揺れ方が繊細だったり、舞台上と指揮者のコンタクトが困難であったりなどで、オケ合わせには思いの他時間がかかった。

  予定時刻を1時間ほど超過しはしたが、オケ合わせ終了後、オケ付き通し稽古スタート。
  因みに『シラノ』のオーケストラは……

Violin1、2
Viola
Cello
Flute
Oboe
Clarinet1、2
Trumpet
Trombone
Horn1、2
Drum
Percussion
Bass
Keyboard1、2

  の17名である。

  明日もオケ付き通し。劇場入りが近づいて来た。

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『シラノ』通信

4月27日(月)

  オーケストラがやって来た!

  と言う訳で、オーケストラの演奏と出演者の歌を合わせる、通称「オケ合わせ」。
  音楽監督の八幡茂さんが編曲してくださった、世界中でまだ誰も聞いたことの無い、オーケストラによる『シラノ』である。音楽の美しさ、音楽の力強さが一層輝きを増したように感じられる。
  以前にも触れたが、『シラノ』では劇場のオーケストラ・ピットは使用しない。なので客席最前列から舞台までは目と鼻の先である。今回、オーケストラは舞台上、セットの裏側の客席からは見えない場所で演奏することになっている。と言う事は、舞台から指揮者は見えず、指揮者からも舞台は見えない、と言うことで、これが双方にとって様々な困難を引き起こす。
  もちろんビデオカメラとモニターが双方に配置されていて、間接的にはお互いを視認できるのだが、直接コミュニケートできるのとではかなり条件が異なる。なので今日は、そのことにも気を配りながら、時間をかけて丁寧にオケ合わせが行われた。

  明日も引き続きオケ合わせ。その後いよいよオケ付き通し。

  お知らせ。『ミー&マイガール』公式ブログがオープン。覗いてみてください。

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『ミー&マイガール』通信

4月26日(日)

  『シラノ』の稽古は休み。なので『ミー&マイガール』の稽古場へ。

  今日のメニューはオープニングのナンバー「ヘアフォードの週末」のステージングであった。
  「週末のロンドンはテニスの試合も競馬も無いから退屈だ」と言うので、上流階級の人々がロンドン郊外のヘアフォードへ繰り出して行く楽しいナンバーである。
  ヘアフォードにはヘアフォード伯爵のお屋敷(カントリー・ハウス)がある。ヘアフォード家はイギリスで最も由緒正しい貴族の家系のひとつ。そのヘアフォード家には悩みがあって、それは、この由緒正しい家系を受け継ぐ「お世継ぎ」がいないことである。
  その「お世継ぎ」が発見された、と言う報告がヘアフォードにもたらされ、ではそれはどんな男なのか……とゲストや勤め人たちが大騒ぎするまでが「ヘアフォードの週末」の中で描かれる。華やかなオーヴァーチュアに続く、4分に及ぶゴージャスなナンバーである。

  今日はヘアフォード家の一員であるジャッキーを演じる貴城けいさんとアンサンブルの皆さんとで、1日掛かりでこのナンバーをステージング。私も束の間のイギリス旅行を楽しんだ。
  明日は再びフランスへ。『シラノ』はオケ合わせである。

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『シラノ』通信

4月25日(土)

  2回目の通し稽古。

  昨日のクリスチャンは浦井健治さんで、今日は中河内雅貴さんであった。それぞれの良さが出たクリスチャンだと思う。浦井さんは育ちの良さであるとか愛情の深さであり、中河内さんは物怖じしない強さであるとか甘さである。
  クリスチャンだけではない。シラノの鹿賀さんは言うまでも無く、朝海ひかるさんのロクサーヌ、鈴木綜馬さんのド・ギッシュ、戸井勝海さんのル・プレ、光枝明彦さんのラグノー等々、それぞれのキャラクターと演じる俳優の個性とが融け合って一層チャーミングになって来た。
  『シラノ』は日々進化しているのである。

  ここでお知らせ。

  脚本・作詞のレスリー・ブリカッスさんと音楽のフランク・ワイルドホーンさんが共に来日され、初日(ワールド・プレミアである)の舞台をご覧くださることになった。恐らく、終演後には舞台に上がってくださるのではないか、と密かに期待している。
  私はブリカッスさんとは『ジキル&ハイド』初演の初日に、ワイルドホーンさんとは『ジキル&ハイド』3演目の初日に(その後『シラノ』のミーティングでも)お目にかかったのだが、お2人揃ってとなると今回が初めてである。特にブリカッスさんとは8年ぶりの再会となるので楽しみもひとしおである。と同時に、私たちの『シラノ』をどう思われるのか、緊張感もひとしおなのであるが。

