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2008年5月の記事

『シラノ』

5月30日(金)

  ミュージカル『シラノ』の音楽打ち合わせ、2回目。

  前回は1幕の整理だけで終わっていたので、今日は2幕を。
  膨大なエピソードのどこにフォーカスを当てて行くのか。音楽的なハイライトをどこに持って行くのか。そして、ミュージカル・ナンバーの前後を音楽的にはどう処理するのか。
  音楽監督の塩田さんと今取り組んでいるのはそういう部分である。
  まだ全編の音楽スコアが存在せず、ナンバーのスコアも暫定的なものなので、稽古ピアノの國井さんと種村さんにも付き合って貰いながら、ああでもない、こうでもない、と試行錯誤しているのである。

  久しぶりに、ミュージカルをゼロから生み出す喜び(と苦しみ?)を味わっている。

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演出実習Ⅱ

5月29日(木)

  日大芸術学部所沢校舎へ。

  木曜定例の「演出実習Ⅱ」である。
  学生たちに持参させた公演プログラムのスタッフ欄から、舞台を作り上げるために関わっている様々な肩書の人々をピックアップしてみる。その「様々な肩書」の人々との関係こそが、演出家が芝居作るプロセスだからである。
  そこに記されている「様々な肩書の人々」はどんな仕事をする人たちなのか。その人たちに対して演出家はどう接するのか。
  次週以降で、その事に具体的に触れて行きたいと思う。

  授業後は学生食堂へ。学生たちと昼食を共にし、だべる。

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恋愛喜劇『青猫物語』

5月28日(水)

  東宝演劇部へ。恋愛喜劇『青猫物語』の打ち合わせ。

  『青猫物語』はシアタークリエの9月公演である。
  この公演は「北村有起哉さんと黒谷友香さんの初顔合わせ」であるとか、「きたろうさんから橋本淳さんに至る多彩なキャスト」であるとか、「シアタークリエのオープニング『恐れを知らぬ川上音二郎一座』に続くシチュエーション・コメディ」であるとか・・・、様々な切り口で語ることができるだろう。
  かつての小劇場界的な興味で見てみれば、「M.O.P.のマキノノゾミさんの本を、キャラメルボックス(近江谷太朗さん)、カクスコ(岸博之さん)、第三舞台(小須田康人さん、山下裕子さん)の役者が集まって、東京サンシャインボーイズの演出家(私です)の演出で上演する」と言うことになるし、現在の小劇場界的には「モダンスイマーズ(小椋毅さん)とペテカン(本田誠人さん、羽柴真希さん)に何故かNLT(佐藤淳さん)が加わって・・・」となろう。
  後は「ミュージカル界的」にも見ることができて「北村岳子さん、富田麻帆さん、石田佳名子さん、岡村さやかさん・・・」と言うことにもなるのだが、別に無理に「××的」に見る必要も無いと言えば無い。

  『青猫物語』は、そもそもは劇団M.O.P.の第26回公演としてマキノノゾミさんの作・演出で1994年に初演された作品である。M.O.P.では2年後に再演されているが、それから12年を経た今年、M.O.P.とはまた違ったスタイルでこの傑作コメディをリバイバル上演しよう、と言うのが今回のシアタークリエ版『青猫物語』なのである。

  何はともあれ、スピーディでちょっぴり切なくて、とびきりキュートなコメディをお送りする予定である。
  チラシには演出家の言葉としてその様に記してある。なので、その言葉に違わぬ楽しい舞台を何としてもお目に掛けたい、と心から念じているのである。

  ご期待ください。

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アカデミーと『フラガール』

5月27日(火)

  午前中は火曜定例の東宝ミュージカルアカデミー。

  先週と比較して「悩み」や「迷い」が良い方向に向かっているか、の問いに、「良い方向に向かっている」と答えた者が1/3、「変わらない」と答えた者が1/3、そして「悩みや迷いが益々増えた」と答えた者が1/3、といった様子であった(先週の様子はこちら参照)。
  とは言え、先週のややどんよりとした空気よりは今週の空気の方が遥かに良い。でもそれは、先週が嵐の様な天候だったのに比べて今日が清々しい晴天だったから、かもしれないが。

