『龍馬の妻とその夫と愛人』NY通信
10月5日(木)
昨日まで博多にいたのだが、今日はもうニューヨークである。JFKからマンハッタンへ向かう車窓から見えた摩天楼の稜線が以前とは違っている。分かっていたことだが、ちょっぴり胸が締め付けられる。
宿に荷物を放り込むや否や、会場であるジャパン・ソサエティへ向かう。今日は初日で、なので舞台には既にあの懐かしいボロ長屋が飾られている。丁度1年前、新潟の「りゅーとぴあ」で仕込んだあの道具が、日本全国津々浦々を回った後、こうして遥々ニューヨークまでやって来たのである。本当にご苦労様、と言いたい。
私が劇場に着いたのは、間もなく通し舞台稽古が始まろうとする時刻だった。19時30分からの本番の前に、本番通りの舞台を1回やっておこう、と言うことである。
このニューヨーク公演では、舞台美術も照明も音響も、衣裳も鬘(かつら)も、全てが日本公演通りである。唯一の違いは、本編の前に坂本龍馬のことを説明する5分程のビデオが付け足されていることで、本編には登場しない坂本龍馬の人となりを、何も知らない人にも分かり易く、しかも愉快に伝えることになっている。
このビデオがとても良くできていて、もし日本でこの作品が再演されることがあったら、その時はそのまま使用したい。
それにしても・・・。
通し稽古を観ながら、何だか随分と変な気分に陥った。昨日まで博多で南北戦争をやっていたのに、いま目の前で繰り広げられているのは明治維新である。時差ボケも手伝ったのだろうが、いま自分はどこにいるのか、何をやっているのか・・・?
さて、ジャパン・ソサエティは国連から目と鼻の先といったロケーションである。隣には豪華な高層アパートメントが建っていて、噂では松井選手がお住まいらしい。私より先にニューヨーク入りした一行はヤンキース戦に出掛けた模様である。
それはともかく、劇場はタッパ(高さ)こそ無いものの観易く、この作品には最適な規模であろう。キャパシティは278名だが、舞台を若干張り出したので最前列がつぶされたのと、音響席が最後列に仮設されて、実際の客席数は260名弱であろうか。
一番気がかりだったのは客の入りと客層だが、初日の今日はほぼ満席、客層は日本人7、アメリカ人3と言った割合であろうか。
定刻を10分程遅れて開演のアナウンス、当然の事ながら英語である。アナウンスの内容はお決まりの「携帯電話の電源はお切りください」と言ったものだが、最後の「Enjoy the show!」を聞いた時、初めてニューヨークで芝居をするんだ、と言う実感が湧いて来た。
そして件のビデオに続いて本編。台詞はもちろん日本語のままなので、始まってしまえば日本で観ているのと何ら変わる所はない。観客の反応、笑い所も日本と変わらず、舞台脇に映し出された英語字幕だけが、ここがニューヨークであることを思い出させてくれた。B作さんも平田さんも、(特にB作さんが)心なしか丁寧に演じている様には感じられたが。
冒頭のビデオを含めて1時間50分、無事に初日の幕は下りた。本番中の私はこれ以上はないと言うくらい必死に睡魔と戦っていた。
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