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『シラノ』通信

4月24日(金)

  1回目の通し稽古。

  ようやくここまで来たか、という思いと、もうそんな時期か、と言う思いが交錯している。
  昨年の5月6日と7日のブログ『シラノ』について触れているが、『シラノ』日本版上演に向けての実作業はあの時からスタートした。それからちょうど1年である。短い準備期間であった様にも感じるが、ずいぶん長かったという気もしないではない。
  それはともかく、こうして『シラノ』が目の前に形となっていることに今日は大きな安堵感を覚えた。もちろん、初日を迎えるまでにはまだまだブラッシュ・アップの作業が必要だが、このカンパニーでならそれもまた充実した、実りの多い作業となるだろう。

  明日はダブルキャストのクリスチャンを交代して再び通し稽古。別稽古場では本日よりオーケストラ・リハーサルが始まっている。

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『シラノ』通信

4月23日(木)

  午前中は日大藝術学部演劇学科へ。午後は『シラノ』の稽古場へ。

  私の受け持ちは所沢校舎なので、都心の稽古場への移動には1時間半~2時間は見ておかないと不安である。早朝都内の自宅を出て、135分間の授業を済ませ、昼過ぎに稽古場に到着した時点でその日のエネルギーの8割は消費済み、な感じである。

  それはともかく、『シラノ』は抜き稽古。

  昨日の1幕通しで見えた課題や稽古不足と思われる部分を再整理して稽古。最後に2幕1場の後半を大幅に手直し。何しろ新作ミュージカルの初演なので、「これだ」と思える形に辿り着くまでには紆余曲折、試行錯誤の連続である。
  手間暇かけて作り上げた場面でも、「何かが上手く行っていない」と言う感覚が拭いきれないことがあったりする。その「何か」がすぐには見つからなかったりもする。悩みに悩んだ末に、もう一度別のやり方を試してみる。

  『シラノ』を少しでも良くしたい一心で、粘れる限りは粘りたい。

 

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『シラノ』通信

4月22日(水)

  昨日できなかった2幕2場をさらった後、1幕を通す。

  随分と色々なことが整理されて、とても見易くなって来たと思う。
  格調高いのに親しみ易い。クスクス笑えるのに涙が溢れて来る。鹿賀さん演じる多面的なシラノ・ド・ベルジュラックのお陰で、そんな『シラノ』が出来上がりつつある。
  稽古後は照明打ち合わせを入念に。今回の照明は、事前の打ち合わせが通常より重要になる。劇場入りするまでに決めておかなければならないこと、用意しなければいけない素材が多いからである。

  話は変わるが、先日の『ダンス オブ ヴァンパイア』記者懇親会の様子が公式ページにUPされている。こちらからどうぞ。

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『シラノ』通信

4月21日(火)

  午前中は東宝ミュージカルアカデミー、午後は『シラノ』の稽古場へ。

  『シラノ』は1幕2場、3場、そして2幕1場をおさらい。
  昨日さらった1幕1場、そして今日のメニュー2幕1場はどちらも大勢の登場人物が舞台上に存在し、それぞれのドラマが同時進行する。こういう場面の稽古にはどうしても時間がかかる。なので、本当は昨日、今日で全場面をさらいたかったのだが、残念ながら時間切れ。大詰めは明日のメニューに。

  話は変わるが、今日は第34回菊田一夫演劇賞の授賞式であった。
  受賞者の内、シルビア・グラブさんへの賞が『レベッカ』の演技に対して贈られたものであった。今年はその他の受賞者も、保坂知寿さん、吉野圭吾さん、玉野和紀さんと、近々ご一緒する方ばかり。
  私はアカデミーと『シラノ』の稽古で残念ながら出席できなかったのだが、受賞者の皆さん、おめでとうございます。

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『ダンス オブ ヴァンパイア』記者懇親会 そして『シラノ』通信

4月20日(月)