  午後は『フラガール』のフラ・レッスンへ。

  ひと通りレッスンを見学し、レッスン終了後、カレイナニ早川さん、早川さんと共にフラの指導をしてくださっているハワイアンズの吉田先生(常磐音楽舞踊学院の助教授)と、舞台に登場するレッスン場面やステージ場面について打ち合わせ。
  映画版の感動を、舞台のやり方で再現したい。目標はそれである。

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『ラ・カージュ・・・』公式ページと『フラガール』音楽打ち合わせ

5月26日(月)

  ブロードウェイ・ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』の公式ページがオープンした。

  公式ページでは全キャストや公演日程などをご覧いただくことができる。また、同ページによると、市村さんのザザは今回で見納めらしい。「市村ザザの集大成」(同ページ)の名に恥じない最高の『ラ・カージュ・オ・フォール』にしたい、と思う。

  さて、夜は佐橋俊彦さんの仕事場へ。

  『フラガール』の音楽打ち合わせのためである。5月6日にも1度打ち合わせをしており、今日はその続きと言うことになる。
  打ち合わせの初めに、佐橋さんがテーマ曲のデモを聞かせてくれた。前回の打ち合わせの時に私から佐橋さんに伝えてあったイメージを基に、佐橋さんが打ち込みで作ってくれたものである。私がイメージしていたものにぴったりの楽曲で、大いにモチベーションも上がったところで今日の打ち合わせへ。
  準備稿を基に、音楽をどこに入れるのか、その音楽のイメージやモチーフとなる事柄は何か、そのサイズは・・・、などなど、じっくりと意見交換をした。

  佐橋さんとはオリジナルの大作ミュージカル『風と共に去りぬ』で出会い、『ミー&マイガール』や『ウェディング・シンガー』の音楽監督も務めてもらった。
  特に『風と共に去りぬ』では、1年以上かけてミュージカル・ナンバーの全てを佐橋さんに作曲・編曲してもらったり、再演の度に楽曲を入れ替えたり直したりした。その作業を通じてお互いの志向性が良く分かっているので、打ち合わせでのコミュニケーションがとても取り易い。何よりも打ち合わせること自体が楽しいのである。

  次回の打ち合わせが待ち遠しい!

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日芸と『レベッカ』トークショー

5月22日(木)

  午前中は毎週木曜定例の日芸所沢。

  演劇情報誌から、学生たちの知っている演出家の名前をピックアップさせてみる。
  1人で十数人の名前を並べる学生もいれば、一方で、半数近い学生は片手にさえ満たない名前しか挙げることができなかった。だが、これが現在の日本の演劇を取り巻く状況であろう。大切なのは、ここから先、彼ら、彼女たちの興味がどう広がって行くか、である。
  因みに、断トツの認知度を誇ったのは蜷川幸雄さんであった。舞台は未見でも名前だけはほぼ全員が知っていた。

  夜はシアタークリエへ。

  『レベッカ』夜の部終演後、ファン感謝デーとしてトークショーが行われるので参加するように、と急遽指令が下ったのである。
  本日のメンバーはシルビア・グラブさんと吉野圭吾さん。司会の松澤重雄さんによる巧妙なリードで、お2人のチャーミングな素顔や舞台裏の愉快な様子が楽しく披露された。私は後半にちょっとだけ参加。相変わらず大した話もできず、自己嫌悪。

  トークショはこのあと3回の開催が予定されている。興味のある方はこちらを。

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『シラノ』

5月21日(水)

  ミュージカル『シラノ』の音楽打ち合わせ。

  音楽監督の塩田さんが帝劇の『ルドルフ』を振っているので、その終演を待っての打ち合わせであった。5月7日のフランク・ワイルドホーン氏とのミーティングで話し合われたことを基に、日本版をどう作っていくのかを音楽面から検討、意見交換した。
  ここ数日、今日の打ち合わせのためにエドモン・ロスタンの原作戯曲とレスリー・ブリカッス氏のミュージカル版の台本を読み直していたのだが、やはり『シラノ・ド・ベルジュラック』は実にいい話だと思う。そしてブリカッス氏版の台本はかなり原戯曲に忠実である。

  この「いい話」を、気品や華やかさはそのままに、スピーディに生き生きと現代的に再現したい。先日の打ち合わせの席でワイルドホーン氏が、この作品の方向性を共有するために引き合いに出したのは映画『恋におちたシェイクスピア』であったのだが、それは私のお気に入りの1本でもある。

  ミュージカル『シラノ』日本版を形にするまでにはまだまだ課題も多い。何よりもこの仕事を難しくしているのは『シラノ・ド・ベルジュラック』が「言葉」と「話し方」をテーマにしていることであろう。
  英語で書かれた台詞や詩をどんな日本語に置き換えるのか。そして音楽的な制約の付きまとう歌詞をどう訳すのか。
  その困難に取り組んでくださっている松岡和子さんと竜真知子さんに、心から敬意を表したい。

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3週間振りのアカデミー

5月20日(火)

  祝日が続いたりなどしたので、3週間振りとなる東宝ミュージカルアカデミーへ。

  先々週と先週やっていたのは、アカデミーを卒業した受講生たちの中から選抜されたアドヴァンス・コースのためのワークショップ。3期生の正規授業は4月22日以来なのである。お陰で、コツコツと積み重ねていた受講生たちの顔と名前を一致させる作業も水泡に帰した。
  それはともかく、4月の初めにはとても明るく生き生きとしていた受講生たちが、久しぶりに顔を合わせてみると、なんだかいまひとつ元気がない様に感じられた。
  それは昨日のムシムシした天候のせいかもしれなかったし、いわゆる5月病だったのかもしれなかった。
  「毎日が充実しているか」との質問にためらいなく手を挙げた受講生も僅かであった。その理由を聞いてみると、それぞれが抱えている課題や弱点が、順調に克服されるどころか新たな課題や弱点が日々見つかって、どうやらそのことも受講生たちを本来の楽天性から遠ざけている一因の様であった。

  だがそれは、言い方を変えれば「現実が見えて来た」と言うことである。悪いことではない。
  ミュージカル俳優を目指す者にとって、自分を知ることは最初の一歩である。自分を知り、弱点は徹底的にレッスンを重ねて克服する。長所は、それが強力な武器になるまでとことん伸ばして行く。俳優修業とは生涯その連続であろう。
  その為にはまず自分を客観的に知らなければならない。知れば次に何をするべきかは自ずと明らかになる。
  大切なのは自分がどこへ行こうとしていたのか、それを見失わないことである。

  願えば、いつかそれは叶うのだから。

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速報 『ザ・ヒットパレード』再演!

5月19日(月)

  プロデューサーである渡辺ミキさんがご自身のブログに書いていらっしゃるのでもうオープンにしてもいいのだと思うが、来年上演が予定されている「私が演出する5本のミュージカル」の内の1本は『ザ・ヒットパレード』である。

  『ザ・ヒットパレード』については、初演の製作発表時の日記や、2007年6月2日から始まる『ザ・ヒットパレード』通信をご参照いただきたいのだが、私にとってはとても思い入れの強い、愛着のある作品の1本である。
  そしてその1本が、こうして再び上演の機会を与えられたことは本当に嬉しい。もっともっと良くなる余地を残した作品だと思うからである。

  何はともあれ、もっともっと笑えて、もっともっとジーンと来る作品になる様に力を尽くしたいと思う。

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『青猫物語』や『フラガール』や

5月16日(金)

  『青猫物語』公式ページ全キャストが発表された。

  新鮮な顔ぶれで、私自身、今からわくわくしている。本チラシのデザインも見せてもらったのだが、これもいい感じになっていて嬉しい。
  本チラシでは北村有起哉さん、黒谷友香さん、きたろうさんの扮装写真が大きくフィーチャーされているのだが、この3人のコスチューム、衣裳デザイナーの木村猛志さんがあるミュージカル映画の衣裳にインスパイアされてデザインしてくださったものである。50年以上昔の、ハリウッド製のミュージカル映画なのだが・・・。
  劇場ロビーなどにチラシが並ぶのをお楽しみに。

  今日も『フラガール』のフラ・レッスンに顔を出す。

  今日はメイキングのほかに「王様のブランチ」の取材カメラが入っていた。オンエアは・・・、明日(17日)!  10時~10時30分の間くらいらしい。
  こちらもお楽しみに!