  東京會館にて帝劇7~8月公演ダンス オブ ヴァンパイアの記者懇親会。

  今度の週末(4月25日)に7月分のチケット前売りが開始されるのを機に、新聞や雑誌の記者の皆さんと我々とで、通常よりやや長めに設定された質疑応答の機会が持たれたのである。出席者は山口祐一郎さん、石川禅さん、大塚ちひろさん、知念里奈さん、泉見洋平さん、浦井健治さん、そして私であった。
  これから初日が近づくに連れて、今日の模様は色々な所に掲載されて行く筈であるが、早くも本日、「初演の時に大塚さんは、身に着けていたヌーブラを落とした」という記事が速報された模様である。
  そんなアクシデントも含めて、『ダンス オブ ヴァンパイア』が楽しい夏を皆さんにお届けすることを保証する。前回見逃した方も、前回で虜になった方も、夏の帝劇をどうぞお楽しみに。

  懇親会を終えて『シラノ』の稽古場へ。

  一昨日(18日)は臨時の稽古休みであったが、昨日は初めから予定されていた稽古休みであった。休みの間にスタッフの皆さんが、稽古場内の大道具を本番仕様の物に入れ替えてくださった。これで稽古場道具の大半が本番で使用する物になった訳である。
  道具がより具体的になった所で、1幕に戻って1場と2場をおさらい。
  久し振りの1幕なので、細々とした約束事を再確認したり、手順が曖昧だった部分を整理したり、指揮者と音楽的な約束事を再構築したり……、以前と比較すると「より実践に即した稽古」と言う感じになって来た。
  オーケストラが稽古場にやって来るまでの今週1週間が、芝居を進化させる為の残り少ない貴重な時間、と言うことになる。今日・明日の2日間で、1幕、2幕をひと通り当たってしまいたい。それが達成できた暁には、やや乱暴だが、1度通してみたい、と考えている。

  『シラノ』が特集される『プレミアの巣窟』は、明日の深夜(正確には22日の午前2時08分より)に放送予定。見てね。

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『シラノ』通信

4月18日(土)

  稽古は休み。午前中は月刊『ミュージカル』誌の取材を受ける。午後は稽古場にて、照明と舞台美術の双方に関わる打ち合わせとテスト。

  『シラノ』の美術デザイナーは堀尾幸男さん、照明デザイナーは成瀬一裕さんである。
  『シラノ』の為に堀尾さんがデザインした舞台美術は、具体的な、或いは写実的な要素を大胆に排除している。台本に書かれている、または台本から連想される大道具の大半を、堀尾さんは無くしてしまったのである。代わりに1枚のパネル状の壁が常時舞台上に存在している。
  「この壁面をどう活用して行くか」が『シラノ』のビジュアルのハイライトなのだが、それは舞台美術の領域と照明の領域、その双方がオーバーラップする領域の話になって来る。なので今日も、両デザイナーに同席いただいて打ち合わせが持たれたのである。

  今回は本当にきれいな舞台にしたい。そうなるだろうか。

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『シラノ』通信

4月17日(金)

  ラストシーンを作る。

  3月16日に歌稽古が始まり、それからほぼひと月が経過した今日、ザッとではあるが、全場面をひと通り当たり終えた。まずまず順調だと言っても良いだろう。
  明日は2幕をさらう予定だったのだが、昨日、今日と順調に稽古メニューを消化できたので、明日の稽古はお休みすることに。出演者の皆さん、どうかゆっくりと体を休めてください。その代わり台詞は入れてね。

  稽古後、鹿賀さんの衣裳&ヘア&メイク合わせ。
  今日は衣裳や鬘(かつら)に加えて、「鼻」も装着していただいた。実は、今日付けた「鼻」は、チラシやポスターのヤツとは別物である。チラシやポスターの「鼻」は、見方によっては結構格好良い。が、本来シラノの「鼻」は、彼の劣等感、コンプレックスの象徴である筈である。格好良く見えてしまってはストーリー上、都合が悪い。なので、もう少しファニーに見える「鼻」を本番に向けて用意したのである。

  『シラノ』の後は、美術デザイナー・松井るみさんの仕事場へ。パイレート・クイーンの舞台美術打ち合わせ。

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演出実習Ⅱ そして『シラノ』通信

4月16日(木)

  先週の東宝ミュージカルアカデミーに続いて、日本大学藝術学部演劇学科演出コース1年生の授業「演出実習Ⅱ」が始まった。この授業を受け持って5年目、今年も20名ほどの新1年生と対面した。
  本格的な授業は来週からになるが、「演出」と言う、一言では説明の難しい仕事について、今年も学生たちと一緒に考えて行きたい、と思う。ただ……
  アカデミーの38名と合わせて、総勢60名の生徒たちの顔と名前が一致する日は果たして訪れるのだろうか。

  午後は『シラノ』の稽古場へ。2幕2場の前半を作った後、2幕1場をおさらい。

  2幕2場は『シラノ』の最終景である。2幕1場までは1640年の出来事で、2幕2場のみが「その15年後」と言う設定である。舞台はパリのとあるカトリック修道院の中庭。今では元帥にまで上り詰めたド・ギッシュの訪問を受けたロクサーヌは(以下自己規制)。
  ここも大変美しい、そして切ない場面である。「美しい」というのは筋書きのことでもあり、視覚的なイメージのことでもある。そしてラストの名台詞。あの名台詞は私たちの『シラノ』でもあの名台詞である。

  明日はいよいよ大詰めへ。

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『シラノ』通信

4月15日(水)

  2幕1場の後半ブロックを作る。

  今日も色々と試行錯誤を重ねた稽古であった。振付の前田清実さんやアクションの渥美博さん、歌唱指導と音楽監督を兼ねる(そして出演者でもある)林アキラさん、演出助手の小川美也子さん等の発想をお借りしながら、このブロックをどうにかこうにか形にした。
  ミュージカル・ナンバーのサイズを変更したり、エピソードの順番を入れ替えたり……と、『シラノ』の稽古場は、今やオリジナル・ミュージカルを作るのと同等のテンションである。

  明日はいよいよ最終景に突入。ようやく山頂が見えて来た。

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『シラノ』通信

4月14日(火)

  午前中は東宝ミュージカルアカデミーへ。最新のミュージカルをテキストにして、台詞をどう処理するのか、とか、役作りをどう進めるか、などについてレクチャー。

  午後は『シラノ』。2幕1場の真ん中ブロックを作る。

  2幕1場では、その場所にいる人たち全員で共有するストーリーと、シラノを中心とした2~3人だけで交わされるパーソナルな会話が交互に現れる。
  全員で共有している方のストーリーでは、ド・ギッシュ伯爵vsガスコン青年隊の因縁の行方や、刻一刻と迫り来る敵の総攻撃に向かって高まる緊張感、そして戦場に現れた「ある人物」が引き起こす波紋……などが語られる。もう一方のパーソナルな会話では、シラノやクリスチャンの個人的な心情やその変化が綴られて行く。
  両者がある時は別々に、時には密接に絡み合いながら、物語はクライマックスに向かって否が応でも盛り上がって行くのだが、これを舞台上で手際良く処理するのが(私にとっては)案外難しい。
  今日も色々と試行錯誤を繰り返していたのだが、その試行錯誤のプロセスが何よりも楽しい。新しいミュージカルを皆で作っている、と言う実感を抱かせてくれるのである。

  明日は今日の続き。何とか2幕1場の終りまで漕ぎ着けたいが……さて。

  『ミー&マイガール』からはこんなお知らせが届いた。奮ってご応募ください。

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『ミー&マイガール&シラノ』通信

4月13日(月)

  ミー&マイガール稽古スタート。

  『ミー&マイガール』は、1937年にロンドンで初演されたミュージカル・コメディである。『ミー&マイガール』が現在の、私たちの知っている形に整えられたのは1985年のロンドンでのリバイバル時で、この成功によって 『ミー&マイガール』はブロードウェイへ進出、更には日本へも輸入されることになったのである。
  日本での初演は1987年、宝塚歌劇団の月組が行った。以来、繰り返し上演され、歌劇団の財産演目のひとつとなっていることは御承知の通り。そしてご覧頂く東宝版『ミー&マイガール』である。
  東宝版の初演は2003年。唐沢寿明さんのビル&木村佳乃さんのサリーと言う配役で始まった。井上芳雄さん&笹本玲奈さんの登場は2006年で、今回はその時に続く再演となる。

  今日はアンサンブルさんが全員集合。誰をどの場面、どのパートに当てはめるかを睨みつつ、歌稽古、及び振付を開始した。私はその冒頭に顔を出し、抱負の様なものを手短かに述べた。
  このブログの読者には明白なことだが、現在私は『シラノ』の稽古中である。無事に『シラノ』が開幕するまでは、残念ながら私は『シラノ』の人である。何と言っても『シラノ』は新作なので、『ミー&マイガール』チームの皆さんはどうかご理解いただきたい。