  その後、キネマ旬報さんの取材を受ける。

  井上芳雄さんの本がキネ旬ムック「アクチュール」誌の別冊として7月に出ることになったのだそうで、井上さんについてのコメントを求められた。
  こちらの方もどうぞお楽しみに。

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「演出実習Ⅱ」と『ラ・カージュ・・・』

5月15日(木)

  午前中は木曜定例の日芸所沢へ。

  今年の「演出実習Ⅱ」は例年になく学生たちの議論が活発である。全く発言しない様な学生もいない。例年に比べて少人数なお陰なのか、たまたま素直な学生が揃ったのか、学生たちの気質が変化して来ているのか、それとも私の授業の進め方が上達したのか(それは無いと思う)。

  午後は『ラ・カージュ・オ・フォール』の舞台美術打ち合わせ。

  新生『ラ・カージュ・・・』の美術デザイナーは田中直樹さんである。
  田中さんとは『サウンド・オブ・ミュージック』『君となら』『巌流島』『パパに乾杯』『夫婦善哉』『六十の手習い』『春朧』『虹の橋』などでご一緒した。が、もともとは私と同じ東宝演劇部の演出助手であった方である。先輩なのである。
  今回の『ラ・カージュ・・・』は東京公演の後、地方公演が予定されているのだが、その会場のひとつにシアタードラマシティが含まれている。が、今までのオリジナル『ラ・カージュ・・・』は大変大がかりな舞台美術を使用していたので、そのままではシアタードラマシティには収まらない。そのままでは日生劇場ですら大道具を飾り切れないだろう。
  なので、各地の劇場が持っている物理的な条件を満たすことも、今回の私たちに課せられた大きな使命のひとつなのである。
 
  とは言え、久しぶりの田中さんとの仕事なので、打ち合わせ中、話はしばしば脱線した。懐かしい人々の消息や業界の裏話、果ては他人の舞台の悪口などなど・・・、愉快なひと時を過ごさせていただいた。

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『フラガール』製作発表

5月14日(水)

  赤坂サカス内にある赤坂アプローズ迎賓館にて舞台版『フラガール』の製作発表。

  開始時には生憎の雨であったが、それでも多くの報道関係者にご来場頂いた。
  まずはスパリゾート・ハワイアンズの、本物の現役フラガールさんたちによるフラのデモンストレーション。続いて、主催者を代表してTBSテレビの事業本部長・信国一朗氏、プロデューサーの河出洋一氏のご挨拶。そしてキャスト(福田沙紀さん、片瀬那奈さん、阿部力さん、根本はるみさん、今井りかさん、田山涼成さん、そして久世星佳さん)、脚本の羽原大介さん、それに私が登壇。それぞれに抱負を述べ、その後取材陣との質疑応答が行われた。
  製作発表の後、メイキング番組のスタッフとミーティング。既に稽古場にはこの番組のためのビデオカメラが入っている(昨日のレッスン風景も収められている)。この舞台版『フラガール』のメイキング番組は6月中にはオンエアされるらしい。

  夜は東宝ミュージカルアカデミーの、アドヴァンス・コースのワークショップへ。私の担当は今日まで。それぞれが新しい課題を発見してくれたのならばよいのだが。

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フラのレッスン

5月13日(火)

  ふたつき振りに『フラガール』のフラのレッスンに顔を出した。

  3月7日付の日記に記した通り、ガールズに選ばれた皆さんは週2回のペースでフラのレッスンを続けている。
  前回見学した時には音楽に合わせて歩くこともままならなかったような一同が、使用する楽曲も決まり、振りも渡され、今日は笑顔でそれなりに踊って見せてくれた。
  ガールズたちが積み重ねてきた努力が偲ばれて、ちょっとグッと来た。と同時に、ガールズたちをここまで導いてくださった先生方の熱意にも感動した。

  今日はガールズたちに交じって、紀美子役の福田沙紀さん、小百合役の根本はるみさん、早苗役の今井りかさん、初子役の風間水希さん(厳密に言えば彼女たちもガールズだが)、そしてまどか先生役の片瀬那奈さんもレッスンに加わっていた。
  レッスンを眺めながら私は、常磐ハワイアンセンターオープンに向けてのあの頃もきっとこんなだったに違いないと感じていた。ただし、私たちはレッスンの先に何があるのかが見えているが、当時ハワイアンセンターに関わった人たちの未来は霧の中であった筈だ。
  ハワイアンセンターやフラに賭けた当時の人たちの心中はいかばかりであっただろうか。

  明日は『フラガール』製作発表。無事に終わります様に!