  と言う訳で、『ミー&マイガール』の稽古場を後にし『シラノ』の稽古場へ。

  『シラノ』は本日より2幕に突入。2幕1場を3つのブロックに分けた内の最初のブロックを作る。
    2幕1場の舞台は戦場である。シラノやクリスチャンが属するガスコン青年隊は、今では「アラス包囲戦」に参加している。その戦場に思いがけぬ人が現れて(以下自己規制)。
  このブロックには、男女のコーラスが美しい「パリの思い出」、ド・ギッシュの手柄話にシラノが茶々を入れる「名誉のスカーフ」、そしてクリスチャンとシラノの「さよならの手紙」と言う3つのミュージカル・ナンバーがある。

  昨日の予告通り、今日は忙しい一日であった。この忙しさは7月になるまで続きそうである。

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『シラノ』通信

4月12日(日)

  稽古前にプレミアの巣窟の取材を受ける。

  『プレミアの巣窟』は、毎週火曜日の深夜(正しくは水曜の午前2時台)にフジテレビで放送されているエンターテインメント情報番組である。『ザ・ヒットパレード』の時も取材を受けたあの番組である。
  今日は稽古場にもカメラが入っていたので、番組では稽古風景や出演者のコメントも流れるだろう。オンエアには誰かがスタジオにお邪魔するかもしれないらしい。そちらもお楽しみに。

  稽古は1幕をひと通りおさらい。

  まだまだ「段取りをこなしている」域ではあるが、何はともあれ1幕は見えた。本当はこのまま1幕を成熟させたい気持ちも無い訳ではない。が、その誘惑を断ち切って、明日からは2幕の稽古に入ることにする。
  稽古場での稽古は残り3週間を切った。が、このタイミングで、例え荒くでも「1幕が見えている」と言う状況は、新作ミュージカルの稽古としてはとても順調な方だと思う。

  明日は忙しい一日になりそうだ。その理由は明日のブログで。

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『シラノ』通信

4月11日(土)

  クリスチャンの登場シーンを抜き稽古。

  『シラノ』では(当たり前のことではあるが)主人公シラノ・ド・ベルジュラックの視点でストーリーが進行する。が、シラノ以外の人物にもその人物の「ストーリー」がある訳で。ロクサーヌにはロクサーヌの、そしてクリスチャンにはクリスチャンの「ストーリー」がある筈である。
  と言う訳で、今日はクリスチャンの視点で、クリスチャンの「ストーリー」だけを追いかけてみよう、と言う試みであった。その結果見えてくるものは何か?  その見えて来たものが、『シラノ』本編に立ち返った時のクリスチャンにとって「大切にすべきもの」である筈である。

  私たちの仕事は、まずは「台本在りき」である。が、台本を読み込む時に用心しなければいけないのは、先々の展開を先取りして出来事や台詞を解釈して演じて(演出して)しまうことである。
  結末を知っている所為でついそうなってしまうのだが、観客にしてみれば、先の読めてしまうドラマほど興醒めなものはない。

  観客の目の前で、今まさにドラマが進行している。そんな新鮮な『シラノ』でありたいのである。

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『シラノ』通信』 そして下馬二五七さんのこと

4月10日(金)

  顔寄せ。

  稽古は3月16日から始まっているので、もうみんな顔馴染みなんじゃないのか・・・・・・と言うことではなくて、普段は稽古場に登場することのない主催者、劇場関係者、券売や宣伝担当者、マネジメントの方、等々が一堂に会し、いつも稽古場にいる我々を含めて「よろしくお願いします」の交換をしたのであった。
  『シラノ』は、『ジキル&ハイド』に続く東宝・ホリプロ・フジテレビ3社の共同製作作品である。なので、通常の顔寄せよりも参集した人数が多い。数えはしなかったが100人は下らなかっただろう。これほど大勢の人が『シラノ』を成功に導くために力を合わせているのである。何としても良い作品にしなければ、と決意を新たにした。

  稽古は1幕3場をおさらい。

  段取りを付けただけに過ぎなかったシーンが、稽古を繰り返す度に血の通った場面に進化して行く。そのことを実感できた時が芝居作りにおける大きな喜びのひとつなのだが、先週、今週はその喜びの連続であった。
  どの登場人物もキュートでチャーミング、ちょっとお馬鹿で、切なく、そして愛おしい。思わず吹き出してしまう様なシーンの連続なのに、気が付くといつの間にか目頭が熱くなっている。『シラノ』はそんなミュージカルになる筈である。

  稽古後は下馬二五七(しもうまにごしち)さんのお通夜へ。

  下馬さんはとても優しく、そして面倒見の良い俳優さんであった。私の演出作品では『ローマの休日』に出てくださった。山口祐一郎さん扮する新聞記者ジョーのアパートの家主や、ラストシーンの記者会見場面のジャーナリストなどをやっていただいた。
  演出部時代には『エニシング・ゴーズ』で何年もご一緒した。私事だが、その頃結婚した私に、下馬さんは夫婦茶椀を贈って下さった。
  下馬さんはつい先月まで舞台に立っていらしたのだそうだ。斎場の一角には出演作のチラシが何枚も貼られていた。『ローマの休日』も。

  ご冥福をお祈りいたします。

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『シラノ』通信

4月9日(木)

  稽古前に、プログラム向けに鹿賀さんと対談。写真も何枚か撮られる。恥ずかしい……。

  稽古は1幕3場の後半を。これで1幕はひと通り手を付けた。
  以前にも記したが、『シラノ』は1幕が3場面、休憩を挟んで2幕が2場面で、全5場面である。最近のミュージカルとしてはかなり少ない場面数だと言えるが、これはエドモン・ロスタンの原戯曲通りの場面数なのである。裏返せば「1場面1場面が結構長い」と言うことでもある。
  5場面のうち3場面に手を付けた、と言うことは、全体の大よそ60パーセントまでは来た計算になる。残り40パーセント。これまで以上にエネルギーを費やして最高のミュージカルに仕上げたいと思う。

  内容に触れずに書くのは難しいなあ……。

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『シラノ』通信

4月8日(水)

  1幕2場をおさらい。その後、1場のアクションをさらう。

  『シラノ』ではオーケストラ・ピットは使用しない。オーケストラは舞台上の、客席からは見えない場所で演奏することになる。そのお陰で舞台と客席との距離が縮まり、臨場感や劇場内の一体感が増す訳だが、舞台上の出演者や指揮者にとっては喜ばしいことばかりではない。俳優と指揮者間のアイ・コンタクトが封じられてしまうからである。
  「息を合わせる」と言う言葉があるが、ミュージカルでは舞台上の出演者と指揮者、演奏者が「息を合わせる」ことは不可欠である。テンポが一定で変化しない楽曲ならば、テンポ感さえあれば歌い手が演奏に合わせて行くことはそれほど困難ではない。が、ミュージカルの場合、テンポが一定であることはまずあり得ない。
  舞台上では指揮者の姿が映し出されるビデオ・モニターを見、指揮者は舞台が映し出されるビデオ・モニターを見て意思の疎通を図ることになる訳だが、直接目視するのとモニターを通すのとでは情報量が余りにも違い過ぎる。それにモニターでは所詮は一方通行なので、瞬時にお互いが「何が起こっているか」を理解することは不可能に近い。

  今日さらった1場のアクションは(ミュージカルなので当然と言えば当然だが)音楽と同期しながら行われる。今日の稽古では、アクションを組み立てることもさりながら、指揮者とどの様にコミュニケートするかが重要な課題であった。

  ミュージカルは大変だあ!

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『シラノ』通信

4月7日(火)

  午前中は早速東宝ミュージカルアカデミーの授業。

  この授業が全授業のトップバッターになるので、今日は具体的なレッスンには入らずに、アカデミー生としての心構え(例えば「生徒であるという意識を捨てよ」と言う様な話)から始めた。
  アカデミーでのレッスンは来春まで1年間続く。その間、モチベーションを維持し続けることがどれだけ重要なことであるか。1年間、そのモチベーションをどうやって維持すればよいのか……。
  この1年を、本当に価値のある1年にして欲しいと思う。

  午後は『シラノ』へ。

  手を着けていなかった1幕2場の後半を作る。その後、更に遡って、同じく未着手だった1幕2場の中盤を作る。これでようやく1幕が3場の前半まで繋がった。
  1幕2場の後半にはシラノとクリスチャンが意気投合して歌う「完璧な恋人」がある。1幕2場の中盤にはシラノの「独りで」がある。この場面でのシラノは有頂天からどん底へ、再び有頂天へ、と振幅が激しい。でも恋する男子って、そんなところ、あるよねえ。

  稽古後、シアターガイド誌の取材を受ける。この記事は来月発売の6月号に載る……のかな?