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『ラ・カージュ・・・』や『フラガール』や

5月12日(月)

  本日最初の仕事は、来年再演になる「楽しい」ミュージカルの打ち合わせ。

  この作品は東京公演の後、地方での上演が予定されているのだが、その会場が東京とは余りにも条件が異なるので、それをどうするかが今日のテーマであった。私としては旅に合わせて東京の規模を縮小することは避けたかったのだが、そういう方向になりそうなので一安心。

  続いて『ラ・カージュ・オ・フォール』の音楽打ち合わせ。

  今回の『ラ・カージュ・・・』では舞台美術などが一新されるほか、オーケストラの編曲も新しくし直そうと考えている。過去の上演の中で様々に改変されて来たオーケストラのスコアを一度オリジナルに戻し、そこから今回のニュー・ヴァージョンを立ち上げようと言うことである。
  今日は音楽監督の塩田明弘さん、音楽監督・編曲の八幡茂さん、稽古ピアノの國井雅美さん、種村久美子さん、そしてプロデューサーの宮崎さん、梶浦さんとで、今までの上演ではスコアをどう改変していたのか、現存するピアノ・コンダクター譜のどこに問題があるのか・・・、などを確認。

  そして東宝ミュージカルアカデミーの、アドヴァンス・コースのワークショップへ。

  先週1週間やって来たストレート・プレイのテキストを終え、その中で確認して来たことが果たしてミュージカル・ナンバーの表現にも応用できるか、に移る。

  最後に『フラガール』の舞台美術打ち合わせ。

  今まで検討して来たプランが実現可能なのかどうか、美術デザイナーの大田創さん、舞台監督の北条孝さん、それに大道具製作を担当してくださる俳優座劇場舞台美術部の石元俊二さんにも参加していただいて、構造やコスト面なども含めてチェック。どうやら不可能ではなさそうだ。
  『フラガール』の製作発表は明後日14日に行われることになった。その模様は報道などでご確認を。

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2つのクラス

5月8日(木)

  午前中は所沢の日大芸術学部へ。

  学生たちに、現在の演劇状況の中で気になる事柄を挙げてもらい、それに関して全員でディスカッションをする、と言うことをしているのだが、演劇や演劇を志す者を取り巻く環境に関して、実に悲観的な捉え方をしている者が多かった。
  現在この国で、演劇や演劇人や劇場が広く社会に認知されているとは残念ながら言い難い。それは事実であろう。そして、大学に入る以前の彼ら、彼女たちたちの周囲が演劇に無関心であったり、或いは拒絶反応を示したりしたであろうことも想像に難くない。

  社会の大勢から演劇は取り残されている。学生たちの悲観はそのことに起因するのであろう。だとして、ではこれから少なくとも4年間演劇や演出を学ぶと言う決心をした者として、その状況とどう向き合うのか。そしてどう行動して行くのか。学生たちには、これからは当事者の視点で物事を捉えて行って欲しいと思う。
  そしてもう一点。そもそも今の演劇を取り巻く状況は果たして悲観すべきものなのか。
  演劇は本来、その場に立ち会った限られた人々のための喜びである。マスをターゲットとしない、マスに迎合する必要のない演劇の特性を、むしろポジティブに解釈することから始めたら何かが見えて来はしないだろうか。

  君たちの前にあるのは未来だけである。

  夜は東宝ミュージカルアカデミーへ。

  アカデミーの受講生たちは、日大の学生たちと年齢的にはそう違わない。アカデミーの方が幅があるので、実際には同じか少し上といった程度である。
  こちらの受講生たちには演劇についての悲観的態度は全く見られない。ダイナミックに動く舞台づくりの現場を目の当たりにしているからであろうし、そもそも悲観していたらこの世界に足を踏み入れないだろう。もっとも、悲壮感はそれなりに漂っているが。

  異なる雰囲気を持った2つのクラス。その温度差が、私には実に興味深い。

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続・ミュージカル『シラノ』

5月7日(水)