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東宝ミュージカルアカデミー 4期生入学式

4月6日(月)

  『シラノ』の稽古は休み。だがいつもの様に稽古場へ。同じ建物の中に東宝ミュージカルアカデミーの稽古場もあるからである。

  4期生は38名。これから1年間、人生を左右するレッスンをみっちりと積むのである。
  ミュージカル俳優にとってレッスンは不可欠である。レッスンは、アカデミーを修了したってミュージカルを続ける限り付いて回る。だが、今アカデミーで学ぶレッスンと将来夢が叶った時のレッスンとでは、多少その目的が異なるであろう。
  今はとにかく身体の基本を作ることが急務である。受講生の中には今までも厳しいレッスンを続けて来た者もいるだろうが、大半は「ダンスは未経験」であったり「本格的に歌うのは初めて」であったり「演技はまったくやったことがない」であったりである。
  ミュージカル俳優として成長するために大切なのは、まずは自分の弱点を知ることである。弱点を知り、それをどうやって潰して行くかである。「どうやって潰して行くか」が、すなわち今必要なレッスンである。

  受講生ひとりひとりの夢が叶うことを心から祈っている。皆の夢が叶うことは日本のミュージカルを進歩させることに他ならないのだから。

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『シラノ』他、通信

4月5日(日)

  まだ手を着けていない1幕2場の後半を飛ばして、先に1幕3場の前半を稽古。

  1幕3場は小さな広場に面したロクサーヌの家の前。この場面には『ロミオとジュリエット』と双璧の、有名なバルコニー・シークェンスがある。
  ……ストーリーに触れずに書くことが段々と難しくなって来た。が、ここもとても素敵な場面であることは保証する。
  ここにはロクサーヌとド・ギッシュのナンバー「決して戦地に行かせない」があり、ロクサーヌとクリスチャンのデュエット「これが恋」、そしてシラノが真情を吐露する「俺の言葉でくちづけを」がある。
  ここには恋する男たち・・・・・・シラノ、クリスチャン、ド・ギッシュが交代で登場する。「恋は盲目」とは良く言ったもので、恋に夢中の男たちは皆周りのことが全く見えていない。そして情けないほど子供っぽい。シラノもクリスチャンもド・ギッシュも、そう言う意味では皆私たちと同じ種類の人間なのである。

  稽古後は帝劇に移動して『ダンス  オブ  ヴァンパイア』の打ち合わせ。再演に向けて見直すべき事柄や方向性をメイン・スタッフ間で再確認&共有。

  そして『ザ・ヒットパレード~ショウと私を愛した夫~』大阪公演千穐楽。『ザ・ヒットパレード』は、これで全ての行程を終了した。キャスト&スタッフの皆さん、お疲れ様でした。ご来場くださった皆さん、心より御礼申し上げます。

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『シラノ』通信

4月4日(土)

  1幕2場の続きを作る。

  昨日ステージングした「料理人で詩人」後の場面を立ち稽古。ラグノーの店にシラノがやって来て、そこにロクサーヌも現れて……。
  この場面ではシラノとロクサーヌのデュエット「ベルジュラックの夏」とロクサーヌのナンバー「運命の人」が歌われる。因みに、ベルジュラックとはフランス・ガスコーニュ地方の地名で、シラノはその地方の出身だ、と言う設定なのである。

  稽古の後半では更にその続き、ロクサーヌが帰ってガスコン青年隊が登場する場面を稽古。

  「ガスコン」とはガスコーニュ地方生まれの、と言う意味で、この地方の出身者たちは血気盛ん、勇猛果敢な性質な者が多かったらしい。日本で言えば「薩摩隼人」みたいなものであろう。その性質は、誰よりもシラノに色濃く表れている。
  ここには青年隊士たちによるナンバー「我らガスコン」があり、男声だけの迫力あるコーラスを聞くことができる。

  『シラノ』では次々と毛色の異なる楽曲が登場し飽きさせない。物語の方も楽曲同様、目まぐるしく移り変わって行くのである。

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『シラノ』通信

4月3日(金)

  1幕2場に入る。

  1幕2場はラグノーの料理屋兼菓子屋の店内である。
  光枝明彦さん演じるラグノーは料理人だが、多くの売れない詩人のパトロンでもあり、自身も詩人気取りの男である。加えて、詩人シラノの崇拝者でもある。
  場面は1幕1場の翌朝、開店準備に忙しいラグノーの店にシラノが現れて(以下自己規制)。
  今日はこの場面の冒頭にあるミュージカル・ナンバー「料理人で詩人」をステージング。タイトルの「料理人」で「詩人」とは店の主人・ラグノーのことである。
  このナンバーは、ラグノーが店の女の子たちを従えて歌う楽しい場面である。前田清実さんの手際の良い稽古場さばきで、その楽しさが見る見る形になって行く。

  ステージングの後は1幕1場前半のおさらい。オープニングが良い形になって来た。

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『シラノ』通信

4月2日(木)