  帝劇にてフランク・ワイルドホーン氏と、ミュージカル『シラノ』についてのミーティング。

  『ルドルフ』の初日に合わせて来日している氏と、今後の作業の進め方などについてのミーティングであった。今日はシラノを演じる鹿賀さん、音楽監督の塩田さん、翻訳の松岡和子さん、訳詞の竜真知子さんらが集まった。
  ミュージカル『シラノ』は、実はまだ世界のどこでも上演されていない。現在スケジュールに上っているのはスペインでの上演で、日本公演は恐らくそれに次ぐものになる。

  ワイルドホーン氏と共作者であるブリカッス氏が自作を世界に広めて行く時の考え方は独特である。お2人の作品が世界の様々な地域で上演される時には、その文化圏に最も適した形にローカライズして上演されるべきである、と言うのが持論なのである。
  お2人の前作『ジキル&ハイド』は42カ国で上演された(ロシア語からヘブライ語まで!)のだそうだが、ひとつとして同じヴァージョンのものは存在していないのだそうである。
  なので今回も、このミュージカル『シラノ』を、日本の観客が最も喜ぶ形に作り上げて行きたい、と言うのがワイルドホーン氏の希望なのであった。

  その為には今後何を準備し、どのようにコラボレイトして行くのか(氏は盛んに「コラボレイト」と言う言葉を使用した)、と言うのが今日のメインテーマであり、そして「新作をゼロから立ち上げる時の様に感じて欲しい」と言うのが氏から我々へのメッセージであった。
  ミュージカルを生み出す喜びと、それと同じくらいの苦しみが我々の前途に待ち構えている。恐らく今回はそういう仕事になるのではないだろうか。もちろん、それは望むところなのだが。

  夜は今日も東宝ミュージカルアカデミーの、アドヴァンス・コースのワークショップ。「現実感を失わずに」「新鮮に」演じることの難しさよ!

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ミュージカル『シラノ』

5月6日(火)

  帝劇内の稽古場へ。

  来年(2009年)の5月に日生劇場で、鹿賀丈史さんの『ジキル&ハイド』に続くミュージカル『シラノ』が上演されることが発表になったが、そのスコアをチェックするのが今日の仕事であった。
  ミュージカル『シラノ』は、有名なエドモン・ロスタンの戯曲を基に、『ジキル&ハイド』のフランク・ワイルドホーン氏(作曲)とレスリー・ブリカッス氏(脚本・作詞)が手掛けた新作ミュージカルである。

  『ジキル&ハイド』初演の初日(2001年11月5日)に、来日されたレスリー・ブリカッス氏と色々な話をさせていただいたことがあったのだが(こちらを参照、ただし長文です)、その時の会話でブリカッス氏が

  山田「舞台のミュージカルでお好きなのは?」
  レスリー「『マイ・フェア・レディ』」
  山田「ではご自身の作品で一番気に入っているものは何ですか?」
  レスリー「うーん……。ネクスト・ワン!(笑) 今取り組んでいるのは『ノアの箱舟』。それからフランク・ワイルドホーンとは『シラノ・ド・ベルジュラック』。ブレイク・エドワーズとはあの『ピンクパンサー』のミュージカルを作っているんだ」

  と話していた作品が、いよいよお目見えすることになったのである。

  『シラノ・ド・ベルジュラック』は、もともとが大変ロマンティックな物語である。そして、ミュージカル版の『シラノ』にもワイルドホーン氏の美しくロマンティックなメロディがふんだんに登場する。
  シラノ・ド・ベルジュラック一世一代の大芝居を、格調高く、時にユーモラスに、そして生き生きとお送りできれば、と念じている。

  夜は東宝ミュージカルアカデミーへ。

  今週と来週は、アカデミーの卒業生たちから選抜された「アドヴァンス・コース」の受講生たちとのワークショップなのである。
  俳優の仕事にはゴールと言うものがない。そもそも仕事と言うものはそう言う性質のものである筈だが、この国で俳優を職業にしようと思うと、その「ゴールがない」と言う事実が暗く冷たく重くのしかかって来て、身分の不安定な俳優志望者のモチベーションを大いに下げることになりかねない。そもそも、ゴールどころか、スタートラインがどこに引かれているのかさえよく分からない。
  そんな揺れ動く若者たちに、では私たちは何をしてあげられるのか。何をするべきなのか。