  1幕1場の後半を作る。

  3月16日に始まった『シラノ』の稽古。稽古場を引っ越すごとにスペースが広くなって行き、3か所目のここでは遂に稽古用の大道具が建て込まれた。ここは広いだけではなく高いので(天井が。料金が、ではない)、2階部分もしっかり組み立てられている。これで有名なバルコニー・シークェンスの稽古も一安心。

  さて、今日稽古した1幕1場の後半は、前半とは打って変わって少人数でストーリーが進んで行く。シラノ・ド・ベルジュラックと言う異様な鼻の持ち主の、繊細でロマンティックな素顔が見えてくる場面である。
  ここにはミュージカル・ナンバーが2つある。シラノの「ロクサーヌ」と、シラノと仲間たちの「相手は百人」である。前後の芝居部分も含め、今日はこの2つのナンバーをステージング。
  『シラノ』では、ステージングはダンスであるよりも芝居の延長と捉えよう、と言うのが振付の前田清実さんと私の了解事項である。なのでここでも前田さんは、それぞれのナンバーを必要最小限の動きで構築して行く。最小限だが、清実さんの作り出す動きは最大の効果を発揮する。その動きのお陰で、登場人物の個性や、そのナンバーがどこに向かって行くのか、などがとてもはっきりと見えてくるのである。

  何よりも、ミュージカルとしての楽しさが倍加するのが素晴らしい。

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『ザ・ヒットパレード』大阪初日

4月1日(水)

  『シラノ』は稽古場が再度引っ越しのため稽古OFF。私は大阪のシアターBRAVA!へ。

  初めてのシアターBRAVA!である。大阪には演出部だった時代から何度も来ているが、梅田か上本町での仕事が殆どだった。なので、大阪城エリアは初めてである。
  JR大阪環状線の大阪城公園駅を降りると、何やら大勢の人でごった返している。『ザ・ヒットパレード』に詰め掛けるお客様がこんなに!?  とは思わなかったが、そうですか、大阪城ホールはここだったんですね。
  水上バス乗り場の脇を抜け、寝屋川を渡り、シアターBRAVA!へ。JRを降りる頃から雲行きが怪しくなり、風も強く、雨も降り出した。大阪城公園の桜もこれでは散ってしまうだろう。生憎な天気となったが、この雨は開場時刻までには上がった。

  大阪のお客様は暖かかった。面白いと感じれば声を出して笑い、そして至る所で拍手をしてくださった。出演者たちはル・テアトル銀座での反応との違いに、喜んだり戸惑ったりしていた。
  私は2階席から観劇した。シアターBRAVA!の2階席はル・テアトル銀座にはなかった距離と角度なので、どんな風に見えるのか、何が見えるのか、それを知っておきたかったのである。
  想像以上に舞台面が良く見えて、照明の変化がとても美しかった。2幕の「Get Back Good Days」の時のコタツの天板がとても幻想的に見えたのは新発見であった。同時に、大勢のフォーメーションが少しでもずれると、それもはっきりと分かる。何かと収穫の多い観劇であった。

  終演後、劇場を出ると大阪の空に虹が架かっていた。帰りの駅弁は何にしようかと考えながら帰路についた。

  『ザ・ヒットパレード』大阪公演は4月5日まで。お見逃しなく!

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『シラノ』通信

3月31日(火)

  「幕を上げろ」に続く場面を作る。

  ミュージカル『シラノ』は、ほぼロスタンの戯曲通りにストーリーが展開する。
  1幕1場の舞台はパリの劇場「ブルゴーニュ座」。バルタザール・バロー作の芝居『クロリーズ』初日の夜、と言う設定である。ここには芝居好きの老若男女が、貴族から平民まで、軍人からスリまで、大勢集まって異様な興奮に包まれている。人々がなぜ興奮しているのか、と言うと(以下、ネタバレを避けるため自己規制)。
  そして我らが主人公、剣豪にして詩人、巨大な鼻の持ち主、シラノが登場、『クロリーズ』の主演俳優である(以下自己規制)。

  このブログではネタバレを避けるため、いつも内容の詳細には触れないことにしている。どうしても知りたい方は原作戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』をどうぞ。
  光文社からは昨年、渡辺守章さんによる新訳が出たし(とても読み易い)、岩波文庫には長年親しまれた辰野隆さん、鈴木信太郎さん共訳の物がある。

  今日の稽古ではアクションの渥美博さんが大活躍であった。詳しいことには触れないが、剣豪の話、だからね。

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