  ワークショップで問われているのは受講生たちの覚悟であるとともに、私たちの側の決意なのかもしれない。

  ワークショップ後は佐橋俊彦さんの仕事場へ。舞台版『フラガール』の音楽打ち合わせ。

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『イーストウィックの魔女たち』旅立つ

5月3日(土)

  越谷サンシティホールへ。

  『イーストウィックの魔女たち』のツアーが昨日からスタートした。
  今回のツアー版は、今までの帝劇版や博多座版とは舞台美術が大きく異なる。が、美術デザイナーの松井るみさんが、シンプルだが『イーストウィック・・・』の世界観を損なわない素敵なセットをデザインしてくれた。
  合わせてフライングも簡略化されたが、32名の出演者は昨年の帝劇のままである。16名のオーケストラももちろん同行しているので、『イーストウィック・・・』のエッセンスは何一つ変わっていないと思う。
  ツアー版ではオーケストラピットを使用していないので、客席との一体感は今まで以上かもしれない。

  越谷のお客様はこのミュージカル・ファンタジーを大いに楽しんでくださった。盛大な拍手に手拍子、そして歓声と大きな笑い声。舞台と客席との関係はまさに理想的であった。越谷にお越しくださったお客様のお陰で『イーストウィック・・・』は実に幸先の良いスタートを切らせていただいた。

  今回のツアーは5月31日まで続く。楽しい旅になります様に!

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祝100回! 『I Do! I Do!』

5月2日(金)

  豊島区立舞台芸術交流センター「あうるすぽっと」へ。

  あうるすぽっとは、昨年の9月に東池袋にオープンした新劇場である。私は今日初めて足を踏み入れたのだが、客席数301のこじんまりとした、今回の出し物である『I Do! I Do!』には打って付けと思われる劇場であった。

  まったくの余談であるが、ここから1、2分の所に、私が大学時代に三谷(幸喜)君に誘われて始めた東京サンシャインボーイズが旗揚げ公演を行った劇場があった。
  「池袋とまとハウス」と言う名前の、小さいビルの地下の、恐らく元は駐車スペースであったであろう場所に設けられた小劇場がそれで、今日「あうるすぽっと」に入る前に久しぶりにその場所を訪ねてみたのだが、既にビルごと姿を消していた。
  とまとハウスは我々が旗揚げする少し前にオープンし(たのだと思う)、その後いつまで営業していたのか、それは知らない。が、以後とまとハウスの名前はついぞ聞いたことがないので、劇場としての歴史はそれほど長くなかったのではないかと思う。恐らく演劇史的には「三谷幸喜が東京サンシャインボーイズの旗揚げ公演を行った劇場」としてのみ記録されるのではないだろうか。
  数年前にはまだビル自体は健在で、かつてのとまとハウスの痕跡も認めることができたのだが・・・。感慨深い。

  閑話休題。

  ブロードウェイ・ミュージカル『I Do! I Do!』が初日を迎えた。そして今日は村井国夫さんと春風ひとみさんにとって記念すべき100回目の公演であった。
  お2人は2002年以来断続的にこの作品を上演して来たので、もはや自家薬籠中の、と言っても良いくらいの作品である筈だが、それでもお2人はなお、再演の度毎に台本とスコアに1から当たり直し、まるで新作に取り組む時の様な情熱とエネルギーで稽古をし直されるのである。
  今回も、「夫婦間に巻き起こる様々な波風を今まで以上に自然に力まずに演じたい」と言うことで細かく稽古をし直した。

  その成果は、今日の舞台に十分表れていたのではないだろうか。
  終演後、劇場ロビーで100回を記念した小宴が開かれたのだが、挨拶がひと段落するや否や村井さんと春風さんが寄っていらして、私に今日の感想を求められた。私は正直に思った通りのことを申し上げた。
  「今までで一番良かったんじゃないですか?」
  村井さんが受けられた感触も同様のものであるらしかった。

  その、今が最も旬な『I Do! I Do!』村井さん&春風さんバージョンは、あうるすぽっとでは明後日(4日)までの上演である。

  どうかお見逃しのない様に。

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